
フランク・ケイン
ドバイ:サウジアラムコの社長兼最高経営責任者であるアミン・ナセル氏は、今年、特に下半期には石油需要が改善すると見ている一方、「雇用なき景気回復」が世界経済に及ぼすリスクを懸念している。
ナセル氏は、テキサス州ヒューストンで開催された、情報分析会社HISマークイットが主催する年次エネルギー会議「CERAWeek」にオンラインで参加し、話をした。ナセル氏は、昨年の特にパンデミックによる都市封鎖の間に見られた大幅な減少と比較すると、石油需要はすでに「かなり改善」していると述べた。特に、中国と東アジアで大きな改善が見られたという。
「インドの石油需要は、COVID以前とほぼ同じになっています」と同氏は石油市場の専門家であるダニエル・ヤーギン氏に語った。
「欧米で石油需要に影響が出ているのを見ていますが、ワクチンの急速な展開により、楽観的な視点と需要の回復を予想できるだけの理由が見出せています」
現在の石油需要は、パンデミック前の1億バレルと比較して、9,400万バレルとなっている。ナセル氏は、これが年末には9,900万バレルまで増加すると予測している。
「これから、特に今年の後半には、需要と市場が改善すると見ています」と同氏は語った。
しかしナセル氏は、パンデミックによる経済的被害の結果として「厳しい現実」を予想していると述べ、これを石油業界にとっての「今世紀最大の危機」と表現した。
「中小企業はもちろん、それ以上に雇用に対して大きな影響が出ています」とナセル氏は述べた。「急速な技術の進歩により、仕事、特に高い技能を必要としない反復型の仕事ですでに影響が出ています。仕事は減り、世界のさまざまな地域の市場で格差が生まれています」
「今日、私たちは経済の回復が起きているのを見ており、これは通常、雇用の創出やさらなる雇用の増大につながります。しかし私は長期的な視点から、特定の仕事では雇用が回復しないという、雇用なき景気回復が起きるのではないかと強い懸念を抱いています」
ナセル氏によると、世界最大の石油会社であるアラムコは、リスク管理システムを使用してパンデミックに迅速に対応し、また業務プロセスでのデジタルおよびリモートの使用を大幅に加速させた。
同じCERAWeekフォーラムでは、米国のエネルギー会社シェブロンのCEOであマイケル・ワース氏が、危機から学んだ重要な教訓は石油事業の「本質性」であると述べた。
石油市場が前例のない打撃を受けたにもかかわらず、需要の減少は約9パーセントにすぎないと同氏は語った。「これは、私たちの産業が世界経済にとってどれほど重要であるかを示しています」