
東京:東芝の取締役会メンバーは、CVCキャピタルパートナーズが先週200億ドルの買収提案を開始する前に、車谷暢昭CEOの更迭を計画し、買収提案が発表される前日に車谷氏に後任を指名することを伝えていたことが関係者の話でわかった。
永山治取締役会議長を含む東芝の指名委員会のメンバー2人が、自身もCVCの元幹部である車谷氏に会い、新しいCEOを探すつもりであることを伝えたと、関係者3人が語った。
取締役会は正式には車谷氏を交代させるプロセスを開始していなかったが、計画はすでに動き出していたとこの3人は述べている。指名委員会の委員長でもある永山氏は、車谷CEOを「解雇するため」に会議に出席したと、3人のうちの1人は述べている。
その後、車谷氏はヨーロッパのプライベート・エクイティ・ファームが東芝を非公開にする計画を伝えた、と3人は語った。その翌日に、東芝はオファーを受けたと発表した、と2人は語った。
この会議の出来事は、オファーが発表される前から、車谷氏の人気が低迷していたことより、車谷氏の任期が台無しになったことを示している。また、車谷氏と物言う株主との間では、ガバナンス上の問題を指摘され、不和が深まっていた。
車谷氏の解任計画は、4月6日に東京湾に隣接する東芝本社で行われた株主総会の後に加速したようだ。水曜日、東芝は、三井住友フィナンシャル・グループの銀行員だった同氏が、約3年の任期を終えて退任すると発表した。
社内や投資家からの支持が薄れてきたためだと、関係者は語っている。この問題は非常にデリケートなものであるため、いずれの関係者も名前を明かすことを拒否した。
「東芝の管理職を対象とした調査では、車谷氏への支持は低かった」と、この関係者は述べている。株主の間でも車谷氏に対する「深い不信感」があったという。
水曜日、東芝は、車谷氏が会計スキャンダルで弱体化した同社を再生する計画を達成したため、「再充電」のために退任すると発表した。
ロイターはこの記事に関する車谷氏からのコメントを得られていない。永山氏はコメントを拒否。また東芝は、憶測についてはコメントできないとしている。CVCジャパンの代表者もコメントを控えている。
エスカレートする挑戦
2018年にCVCの日本法人から東芝に入社した車谷氏は、150年の歴史を持つ巨大な企業を再構築するという公約を掲げていたが、一般的に経営者が数十年かけて役員室にたどり着くような由緒ある企業では珍しいアウトサイダーだった。
先月、緊急株主総会で、経営陣が株主に圧力をかけて希望の取締役候補を支持させたかどうかを調査する票を物言う株主側が集めたたことで、車谷氏に対する挑戦は激しさを増した。
先に行われた東芝の内部調査では、何の問題もなかった。
この投票により、取締役会は車谷氏が次の年次株主総会で留任の支持を得られそうにないと確信したと、この問題について説明を受けた2人目の人物が語った。前回の株主総会では、車谷氏は57%の得票率しか得られず、経営陣に異議を唱えることの少ない日本では厳しい非難を受けた。
東芝の経営陣は、政府関係者にCVCの提案に反対するよう働きかけているという。CVCは、東芝が原子炉メーカーや防衛機器を製造していることから、いかなる取引も政府の承認を得なければならない。
「誰も望んでいない取引だ。東芝は国防に関連した様々な事業を行っており、外資系企業の傘下に入ることで顧客が流出する可能性がある」と、取締役会の考えをよく知る人物は述べている。
CVCは買収提案を継続する予定であると、日本のメディアは水曜日に報じた。ある関係者は、CVCが提案時の東芝の株価に30%のプレミアムを付けていたと言う。香港のアクティビストファンドであるオアシス・マネジメントは、このプレミアムは低すぎると非難し、米国のヘッジファンドであるファラロン・キャピタル・マネジメントは、東芝に他の入札を募るよう求めている。
現在のところ、1979年に東芝に入社した綱川智会長(65歳)が、CVCや他の潜在的な入札者への対応を含め、会社を管理することになっている。フィナンシャル・タイムズ紙の報道によると、米国の投資会社KKRやカナダのブルックフィールド・アセット・マネジメント社も含まれる可能性があるという。
東芝の社内情報に詳しい関係者は、「社内ではトップポストの候補者が不足しているが、車谷氏を排除した後に外部の人間を入れるのは難しいだろう」と語っている。
ロイター通信