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NEOM 脱石油後の世界で日本とサウジアラビアの取引関係を開拓する機会

太陽と風が豊富にあるため、NEOM都市のエネルギーは再生可能エネルギー源のみによって賄われる予定だ。(ゲッティイメージズ)
太陽と風が豊富にあるため、NEOM都市のエネルギーは再生可能エネルギー源のみによって賄われる予定だ。(ゲッティイメージズ)
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23 Jul 2021 12:07:47 GMT9
23 Jul 2021 12:07:47 GMT9

カーラ・チャロア

ドバイ:日本有数のメディア企業である日本経済新聞社は、7月15日、サウジアラビア投資省(MISA)およびスマートシティ・インスティテュートと共同で、サウジアラビアの未来と日本を中心とする外国直接投資(FDI)の投資先としてのサウジアラビアの競争力の強化に向けた取り組みをテーマとする「スマートシティとグリーンエネルギーの地平線 – サウジアラビアのNEOM」と題するバーチャルセミナーを開催した。

サウジアラビアは多数の大規模で複雑な多目的建設プロジェクトの開発の真っ只中にあるが、これらのプロジェクトは規模と野心の点で国際的に異彩を放っており、広範囲にわたる経済の変革を目指している。サウジアラビアの主なギガプロジェクトには、NEOM、紅海プロジェクト、キッディヤがある。これらはすべてビジョン2030の一部を形成しており、広範な経済成長を大きく促すことが期待されている。

日本の経済産業省(METI)と複数のトップ企業ならびにサウジアラビア投資省の代表、NEOMの主要幹部が参加したオンライン会議では、エネルギーおよびエンターテインメントを含む様々な分野への投資を促すプレゼンテーションが行われた。

このイベントでは、スマートシティ分野の専門技術を開発すること、デジタル管理のインフラを強化することの重要性が強調され、説得力のある投資機会の提供を通じて、投資家全般、特に日本の投資家がサウジアラビアで事業を拡大できる環境の整備に向けたサウジアラビアの決意が明らかになった。

「新型コロナウイルスは、本当に重要なことに集中するべきだとの教訓をサウジアラビア投資省(MISA)に教えてくれました。サウジアラビアで今、本当に重要なことは、ビジョン2030を通じて我が国の経済を変革することです」と、サウジアラビア投資省東京事務所代表のムハンマド・アルダラウィ氏は述べた。

「スマートシティとグリーンエネルギーの地平線 – サウジアラビアのNEOM」会議でスピーチをするサウジアラビア投資省東京事務所代表のムハンマド・アルダラウィ氏。(スクリーングラブ)

「それを実現するために必要とされる重要な要素の一つは、世界トップレベルの投資家がもたらすことができる経験と専門知識です」とアルダラウィ氏は言う。「経済変革を成し遂げる方法の分析で明らかになったのは、日本との関係が戦略的に極めて重要であることです。私たちが日本の投資家に伝えたいことは、はっきりしています。それは、サウジアラビアで変化が起きており、その変化が素晴らしい機会を生み出していること、みなさんがその機会にアクセスできるように私たちがみなさんとの連携を望んでいることです。ビジョン2030が約10年後のサウジアラビアの姿を具現化するための野心的ではあるが現実的な試みだとすれば、MISAはその実現を推進する先駆け的な存在です」 

アルダラウィ氏は、NEOMのようなギガプロジェクトは、インフラや重点分野への投資だけでなく、5G、モビリティ、クラウド管理、サステナビリティ、エネルギー、環境など、それに付随する分野への投資も促進すると強調した。

NEOMの旅は、2017年10月、リヤドで開催された未来投資イニシアチブ会議でムハンマド・ビン・サルマン皇太子がこのプロジェクトを世界に紹介したときに始まった。石油から脱却して多角化を図る取り組みの一環としてサウジアラビアが計画した5000億ドル規模のメガシティは、紅海沿岸の468kmを含むサウジアラビア北西部タブーク地域の2万6500平方kmを超える土地を一変させることが決まっている。規模の点で言えば、このプロジェクトはニューヨーク市の33倍以上に及ぶ予定であり、化石燃料なしで運営される世界最大級の都市となるだけでなく、サウジアラビア政府の説明にあるように、「世界で最も野心的なプロジェクト」でもある。

メガシティプロジェクトは都市計画における環境問題への取り組みの様相を一変させるとNEOMのCEOを務めるナドミ・アル・ナスル氏は語った。アル・ナスル氏は、NEOMの代表者が日本を訪問し、ビジネス投資家と膝を交えてプロジェクトの詳細を説明し、投資機会の橋渡しを試みると同時に、多文化的な知識交換を通じて相互に利益を得る機会を設けることを提案した。

「スマートシティとグリーンエネルギーの地平線 – サウジアラビアのNEOM」会議で発言するNEOMのCEO、ナドミ・アル・ナスル氏。(スクリーングラブ)

「NEOMとは何かを定義しましょう。まず、NEOMという名前がすべてを物語っています。「NEO」はラテン語で「新しい」という意味であり、「M」は「未来」を意味するアラビア語、ムスタクバルの頭文字です。つまり、NEOMは新しい未来を意味しています。私たちは、現時点から見た未来だけでなく、これから先何十年も継続してNEOMを未来に展開していくために、未来の構築、創造、確立に取り組んでいます。これはサウジアラビアが立ち向かうことを決意した大きな挑戦ですが、それには世界各国との連携が不可欠です」とアル・ナスル氏は言う。

アル・ナスル氏にとって、NEOMは、彼の言によればベルギーに匹敵する面積を持つ国内の独立した地域だ。だが、開発の対象となるのは土地の5パーセントに過ぎず、その他の95パーセントは「自然保護区」を形成するために手つかずのまま残される。

「NEOMは、この地域を半ば独立した自由貿易圏とし、半政府として独自の法律、独自の規制、独自の権限を持たせるモデルとして構想されています。その理由は、この地域を世界で最も競争力のある自由貿易圏にすることが私たちの構想だからです。簡単なことではありませんが、私たちはプロジェクトを遂行していく覚悟です」とアル・ナスル氏は言う。

アル・ナスル氏によると、複数の異なる経済部門をベースに「ニューエコノミー」を構築する計画に基づいて、この都市は2030年までにサウジアラビアの国内総生産を1000億ドル押し上げ、38万人の雇用を創出することが期待されている。

NEOM開発の中核となっているのは、サステナブルなエコシステムを維持しながら、革新的なアイデアを企画・遂行する機会を世界中の人々に提供する「リビングラボ」または「イノベーションのハブ」と見なされるものを作り出すという目標だ。

「私たちは、環境の持続可能性が意味するものを体現する現実的なモデルを世界に提供するという使命を担っています。私たちは環境の持続可能性を再定義します」とアル・ナスル氏は言う。

また、アル・ナスル氏は、プロジェクトの推進に資する協力関係を築くための対話をNEOMとの間で開始するよう日本の投資家や企業に呼びかけた。

NEOMのエネルギー・水・燃料担当マネージングディレクター、ピーター・テリウム氏は、エネルギーの需要と供給を満たすために使用される様々な種類の再生可能エネルギー源、スマートシティにおけるエネルギー最適化を目的とするスマートグリッドの導入、メガシティの開発に日本が果たすことのできる役割について語った。

「スマートシティとグリーンエネルギーの地平線 – サウジアラビアのNEOM」会議で発言するNEOMのエネルギー・水・燃料担当マネージングディレクター、ピーター・テリウム氏。(スクリーングラブ)

「私たちは未来の土地を作ろうとしていますが、その未来とは持続可能性がある未来です。世界規模で言えば、エネルギー生産が二酸化炭素排出の主な要因の一つであることがわかっています。したがって、私たちの目標は、電力需要の100パーセントが二酸化炭素排出量ゼロの再生可能エネルギーによって賄われる国を構築することです」とテリウム氏は言う。

「今、話している規模について説明しましょう。私たちは、エネルギー消費を支えるために30ギガワット、つまり3万メガワットの設備容量を必要とする2030年の社会について考えています。これはポルトガルやオーストリアなどの一国の規模に匹敵する膨大な電力量です」とテリウム氏は言う。

テリウム氏は、今後10年間で予測されているような電力使用量が必要になる理由は、サステナビリティポリシーにあると説明した。サステナビリティポリシーでは、「電動モビリティであれ、電動ドローンであれ、エネルギーのカーボンフリー化としての電気の使用であれ、現在利用されていない電気の応用形態であれ」、高度な電化を予測している。

面積がベルギーほどもある砂漠を、再生可能エネルギーを電力源とするメガシティに変えるには、電力消費量を満たすための一定の技術進歩が必要とされる。技術進歩をおざなりにすると、メガシティは管理不能に陥る可能性がある。スマートグリッドは、スマートシティで重要な役割を果たすマイクログリッドなどの持続可能なテクノロジーへのシフトを求める声に対する答えを提供した。

テリウム氏は、スマートシティを「日本の中心に位置する」トピックと表現した。テリウム氏は、プロジェクトの中でも特に日本が関心を持ちそうな側面に言及し、住民や消費者の日常生活の内部へのテクノロジーの浸透を説明することによって、スマートグリッドシステムの運用、監視、制御に関わる研究者に広い視野を提供した。

NEOMの経験は、他のプロジェクトと異なるものになるとテリウム氏は言う。様々な再生可能エネルギー源が結合され、需要を満たすグリッドを運用する再生可能エネルギー事業者の利益を最大化するために人工知能が使用される。NEOMの消費者は、自宅の屋根に設置されたソーラーパネル、蓄電機能を持つバッテリー駆動車、宅内の蓄電機能を所有する可能性が高い。発電と配電を実施し、グリッドの可変代替電源を管理するために、テリウム氏は、100パーセント再生可能システムを管理するテクノロジーとインテリジェンスをつなぐスマートグリッドのカスケード接続グリッドを開発する必要性について語った。

「発電から送配電グリッド、配電グリッドから顧客、さらに様々な顧客アプリケーションに至るまで、NEOMの開発をサポートするうえで日本の企業が大きな助力を提供できるテクノロジーがたくさんあると思います」とテリウム氏は言う。

NEOMは、低コストの太陽エネルギーと風力エネルギーを生産するサウジアラビアの能力を通じて、より持続可能性の高い無公害環境を住民に提供する、100パーセントクリーンエネルギーを電力源とするカーボンポジティブな都市開発から構成される。 

「サウジアラビアは太陽エネルギーを受け取る量が世界のトップ5に入るため、NEOMは非常にユニークな立場にあります。私たちが『太陽照射』と呼んでいるエネルギーをサウジアラビアが取り込める量は世界のトップ5に入っています。この地域は非常に広大であり、太陽光だけでなく、風力からも大量のエネルギーを生成するのに最適な条件を備えています。これら2つのエネルギーの組み合わせは非常に重要です」とテリウム氏は言う。

「安価な太陽光電力が利用できる日中は、空調、オフィスで過ごす時間、仕事、エネルギー消費に電力が必要です。しかし、太陽がほとんど顔を出さない夜間には風が吹きます。NEOMの風の難しさは、風が海から陸に向かって吹くこと、および風が天候と関係なく、熱的現象であることです。日中は陸地が温められることによって起こった風がNEOMに吹きますが、夜間は紅海の冷たい海水で冷やされた風が吹き込みます。熱伝導の原理が働くことが非常に安定した持続的な風が夕方から夜にかけて吹く理由です。コストを大幅に押し下げるこの風力と太陽光電力の組み合わせがあるため、私たちは必要とされる電力量を確保できるだけでなく、非常に競争力があるコストで電力を提供することもできるのです」

テリウム氏は、化石燃料ではなく、再生可能エネルギーを利用して生産されるカーボンフリー燃料のグリーン水素も重視している。

「世界規模で言えば、現在軌道に乗りつつあり、大規模に発展しようとしている分野が一つあります。それはグリーン水素の生産です。電気分解を利用して行われるグリーン水素生産の典型的な特質は、大量の電力を必要とすることです。使用される電力は再生可能でなければなりません。そうでなければ生産される水素を『グリーン』水素と呼ぶことはできません。また、使用される電力が安価でなければ競争力のある方法で水素を生産することはできません。すでに私たちが発表しているプロジェクトの一つに世界初の大規模なグリーン水素生産プラントの建設があります。このプラントは大量の水素を生産する2000メガワット(MW)以上の電解槽ですが、グリーンアンモニアの生産にもこれを振り向けることができると私たちは考えています。こうして生産されたグリーン水素やグリーンアンモニアを、グリーン燃料、特にグリーン水素の輸入に対するニーズがある輸出市場、つまりヨーロッパ、米国の一部、さらに日本や韓国に輸送し、出荷することができます」

「日本とNEOMが共同で達成できることは何か」という質問の回答として、テリウム氏は、マイクログリッドとその技術的応用、および大規模な送電グリッドシステムの開発を挙げ、すでに日立ABBとの間でそれに関する交渉が行われていることを明かした。テリウム氏は、グリーン水素の採用ならびに利用法と応用という形で日本と共同でグリーン水素アジェンダに取り組むことにNEOMが関心を持っていると繰り返し述べた。「NEOMと日本の間には、未発見の分野がたくさんあると思います」とテリウム氏は言う。

日本の経済産業省中東アフリカ課課長の田村亮平氏は、サウジアラビアの広範な改革計画であるビジョン2030と対比させて両国間の伝統的な関係を説明した。伝統的な関係は化石燃料に依存している。それに対して、サウジアラビアがサウジビジョン2030のもとで急激な変革を推し進めるなか、将来の両国間の関係は、より外向きになり、多様な分野にまたがる協力を要することになるだろう。

「サウジアラビア王国から日本に対して非常に大きな期待が寄せられていることがわかります。その点について言えば、石油だけでなく、エンターテインメント、医療、エネルギー、文化、スポーツなど、多様な分野に及ぶ『日・サウジ・ビジョン2030』と呼ばれる協力プロジェクトが両国の首脳間で2016年に締結されました。両国間の協力関係を模索するための包括的なアプローチがこれから試みられるでしょう」と田村氏は言う。

「NEOMは、持続可能性の傘のもとに、エンターテインメント、イノベーション、最先端技術、英知と知識をすべて結集します。日・サウジ・ビジョン2030の包括的な協力プロジェクトのもとで日本はNEOMと直接的・間接的に関わっていくことになると思います」と田村氏は言う。グリーンエネルギーおよびエンターテインメントの分野ですでに話し合いが行われており、88件前後のプロジェクトが進行中であることは、両国間の戦略的パートナーシップを確認するものだと田村氏は付け加えた。

スマートシティ・インスティテュート代表理事で東京大学准教授の柳川範之氏は、「テクノロジーのオリンピック」と彼が呼ぶNEOMのようなプロジェクトに日本の投資家が貢献することの重要性と、日本における事業開発にそのようなプロジェクトがもたらすメリットを説明した。

「スマートシティとグリーンエネルギーの地平線 – サウジアラビアのNEOM」会議で発言するスマートシティ・インスティテュート代表理事で東京大学准教授の柳川範之氏。(スクリーングラブ)

「従来の事業によって規定される制約、規制、制限が原因で、現在自由な方法で推進できていないテクノロジーや構想が日本にはたくさんあります。しかし、開発に多大な熱意が注がれている今回のサウジアラビアのメガプロジェクトに関わることで、私たちは日本のテクノロジーの全能力を余すことなく発揮できる可能性があります。NEOMは、ある意味で、機会が提供される場になっています」と柳川氏は言う。

「NEOMのテクノロジー領域の開発に貢献することによって、日本はサウジアラビアでイノベーションを生み出すことに成功する可能性がありますが、さらに将来その成功を日本に持ち帰ることもできるかもしれません」と柳川氏は述べた。

「NEOMへの参加が長期的には日本や日本企業がグローバル規模の成長と発展を遂げることに役立つ可能性があるため、日本はNEOMに参加し、参加を通じて成果を出す必要があると思います」と柳川氏は語った。

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