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中東諸国にはグリーン投資促進のための変革が必要、研究による提言

報告についてプレゼンテーションを行う、ゼスト・アソシエイツのマネージングディレクター、ジェフリー・ベイヤー氏。6月21~22日にドバイで開催されたアラブ・グリーン・サミットにて。(提供写真/ゼスト・アソシエイツ)
報告についてプレゼンテーションを行う、ゼスト・アソシエイツのマネージングディレクター、ジェフリー・ベイヤー氏。6月21~22日にドバイで開催されたアラブ・グリーン・サミットにて。(提供写真/ゼスト・アソシエイツ)
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10 Jul 2022 08:07:45 GMT9
10 Jul 2022 08:07:45 GMT9
  • この報告は、ドバイのムハンマド・ビン・ラーシド政府学校が公開したもので、UAEのサステナビリティコンサルト会社ゼスト・アソシエイツのマネージングディレクター、ジェフリー・ベイヤー氏が共著者となっている。
  • 「MENA地域は資源を活用し、雇用を創出し、気候変動に取り組む機会を有しているが、そのためには民間部門からの投資を大きく増やす必要がある」とベイヤー氏は述べている。

アラブニュース

ドバイ:中東・北アフリカ諸国の政府は、低炭素経済への移行を加速するために、新しい手段や政策を導入し相互に協力する必要があると、新しい報告は提言している。

この報告は、ドバイのムハンマド・ビン・ラーシド政府学校が公開したもので、UAEのサステナビリティコンサルト会社ゼスト・アソシエイツのマネージングディレクター、ジェフリー・ベイヤー氏が共著者となっている。

「MENA(中東・北アフリカ)地域は資源を活用し、雇用を創出し、気候変動に取り組む機会を有しているが、そのためには民間部門からの投資を大きく増やす必要がある」とベイヤー氏は述べている。 

「低コストで比較的容易に実行でき、中東をグリーン投資にとってより魅力的な環境にするうえで大きな影響を与えるような、政府がすぐに実行できる取り組みがある」

「MENA地域におけるグリーン移行のための資金調達」と題したこの報告は、地域において最大かつ最も広範囲で代表的な国際銀行組織であるHSBCによって資金提供されている。同報告は、MENA地域がコロナからのグリーンリカバリーを実現するための資金調達方法に焦点を当て、サウジアラビア、UAE、バーレーン、エジプト、クウェート、イラク、オマーン、カタールにおけるグリーンファイナンス活動を調査している。

同報告は、実質ゼロ排出への移行の主要な指標である国連の持続可能な開発目標をアラブ世界が達成するために必要な年間2300億ドルの資金を各国政府が動員する方法について、地域および国レベルで一連の提言を行っている。

HSBCのマネージングディレクターで欧州・中東・北アフリカ・トルコのサステナビリティ担当のサブリン・ラーマン氏は、「HSBCは、資金提供だけでなく、世界的な政策課題を形成しそれに影響を与える取り組みを支援することで、世界の実質ゼロ排出経済への移行の動員において主導的な役割を担っている」と語る。

「本報告は、競争力と接続性を確保するためだけでなく、国際的な投資の流れを引き付けるための新たな部門、雇用、ビジネスモデルを刺激するために、中東地域が実施できる施策を提案している」

同報告によると、MENA地域の各国政府は、グリーンファイナンスを調達し導くための経路を形成するうえで有利な立場にある。調査対象国の多くで、国内総生産に占める政府支出の割合は平均20%と高く、サウジアラビアでは28%に達している。世界平均は17%だ。

MENA地域には、多くの有力な国有企業とともに、世界最大級の政府系ファンドの拠点がいくつかある。

「中東には、政府の取り組みによってグリーン投資が流れるための条件を作り出すことができた成功例が多くある。例えば、UAEのサステナブルファイナンス有識者会議は、同国の持続可能性目標に向けて資金を集めるための共通の基準を確立しつつある」とベイヤー氏は述べている。

「サウジアラビアでは、サウジ電力会社がグリーンスクークの枠組みを構築したことで、伝統的なイスラム金融の手段を用いた資本市場の利用が可能になった。地域の他の国でもこのような取り組みを導入すればグリーンファイナンスを動員できる」

同報告によると、MENA諸国が民間部門からのグリーン投資を増やすための方法は主に2つある。1つは、政策・ガバナンスの枠組みや、資金の流れを促進するプログラムや取り組みなど、「実現環境」(持続可能な投資の実行可能性に影響する条件)を改善するための措置を講じることだ。例えば、グリーン投資銀行の設立、エネルギー効率市場を促進する組織の設置、共通のグリーンタクソノミーの整備などだ。

もう1つは、資本の調達・展開、リスク管理、民間部門投資の動員のための特定の金融・経済手段を導入することだ。例えば、グリーンボンドやグリーンスクークの発行、国際的な気候ファイナンスの活用、新たな低炭素産業の資金調達・運営のための政府系ファンドや国有企業の利用などだ。

国レベルの提言は、各国に固有の国内状況を反映しており、既存の取り組みの強化・拡大ではなく、現在取り組みが限られているか完全に欠如している分野に焦点を当てている。

地域レベルの提言は、各国が個別に施策を実施するより国の間で協力した方がより強力な成果が期待できる分野を対象としている。

「MENA諸国間の協力が実質ゼロ排出への移行においてゲームチェンジャーとなる可能性を秘めている分野がある」とベイヤー氏は述べている。

「例えば、MENAの炭素市場の設立は、地域での競争力を維持しながら炭素排出量を低減する費用対効果の高い方法になるだろう。また、『グリーン』とされるものの標準的な定義あるいは『タクソノミー』を作れば、投資家に対して透明性を提示し、持続可能な資金調達を促進し、グリーンウォッシングを回避できるだろう」

同報告の内容は、6月21日~22日にドバイで開催されたアラブグリーンサミットのグリーンファイナンスパネルにおいてベイヤー氏により発表された。著者らは、MENA地域の各国政府が再生可能エネルギープロジェクト、エネルギー効率改善、低炭素輸送、グリーンビルディングなどへの投資を引きつけようと試みる際に、同報告が活用されることを期待している。

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