
トヨタ自動車は4日、年間最終利益の見通しを上方修正した。半導体不足とコロナにより東南アジアからの部品供給が不足し減産を余儀なくされたが、今四半期の業績は好調だった。
自動車メーカー世界最大手のトヨタは、他社と比べコロナ禍の悪影響から早めに回復を果たした。しかし、半導体不足と部品工場の稼働停止による供給不足という二重苦が続いている。
トヨタは今年度の業績予想を上方修正したが、近健太CFO(最高財務責任者)は原材料費の高騰が懸念材料だと述べた。
さらに、半導体不足によりトヨタが7~9月期に55万台程度の生産削減を余儀なくされ、顧客に納車を待たせたことについて謝罪した。
「減産により多くのお客様に納車をお待たせしており、大変申し訳ございません。一刻も早くお届けできるよう努力してまいります」と近CFOは述べた。
昨今の自動車には不可欠な部品のマイクロチップが世界的に不足しているため、数多くの自動車メーカーで生産に遅れが生じたり、操業停止を強いられたりしている。
トヨタは10~12月期も減産を継続する見通しだ。2021年度の生産目標台数は、当初の930万台から900万台へと下方修正した。
さらに、今年度1年間の最終的な利益見通しを、当初の2兆円3000億円から2兆4900億円(218億ドル)へと上方修正した。
年間売上高予想は30兆円のまま据え置いた。
予想を上方修正したのは、7~9月期の純利益が33.2%上昇し6267億円となったのを受けたもの。
近CFOは、ことし4月から9月までの好業績は、商品力向上と成長投資を行ったのに加え、コスト削減と固定費の効率化が功を奏したと述べた。
「新車販売の需給ひっ迫により、中古車価格が大幅上昇し、残存価額を取り巻く状況は良い状態が続いています」と付け加えた。
東京を拠点とする調査会社TIWの自動車担当アナリスト高田悟氏は、トヨタには「世界一の自動車メーカーの座を維持する十分な見込み」があったと述べた。
「アジアからの部品調達が困難となり、4~6月期から生産に遅れが生じ始めました」と決算発表前にAFPに対し語った。
「しかし半導体不足の影響が緩和されそうな雲行きであるため、トヨタを取り巻くビジネス環境は改善しつつあります」と高田氏は述べ、円安が「追い風」となり、最近販売開始したモデルが「どれも売れ行き好調」である点を指摘した。
しかし、アナリストたちはコロナ後の景気回復により多くの産業部門で半導体の需要がさらに伸びているため、半導体不足が解消されるとの見方は甘いと警告している。
先週、米ゼネラルモーターズ(GM)とフォードは、半導体不足により売り上げが減少し、利益が予想を下回ったと発表した。2022年も半導体不足は解消されないと、米自動車大手2社はみている。
フォルクスワーゲンも7~9月期の基本的利益が減少したと発表している。半導体不足が続き、自動車を計画通り生産できなかったからだ。
ホンダは5日に四半期決算を発表する予定で、日産は来週となる。
さらにアナリストたちは、二酸化炭素の排出に対し懸念が広がっているため、大手自動車メーカーの間で電気自動車(EV)に転換する動きが進んでいる点にも注目している。
ハイブリッド車の開発元トヨタは、EV分野で他社に後れを取っているため、初めて世界規模で電気自動車のラインナップを販売する計画を発表した。
先月の発表では2030年までに、アメリカに工場を建設するなどEV用バッテリーに136億ドルを投資すると発表した。
6月には当初の2050年という目標を前倒しして、2035年までに製造部門でカーボンニュートラル(二酸化炭素排出量実質ゼロ)の達成を目指すと発表した。
トヨタのこうした取り組みにもかかわらず、今週グリーンピースが発表したリストでは、温暖化ガス排出削減への取り組みが最も遅れている大手自動車メーカーの1社に名前がある。
AFP