
ロシアによるウクライナ全面侵攻を受けて、先進7カ国(G7)は追加の経済金融制裁を発表した。同国東部の親ロシア派地域の独立承認に対する第1弾の制裁発表から数日で内容を強化した形だが、市場は「自国への経済打撃を軽減するため、なおターゲットを絞っている」(国内証券)とみる。だが、追加制裁とさらなる報復措置が連鎖する事態に発展すれば影響は甚大で、日本企業は警戒を強めている。
金融制裁では、米国がロシア最大手銀行ズベルバンクなど大手金融機関を幅広く制裁対象とした。日本はロシアの開発対外経済銀行(VEB)など3行の資産凍結を発表した。
日本の金融機関は、制裁対象となった銀行との資金のやりとりが制限され、ロシアに進出する日本企業への資金供給に影響が出る可能性がある。このため大手銀行関係者は「送金先の銀行を(制裁対象外に)変更する必要があるかもしれない」と話す。
ロシアでインフラ開発への資金供給を担うVEBは、日本の商社や政府系機関が投融資する北極海の資源開発プロジェクトなどにも参画する。今回、制裁対象となったことで、これら協力の枠組みに影響する恐れがある。
米欧日は、ハイテク製品の輸出規制でも足並みをそろえる。日本の輸出制限の対象となるのは、半導体や関連技術など。「ロシア向けの自動車輸出や現地生産に影響が出る可能性はある」(SMBC日興証券の秋本翔太新興国担当エコノミスト)との指摘が聞かれた。
ロシア側の報復措置による影響も懸念される。自動車の排ガス浄化触媒などに使用するパラジウムは、全世界の3割がロシアからの供給とされる。既に半導体不足や原材料価格の高騰にさらされている自動車業界。大手メーカー幹部は「(パラジウムなどの)価格高騰がいっそう深刻になる。業績にマイナスに響くのは間違いない」と表情を曇らせた。
金融庁は、全国の金融機関にサイバー攻撃への対応を強化するよう通知した。金融界からは「高い緊張感を持って警戒していく」(大手銀関係者)との声が上がっている。
時事通信