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原発事故後の福島、再生可能な未来を築く

福島県浪江町にある福島水素エネルギー研究フィールドの太陽光発電設備の全景。(ファイル写真/AFP)
福島県浪江町にある福島水素エネルギー研究フィールドの太陽光発電設備の全景。(ファイル写真/AFP)
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09 Mar 2022 03:03:09 GMT9
09 Mar 2022 03:03:09 GMT9

津波で破壊された海岸線に設置された太陽光発電所、グリーンエネルギー「マイクログリッド」、無公害水素の実験的生産。原発事故の悪夢から11年、日本の福島県は再生可能な未来に投資している。

2011年3月11日、地震により日本の東北地方で殺人的な津波が発生し、福島原子力発電所でメルトダウンが引き起こされ、放射能の懸念から多くの人々が避難を余儀なくされた。

その1年後、福島県は2040年までにすべてのエネルギー需要を再生可能エネルギーでまかなうという目標を設定した。これは、住民が故郷を「取り戻す」ための政策であると、関係者は述べている。

国からの多額の資金援助もあり、大幅に進展している。

福島県のエネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合は、2011年の24%から、2020年度には43%に上昇した。

しかし、消費者にとってのコストの高さや、汚染に対する長引く懸念など、障壁はまだ残っている。

福島県企画調整部エネルギー課長の齊藤紀明氏はAFPに対し、「このような事故を二度と繰り返さないという強い思いが、グリーンエネルギー推進の最も重要な出発点でした」と語った。

被災した福島原発の北側の海岸沿いには、きらめくソーラーパネルが並んでいる。この場所は、かつてこの地域で3つ目の原子力発電所の建設予定地だったが、津波の後に計画は断念された。

2020年に完成したサッカー場25面分もの広さの敷地から生まれる電力は、水素の製造に使われる。水素は、再生可能な電力で発電すればクリーンな燃料となり、日本はそれが、2050年までのカーボンニュートラル達成という目標に貢献することを期待している。

浪江町の「福島水素エネルギー研究フィールド」で製造された燃料は、これまで昨年の東京オリンピックを含む小規模な用途や、地元で走る燃料電池自動車への充填に使用されてきた。

この施設を管理する公的研究機関、NEDOの大平英二氏は、日本において「近い将来、より多くの再生可能エネルギーが送電網に乗るようになるでしょう」と語る。

この場所は、最終的には全国的に余剰な生産がある日には、全国の送電網から再生可能エネルギーを引き込み、新たなグリーン水素を生成しながら無駄を減らすことを目指していると、同氏はAFPに語った。

福島県にはすでに水力発電用のダムがあるが、山間部には風力発電所が登場し、バイオマス発電所が建設され、津波で放棄された土地に太陽光発電所が現れている。

しかし、福島県民の誰もが納得しているわけではない。

福島の小規模なエネルギー供給会社で、近年再生可能エネルギーの供給を強化しているアポログループによると、価格が依然としてネックになっているという。

太陽光で発電した電気の価格は、従来の電力よりも「少し高い」と相良元章CEOは言う。

「お客様にこれを説明すると、安い電気の方がいいとよく言われます。まだ理解が進んでいないように感じます」と彼はAFPに話した。

公的補助金はアポロに電力転換を促すきっかけを与えたが、相良氏はそれを「諸刃の剣」と呼ぶ。なぜなら、同社のような企業は補助金に頼るようになり、補助金なしでは苦境に陥るかもしれないからだ。

住民の支持を得ようとするもう一つの再生可能エネルギープロジェクトでは、同じ場所で電気を生産し消費する「マイクログリッド」が盛り込まれている。

福島原発に近い小さな村、葛尾では、2011年から2016年にかけて放射能汚染のために住民が避難し、現在はかつての人口の3分の1以下の450人しか住んでいない。

かつての田んぼは、作業員が危険な廃炉作業を行う際に放射性物質を収容するために使われていたが、現在は太陽光発電所が設置され、その電力は村に直接送られている。

葛尾電力の鈴木精一副社長は、この村を日本の「初のマイクログリッドを持つ自治体」と称している。

村の住民は長期の避難生活から自宅に戻った際、「自然のエネルギー源と一緒に暮らしたい、という強い希望を口にしました」と彼は述べる。

今のところ、太陽光発電所は村の年間平均電力需要の40%をカバーするに過ぎず、他のプロジェクトにも原発事故の不安がつきまとっている。

バイオマスや植物性廃棄物の発電所計画には、汚染された地域からの原料を使用した場合、放射性物質が放出されるのではないかと反対する住民もいる。

しかし、葛尾村にある家族経営のレストランと食料品店で働く石井秀昭氏は、この太陽光発電所のおかげで、自宅がより安全な場所になったとAFPに語った。

「地域でつくられた電気を使えば、どのように発電されたのかがよくわかります」と彼は話す。

「その方が安心です」と彼は述べ、「環境にもいい」と語った。

AFP

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