モナ・アラミ
リヤド:ヨーロッパを中心に、エネルギー市場を不安定にしているウクライナ・ロシア危機は、石油会社と炭化水素生産国にとって恩恵となるかもしれない。長引く戦争に対する懸念の中で、石油価格の高騰が収益を押し上げることになっているからだ。
すでに石油価格は高騰している。米国がロシア産の原油と天然ガスの輸入禁止を発表し、EUと英国が炭化水素の輸入に厳しい制限を課した後、3月7日には1バレル当たり140ドル近くに急騰した。
ブレント原油価格はバレル当たり89.13ドル、WTIはバレル当たり84.90ドルと、100ドルを下回ったものの、サウジアラビア時間の3月15日午後3時30分時点で、再び価格が上昇する可能性は依然として残っている。
インペリアル・カレッジ・ロンドンの特別研究員であり、CMarkitsのCEOでもあるユースフ・アル・シャンマリー氏は、アラブニュースに次のように語った。「状況が悪化し続ければ、価格は前例がないほど上昇する可能性があります」
ロシアがガスの供給停止を決定した場合、石炭と石油への切り替えは「価格の高騰を意味する」ため、状況はさらに悪化するかもしれないと警告した。
カマール・エナジーのロビン・ミルズCEOは、価格がどう動くかは何とも言えず、「状況によります」と付け加えた。
「最近、OPEC増産のアイデアは見送られました。しかし、ロシアの輸出が著しく妨害される場合、価格は150ドルを超えることが予想されます」とアラブニュースによるインタビューの中で警告した。
ロシアの輸出を妨害する
しかし、市場の混乱により価格は急上昇している。
ミルズ氏は、制裁措置が石油業界を直接対象にしていないにもかかわらず、それに対する懸念がすでにロシアの輸出を妨害していると指摘した。
「英国と米国がロシア産原油の輸入を禁止しているのは事実ですが、どちらの国も大量には輸入していません」
しかし、同氏は、金融制裁、民間企業からの制裁や黒海での戦争危険はすべてロシアの輸出に影響を与える可能性が高いと警告した。
これは原油価格の高騰をもたらす可能性があり、つまり、パンデミック後の今年は石油会社が大きな余剰金から利益を得ることを意味する、とアル・シャンマリー氏は述べた。また、これは従来のエネルギーと新エネルギーへの新たな投資にもつながるかもしれないと付け加えた。
しかし、ロシアで大規模な事業を保有していたために、この危機の悪影響を受けた石油会社がある。
BPは、2月下旬に、ロシアの国営石油会社ロスネフチの持ち株20パーセントを売却すると発表した。それに続き、シェルが国内の合弁事業を解消して、ロシアの事業から撤退することを決定した。同社はまた、ロシア産原油の購入を中止すると公表した。時を同じくして、エクソンモービルがロシアの事業を閉鎖すると発表した。
ちなみに、2014年にロシア政府がクリミアを併合した後は、米国の制裁にもかかわらず3社すべてがロシアに残った。しかし、これらの企業は今回、ロシアに留まることのリスクが、それによりもたらされる可能性のある経済的利益を上回っていると感じた。
「ロシアから撤退した主要な石油会社、特にBP、シェル、エクソンモービル、そして小規模ながらエクイノールとウィンターシャルは損失を被っています。しかし、これらの会社はすべて、おそらく価格上昇に比例する以上に(再び)収益を得られるでしょう」とミルズ氏は述べた。
恩恵を受けるGCC諸国の企業
GCC地域にある他の企業は、今回の危機に直面して恩恵を受ける好位置につけている。
「GCCの石油会社ははるかに高い価格から利益を得るでしょうし、アラムコとアブダビ国営石油会社(ADNOC)は少なくとも(すでに取り組んでいた)増産のための方針を定め予算を増加するでしょう」とミルズ氏は指摘した。
しかしながら、カマール・エナジーのCEOは、これまでのところ、市場シェアという点においては実際には誰もシェアを拡大していないと強調した。同氏は、OPEC諸国が(大幅に)増産を決定すれば、市場シェアを獲得するだろうと説明した。また、米国シェール業界が掘削に対しより積極的な投資を始めれば、同様にシェアを拡大するだろう。
これは、一般的にはオイルシェールの採掘はより高価であるものの、石油価格の高騰によりオイルシェールの生産がより費用対効果が高くなるためである。
「ロシア国外の主要な石油会社はすべて、収益増加により大きな恩恵を受けています」とミルズ氏は強調した。
ヨーロッパはロシアのエネルギーに大きく依存していることを覚えておかなければならない。ブリュッセルに拠点を置くシンクタンク、ブリューゲルによると、2021年には、EUが使用する天然ガスの38パーセントがロシアから供給されている。
つまり、ロシアに制裁を課した場合、輸入国は主にGCC諸国で他のエネルギー源を探さなければならない。
石油のほか、船舶で輸送できる液化天然ガスも含まれる。1月に、EUは天然ガス供給についてカタールとの協議を開始した。
さらに、EUは3月にロシア産ガスの輸入を2023年までに3分の2に削減すると発表した。
持続可能エネルギーへの投資
しかし、現在の石油の好況は、GCC諸国の持続可能なエネルギーソリューションに対する投資の減少を意味するのだろうか。
専門家によると、必ずしもそうではないようだ。
GCC諸国は過去数年間、持続可能なエネルギープロジェクトを準備してきた。たとえば、サウジアラビアはビジョン2030の一環として、国家再生可能エネルギー計画を導入している。この計画の目標は、同国の再生可能エネルギー生産のシェアを増やし、炭素排出量を削減することである。
この計画を通じて、ビジョン2030に概説されているように、エネルギー省は液体燃料の使用を最小限に抑え、発電に特化した全国的なエネルギーミックスを多様化することに取り組んでいる。また、2030年までに天然ガスと再生可能エネルギーのシェアを約50パーセントに引き上げることを目指している。
アラブ首長国連邦の副大統領兼首相、またドバイ首長でもあるシェイク・ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム殿下は昨年10月、同国の目標は2050年までに温室効果ガスの純排出ゼロを達成することだと発表した。
アル・シャンマリー氏は、石油価格の高騰が多様化計画の強化に役立つと指摘した。
「ブルー水素およびグリーン水素、観光、娯楽、鉱物などを含め、高騰した石油価格にもかかわらず、代替エネルギーに関するサウジアラビア政府の主要な発表をすでに目にしています」と同氏は付け加えた。
また同国は、現在輸入されている製品を作る生産拠点の創設を意味するテクノロジーのローカライズに焦点を当てているとアル・シャンマリー氏は説明した。
ミルズ氏にとって、持続可能性への投資はGCC内の国によって異なる。
「少なくともサウジアラビアとアラブ首長国連邦の場合、これは多様化のための投資を強化するでしょう。GCC諸国による石油・ガス投資計画における大きな変更はまだ見られません」と締めくくった。