
日銀は11日、春の支店長会議を開き、全国を9地域に分けて分析した「地域経済報告(さくらリポート)」をまとめた。新型コロナウイルス感染症の再拡大や部品の供給不足などが響き、9地域中、中国地方を除く8地域の景気判断を下方修正した。原材料価格の高騰やロシアによるウクライナ侵攻で、企業活動の先行きに対する不安も広がった。
報告では、個人消費が2020年7月以来、全9地域で判断が下方修正された。前回の1月報告の際は、コロナ感染が和らぐ中、飲食・宿泊など対面型サービスの需要が回復しつつあったが、その後の変異株「オミクロン株」の感染急拡大で、持ち直しの動きが一服した。
生産は東海、東北など4地域が判断を引き下げた。自動車関連を中心に半導体などの部品不足が響いた。
黒田東彦総裁は会議で、国内景気について「一部に弱めの動きも見られるが、基調としては持ち直している」と発言。先行きに関しても「資源価格上昇の影響を受けつつも回復していく」との見方を示した。
今回の報告では、原材料コストの上昇を受けて価格転嫁に動く企業の声が増加。ただ、小売業や飲食業からは「顧客離れを避けるために値上げは行わない」「来客が減少する中で値上げは困難」などと対応に苦しむ声も聞かれた。ウクライナ情勢に関しては、商品供給の不足や受注減など先行きの企業活動への懸念が指摘された。
高口博英大阪支店長は会議後の記者会見で、原材料高について、「中小企業や非製造業では最終消費財への価格転嫁が難しい」と指摘。また、「国際商品市況の上昇はウクライナ情勢を背景に、今後も続く可能性がある」と述べ、原材料高が企業収益や個人消費に与える影響を注視する考えを示した。
時事通信