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GCC経済が石油から脱却するためにはさらなる努力が必要だと世界銀行関係者が語る

画像:Shutterstock
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31 May 2022 09:05:51 GMT9
31 May 2022 09:05:51 GMT9

ワエル・マフディ、ダヤン・アブティン

リヤド:湾岸協力会議(GCC)は経済拡大期において改革への取り組みを続けているが、炭化水素への依存の少ない持続可能な成長モデルを実現させるには、さらなる努力が必要だと世界銀行幹部が語った。

「GCCはこの2年間の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行と原油価格の下落という二つのショックにも非常にうまく対処してきました。改革と質の高い医療制度により、この地域では世界の他の地域に比べてCOVID-19の感染者数の抑え込みと素早い経済活動の再開が可能でした」。世界銀行の湾岸協力会議地域理事を務めるイッサム・アブ・スレイマン氏はアラブニュースに対してそう語った。

GCC加盟国にとっては炭化水素産業が最重要収益源だが、同産業の価格変動への耐性を高めるためにはさらなる努力が必要だとアブ・スレイマン氏は話す。それは収益と支出のバランスを取ることで実現可能だ。

世界銀行の予測によると、2021年、GCC諸国は4.9%のGDP縮小から回復して3%の成長に転じ、今年はさらに伸びて5.9%の成長が見込まれている。

補助金あるいはGCC加盟国内の収益の再分配よりも、低所得者層へのリーチに効果的な方法があります。

世界銀行湾岸協力会議地域理事、イッサム・アブ・スレイマン氏

地域の課題

「GCC6カ国のうち4カ国は付加価値税(VAT)を導入し、対策を講じています。サウジアラビアはパンデミック中にVATの増税まで行っていますが、収益面でさらなる取り組みが必要です」

支出面に関しては賃金総額と 補助金政策に改善の余地があるとアブ・スレイマン氏は言う。

「GCCの賃金総額は世界の同様の国々に比べて非常に高いわけですが、その要因は同地域が規模の適正化を目指している公共セクターにあります」。アブ・スレイマン氏はそう付け加える。

この賃金総額の高さは数十年に渡って存在してきた社会契約によるものだが、人口の増加に伴ってこのやり方はもはや目的の実現に寄与しておらず、財政赤字を増加させている。

「補助金あるいはGCC加盟国内の収益の再分配よりも、低所得者層へのリーチに効果的な方法があります」。アブ・スレイマン氏はそう話す。

補助金政策は、収入ピラミッド下位40%を対象にしたより効果的な社会的セーフティネットに変えていかなければならない。

たとえばサウジアラビアは、従来の補助金政策よりも遥かに大きな影響を低所得者層に与える、現代的な社会的セーフティネットを1月に導入した。

「収益と支出のバランスに経済多様化という政府のビジョンが合わさることにより、同地域の経済は原油価格変動への依存を減らしていくことができるでしょう」。アブ・スレイマン氏はそう話す。

2022年の成長

2022年の成長の中心的な原動力となるのは炭化水素市場で、12%の成長が見込まれている。

「GCCはサプライチェーン・ショックと原油価格上昇の恩恵を受けました。しかしながら、燃料価格が有利な状況でありながら、GCC加盟国は経済改革を続けて歴史的なトレンドを打破しました」。アブ・スレイマン氏はそう語る。

GCCの4カ国――サウジアラビア、バーレーン、カタール、オマーン――は経済の仕組みを変えて政府主導を弱め、この数年で顕著な変化を遂げている。

「民間セクターに依拠した経済への移行は非石油セクターへの多様化に注力しており、今後数年間に渡って続いていくと見込まれています。また、GCC加盟国内および中東・北アフリカ(MENA)地域への波及効果も生まれるでしょう」

未来に備えて

さらにアブ・スレイマン氏は、若者世代、特に女性の雇用創出という重要テーマについても語った。「観光、エンターテインメント、デジタルセクターの成長に注力しているサウジアラビアのような経済においては、数年前よりも遥かに高い教育を受けている現代の若者にフォーカスするべきです」。アブ・スレイマン氏はそう話す。

サウジアラビアが女性の労働市場への進出を奨励するようになったのは2019年と最近のことだが、短期間で女性が労働雇用市場に大量流入したことで、大きな楽観的見通しが広がったとアブ・スレイマン氏は言う。

「統計的に言うと、女性は男性よりも高い教育を受けており、適切な法律が作られれば女性たちの雇用市場への進出が進みます。これにより、サウジアラビアおよびGCC加盟国世帯の収入増加に繋がります」

さらにアブ・スレイマン氏は、国営企業から民間セクターへのGCCインフラの移行の必要性についても語った。「そうすることで同地域に外国からの投資を呼び込み、コスト効率を改善し、競争を促すことができます」

強い楽観的な見通しを示したアブ・スレイマン氏だが、唯一の懸念は原油価格上昇期にこうした変化に必要な改革が止まってしまうことだという。また、他のリスク要因として米ドルへの金融政策の依存を挙げた。

アブ・スレイマン氏は次のように付け加える。「これは需要面からのインフレ抑制には良いかもしれませんが、同地域における投資にも影響を与えるでしょう」

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