
東京電力福島第1原発事故による影響を調査してきた国連科学委員会のハース前議長は19日、東京都内の日本記者クラブで会見し、「(データ上は)放射線被ばくが直接影響した健康被害はない」との見解を改めて示した。調査は、最新のデータを基に独立した立場の多数の専門家が関わっており、「今後結論が大きく変わる可能性は低い」と強調した。
ハース氏は、将来的ながん発生率への影響についても「識別できる水準になるとは考えにくい」と説明。事故後に周辺で子どもの甲状腺がんの診断数が増加したことに関しては「広範囲に及んだ高感度スクリーニングの結果だ」と結論付けた。
会見には、同委が昨年3月に公表した報告書の執筆者も同席。執筆者は、事故発生直後のデータが十分ではないとの指摘に対し、そもそも即時に健康への影響は出ないと反論した。一方で、現在までの経過観察で影響は認められないものの、調査の継続が必要だと語った。
国連科学委関係者の訪日は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて延期されていた。21日には福島県いわき市で市民向けの意見交換会を実施する。
時事通信