Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • ビジネス
  • イタリア・リビアの石油会社、80億ドル規模の天然ガスの契約を締結 メローニ首相がトリポリ訪問

イタリア・リビアの石油会社、80億ドル規模の天然ガスの契約を締結 メローニ首相がトリポリ訪問

共同記者会見に臨むイタリアのジョルジャ・メローニ首相とリビア拠点の国民統一政府のアブデル・ハミド・ドベイバ首相=2023年1月28日、リビア・トリポリ(AFP)
共同記者会見に臨むイタリアのジョルジャ・メローニ首相とリビア拠点の国民統一政府のアブデル・ハミド・ドベイバ首相=2023年1月28日、リビア・トリポリ(AFP)
Short Url:
29 Jan 2023 09:01:58 GMT9
29 Jan 2023 09:01:58 GMT9
  • メローニ首相は産油国リビアを訪問したことで、2021年12月にリビアで大統領選挙と議会選挙が無期限延期されて以来同国を訪問した欧州諸国の高官としては最高位となった。

カイロ:イタリアのメローニ首相は土曜日、リビアで同国西部の政府高官らと共に、イタリアと欧州連合(EU)の最重要課題であるエネルギーと移民に焦点を当てた会談を行った。訪問中、両国の石油会社は80億ドル相当の天然ガスに関する契約に署名した。これはリビアのエネルギー・セクターへの単独投資としては少なくとも過去20年で最大となる。

リビアは、就任3か月目のジョルジャ・メローニ首相が今週北アフリカで第2に訪れた国である。

メローニ首相は、モスクワのウクライナ戦争の中で、ロシアのエネルギーに代わる天然ガスの新たな供給を確保しようとしている。

その前には、イタリアに対する天然ガスの主要供給国であるアルジェリアを訪問し、いくつかの覚書に署名した。

首相の事務所によれば、首相は、リビアの首都トリポリで唯一機能しているミティガ国際空港に、アントニオ・タヤーニ外相とマッテオ・ピアンテドージ内相を伴い、厳重な警備の中で到着したという。

メローニ首相は、リビア国内で対立する東西2政府の一つである国民統一政府のアブデル・ハミド・ドベイバ首相と会談し、首脳評議会のモハメド・ユーニス・メンフィ議長とも会談を行った。

ドベイバ首相との会談で、メローニ首相はアルジェリアでの発言を繰り返し、イタリアは北アフリカでの存在感を高めようとしているが、「略奪的」な地位は求めておらず、アフリカ諸国の「成長と富裕化」を支援したいと考えていると述べた。

訪問と同時期に、イタリアの国営エネルギー会社ENIのクラウディオ・デスカルツィCEOは、リビアの国営石油公社(NOC)と80億ドル相当の契約を締結し、リビア沖の2つのガス田を開発することを決定した。NOCのファルハット・ベングダラ総裁も署名を行った。

契約では、リビア北部のブロックNC-41にある2つの沖合天然ガス田の開発などが取り決められている。ENIによれば、2026年に汲み上げを開始し、日量は推定で2100万立方メートルに達するという。

署名式に出席したメローニ首相は、この契約を「重要かつ歴史的」なものとし、ヨーロッパのエネルギー源確保に役立つと述べた。

「リビアは我々にとって明らかに戦略的経済パートナーである」とメローニ首相は述べた。

土曜日に締結された契約は、東西に分裂したリビア政権間の対立を深めることになりそうだ。トリポリ・トルコ間の石油や軍事に関する以前の取引と同様である。今回の契約でもすでにドベイバ政権内の分裂が露わになっている。

署名式に出席しなかったモハメド・アウン石油相は、地元テレビで契約を「違法」だと批判し、NOCが同省と事前に協議していなかったと主張した。

ベングダラ総裁は会見で石油相の批判には触れなかったが、契約を拒否する者は法廷で争うことができると述べた。

ENIは、治安上の問題が続く中でもリビアでの事業を継続し、主に国内市場向けにガスを生産している。

昨年、リビアはイタリアにグリーンストリーム・パイプラインを通じて年間26億3000万立方メートルの天然ガスしか供給していない。この量は、2011年にリビア内戦が勃発する前の年間80億立方メートルの水準を大きく下回っている。

ミラノのシンクタンクISPIのマッテオ・ヴィラ氏によれば、不安定さ、国内需要の増加、過小投資が、リビアの海外向けガス供給を妨げているという。新規契約を結んでいくことは「イメージの面でも重要だ」とヴィラ氏は言う。

また、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、イタリアはロシア産天然ガスへの依存度を下げようと動いている。昨年、イタリアは輸入量を3分の1(110億立方メートル)にまで削減した。

メローニ首相は今回の訪問により、2021年12月にリビアで大統領選挙と議会選挙が無期限延期されて以来同国を訪問した欧州諸国の高官としては最高位となった。これに促されて、リビア東部の代表議会は、ドベイバ首相が退陣を拒否した後、対抗策として別に首相を任命した。

過去10年間の大部分にわたって、リビアは互いに対立する2政府に統治されてきた。一つは同国東部に拠点を置き、もう一方は西部のトリポリに拠点を置く政府だ。

2011年、リビアでは、NATOの支援を受けた反政府活動が内戦に発展した。長年独裁を敷いてきたムアンマル・カダフィ氏が倒され、後に殺害された後、同国は混乱に陥った。

今回の訪問にピアンテドージ内相が参加したことは、メローニ首相の外遊において移民問題が最大の関心事であることを示唆している。内相は、リビア沖で活動する慈善救助船に対する政府の取り締まりを先導してきた。当初は入港を拒否しており、最近は妥協したものの入港先として北イタリアの港(航行に何日もかかる)を指定している。

契約締結後、同日中に行われたメローニ首相との共同記者会見で、ドベイバ首相は、欧州への渡海を試みる移民の取り締まりにあたって、リビア沿岸警備隊がイタリアより支援の一環として「完全装備」の巡視船5隻の供与を受けることを明かした。

海で遭難した移民の救助活動を支援するネットワーク「アラームフォン」は、イタリアによる巡視船供与を批判した。

同団体はAP通信に宛てた電子メールで「これは目新しいことではないが、憂慮すべきことだ。これでは、海で身柄を拘束され、逃れようとした国に送り戻される移民が増えるのは必至だ」

リビアに詳しい専門家で、英国王立防衛安全保障研究所のアソシエイトフェローであるJalel Harchaoui氏はメローニ首相について、「リビアの移民とエネルギー政策に関して、前任者よりも何らかの強い姿勢を示す必要がある」と述べている。

一方で、「イタリアがこれまでリビア西部に対して行ってきた駆け引きを一気呵成に前進させることは難しいだろう」とも述べた。

リビアは、欧州への渡航を目指すアフリカや中東諸国からの移民の拠点にもなっており、イタリアには毎年数万人の移民が到着している。

歴代イタリア政権と欧州連合は、こうした危険な海上渡航を抑制することを期待して、リビアの沿岸警備隊とリビア西部の民兵を支援してきた。

しかし、国連や権利保護団体によると、こうした欧州の政策によって、移民は武装組織の支援を受けるか、虐待が横行する劣悪な環境の収容所に送られることになるという。

AP

特に人気
オススメ

return to top