
香港:14日、米国の2つの金融機関の破綻の影響が広がることへの懸念から、銀行株が売られてアジア市場は失速した。
シリコンバレー銀行(SVB)が10日に迅速に閉鎖された数日後、今度はシグネチャー銀行が破綻した。こうした事態を受け、米当局は他の金融機関や預金者への支援をすぐさま約束せざるを得なかった。
連邦準備制度理事会(FRB)や財務省、連邦預金保険公社が措置を講じたことで、投資家はある程度の安心を得た。しかし、取り付け騒ぎへの恐れから、米国のいくつかの銀行株が売られた。
ジョー・バイデン大統領は「国の銀行システムは健全」と請け負ったが、売りを止める効果はなかった。欧州の指導者たちも同様に、投資家の不安を払拭しようとしている。
主にテック分野のベンチャーキャピタルへの資金調達を専門としていたSVBが破綻した大きな原因は、FRBがインフレ抑制目的で金利を急上昇させたことにある。これにより、株価が大きな打撃を受けた。
「FRBは引き締め政策を一旦中断し、金融市場に一定の安定をもたらす必要がある」との声がコメンテーターや主要銀行から上がっている。借り入れコストを削減できるとの意見もある。
こうした状況を受けて13日はドル安となったが、アジア市場ではある程度反動も見られた。危機を受けて国債の利回りは世界的に落ち込み、アナリストは不況のリスクが高まったと警鐘を鳴らしている。
「世界各地の債券市場を見ると、世界的な経済減速の兆候が見られる。これはアジアにとって良い状況ではない」と、日興アセットマネジメントのジョン・ヴェイル氏は言う。
14日はじめの東京、シドニー、ソウルの各市場は2%近く下落し、マイナススタートとなった。香港、上海、シンガポール、台北は大きな売りに見舞われた。
銀行株では日本の三菱UFJフィナンシャルと三井住友フィナンシャルグループがそれぞれ7%以上下落し、香港上場のHSBCは3%以上下落した。
ナショナルオーストラリア銀行は2%以上、韓国のKBフィナンシャル・グループは3%下落した。
ブルームバーグ・ニュースは、3日間で世界の金融株の時価総額から約4650億ドルが消し飛んだと報じた。
ナショナルオーストラリア銀行のロドリゴ・カトリル氏は「当局による措置は、今のところ米国の銀行からの預金流出を防いでいるが、投資家の資金引き上げを回避するには十分ではなかった」と述べている。
「金融危機のリスクは依然として高く、投資家は慌ててこの分野へのエクスポージャーを減らしている」
SPIアセットマネジメントのスティーブン・イネス氏は、問題を抱えている企業へのエクスポージャーが米国以外の銀行にほとんどなく、世界の金融システムに現金が溢れているにもかかわらず、売りが出ていると指摘している。
そして「米国の金融ストレスによって、あらゆる銀行が実体経済への融資を抑制し、広範な金融条件を引き締め、広範な市場へのリスクを増幅させる可能性がある」と述べた。
「低金利の環境は、全世界の銀行利益に影響を及ぼす可能性がある」
経済の状況が思わしくなく、雇用市場も厳しい中、FRBが来週、当初の見通しよりも金利を引き上げるとの想定があり、投資家はすでに神経質になっている。
投資家は、今週発表される米消費者インフレのデータを不安な気持ちで待ち構えている。SVBの危機に見舞われる中、想定よりも悪い数字はFRBにとって大きな頭痛の種になる。
「政策のミスは市場にとって最大のリスクになる」。Alphinity Investment Managementのメアリー・マニング氏はブルームバーグ・テレビジョンでそう語った。
「インフレを制御すると同時に、銀行システムに不安定性があるという事実に対処するのは困難だ」
AFP