Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

崩壊寸前のガザにて、インドネシア病院が人命救助に奔走

病院管理当局は、同病院が崩壊の危機に瀕していると先週から警告していた。(AFP/ファイル)
病院管理当局は、同病院が崩壊の危機に瀕していると先週から警告していた。(AFP/ファイル)
Short Url:
12 Nov 2023 09:11:24 GMT9
12 Nov 2023 09:11:24 GMT9
  • ガザ北部にあるインドネシア病院は、2015年に同国民の寄付により建設された
  • イスラエル軍は、病院がハマスの「指揮統制センター」の隠れ蓑になっていると非難し、病院を標的にした

アラブニュース

ジャカルタ:インドネシアの資金でガザに設立された病院は、イスラエル軍の激しい砲撃により真っ暗になった。しかし、停電や絶え間ない空爆にもかかわらず、包囲下にあるパレスチナの全医療従事者と同様、同院の医師らは業務を続けている。

攻撃による死傷者が増加し続けるなか、230床を有するベイト・ラヒヤ所在のインドネシア病院は、数千人の治療や避難を受け入れている。

同病院管理当局、ならびに2015年に同病院の建設資金を出したインドネシアの非政府組織「医療緊急救援委員会」(MER-C)は、同病院が崩壊の危機に瀕していると先週警告していた。

同病院のパレスチナ人医師、看護師、および救急隊員ら170人は、先月イスラエル軍のガザ攻撃と完全包囲が始まって以来、休むことなく勤務している。ガザ地区のほとんどの医療施設では、運営に必要な燃料も、負傷者を治療するための薬も、食料も水もなくなった。

ガザのインドネシア病院前で炎上する車両。(MER-C)

同病院のMER-Cボランティアである23歳のフィクリ・ロフィウル・ハックさんがアラブニュースに語ったところによると、アル・シファ病院から送られてくるランチパックに頼っており、「朝食も夕食も」なかった。

しかし、アル・シファ病院は木曜日からイスラエル軍に包囲され、救急部門、分娩室、国内避難民が寝泊まりしていた庭をミサイルが直撃し、多数の死者と重傷者が出ていると報道されている。

金曜夜には、アル・シファ病院とインドネシア病院の両方が停電した。

「インドネシア病院は真っ暗になりましたが…医師らは今も献身的に医療サービスを提供しています」と、MER-C会長のサルビニ・ムラド医師は土曜、アラブニュースに対し語った。

「彼らの献身は並外れているだけでなく、人道分野での奉仕に専心していると言えます。私は、被災者を救うために戦う彼らを助けられずに、打ちのめされ茫然としています」。

インドネシア病院は、2015年末に開院し、2016年にはインドネシアのユスフ・カラ副大統領(当時)が正式に落成式を執り行った。

この総合病院は4階建てで、2009年に地元政府から寄贈された、ガザ北部のジャバリア難民キャンプ近くの16200平方メートルの土地に建っている。

病院の建設および設備は、インドネシア国民の寄付によって賄われた。インドネシア赤十字社などの団体に加え、富裕層から最貧層までが寄付を寄せた。

2011年から2015年にかけて、数十人ものインドネシア人エンジニアや建設業者が、病院施設の設計や建設、開院準備をボランティアとして行った。

インドネシア病院は、2015年末に開院し、2016年にはインドネシアのユスフ・カラ副大統領(当時)が正式に落成式を執り行った。(MER-C/File)

2013年と2014年には、インドネシアの日刊紙『レプブリカ』の読者、様々なイスラム教団体、さらにインドネシアのポピュラー音楽史上最高のロックバンドの一つとして広く知られるグループ、スランクのメンバーなどの有名人の支援によって、同病院設備のための資金集めが行われ、同国主要諸都市で5万ルピア(約3ドル)の少額寄付を呼びかけるイベントも開催された。

開院以来、MER-Cはボランティアを派遣し続けている。そのうちの3人(アラブニュースと連絡しているハックを含む)は、先月イスラエルの攻撃開始時にガザにいた。インドネシア政府は避難を援助すると申し出たが、全員が緊急支援のために残留することを選んだ。

イスラエルは、ガザを拠点とする過激派組織ハマスによる10月7日の攻撃への報復として、人口密度の高い飛び地である同地区への砲撃を毎日続けている。同施設は、ガザにおける残り少ない病院の一つだ。

イスラエル軍は先週、ハマスがインドネシア病院を「地下の指揮統制センターを隠すために利用している」と主張した。

MER-Cは、この主張を「公然の虚偽を作り出す」試みとしてただちに糾弾した。インドネシア外務省は、同病院は「インドネシア国民が完全に人道的な目的で、ガザのパレスチナ人の医療ニーズに応えるために建設した施設である」と述べた。

MER-Cのサルビニ会長はその時に、イスラエル軍の非難は「ガザのインドネシア病院を攻撃するための前提条件づくり」かもしれないと警告していた。

その数日後の木曜日、ミサイルが同病院周辺を直撃し、少なくとも8人が死亡、多数の負傷者を出し、病院の施設の一部が損壊した。

MER-Cの推定によると、現在約1000人が負傷のため同病院で治療を受けている。10月7日以来、イスラエルによる民間人空爆により、ガザでは女性や子どもを中心に1万1000人以上が死亡し、数万人が負傷している。

2016年の同病院の様子。(AFP/ファイル)

ガザ保健省は、死者の中には195人の医師、救急隊員、看護師が含まれていると推計している。医療従事者はジュネーブ条約で保護されているにもかかわらず、過去2週間、その親族ともども攻撃の標的とされることが増えている。

インドネシア人にとっては、彼らは英雄だ。

ジャカルタの心臓専門医であるベルリアン・イドリアンシャは、アラブニュースに対しこう語る。「他人を救うために誰も自分の命を危険にさらされるべきではありません」。

「私は医者として、インドネシア病院の医師やスタッフ、そしてガザの全ての医療従事者が、死の瞬間まで他人を助け続けようと決意を固めていることに対し、驚嘆すると同時に心を痛めています」。

環境保護活動家で持続可能性コンサルタントであるパラミタ・メンタリ・ケスマ氏は、彼らの献身的な姿に深い感銘を受けた。

「ガザの医師、看護師、医療スタッフは、私たちのヒーローです」と、彼女はアラブニュースに語った。

2015年、ガザのインドネシア病院の建物を描くコンテストで、パレスチナの子どもたちと一緒にポーズをとるインドネシア人ボランティア。(MER-C)

「彼らが日々経験している犠牲や精神的プレッシャーは、私たちには想像もつきません…個人的な損害や、次には自分が標的になるかも知れないと分かっているのに、人命救助を続けているなんて」。

1945年、オランダによる植民地支配からの独立を最初に承認したうちの一つがパレスチナであったが、それ以来インドネシアはパレスチナ人の強固な支援者である。

多くのインドネシア人は、植民地主義の廃止を呼びかける自国憲法に基づき、パレスチナの国家化は義務だと考えている。

「同病院は、まさにこの概念…パレスチナの人々に対するインドネシアの継続的な支援を象徴するものです」とケスマは語った。

多くのインドネシア人は、植民地主義の廃止を呼びかける自国憲法に基づき、パレスチナの国家化は義務だと考えている。(MER-C)

ここ数週間、国連機関や赤十字・赤新月社、人権弁護士たちが、イスラエルによるガザでの殺害作戦はジェノサイド(大量虐殺)の域に達していると警告しているにもかかわらず、世界の指導者が毎日行われている民間人にとって致命的な攻撃を止めようとはしていない中、こうした支援の重要性が特に高まっている。

「故郷インドネシアからできることはほとんどありませんが、同病院が私たち国民の声だけでなく、停戦を求める世界中の声を代弁してくれることを願っています」とケスマは語った。

「同病院は、私たちの祈りや存在の延長戦上にあるのです」。

インドネシアの女優であり政治家でもあるワンダ・ハミダにとって、同病院は、イスラエルによる計画的な絶滅作戦がガザの地で展開される中、世界の大国の多くとは異なりパレスチナ人と連帯し続けているインドネシア国民とその政府を象徴するものだ。

「ひとりの母そして人間として、私はこの虐殺に打ちのめされています。私にとって、これは戦争ではありません。民族浄化であり、ホロコーストです」と、彼女はアラブニュースに語った。「痛ましいのは、このような虐殺を、私たちが人権政策でお手本にしているはずの米国やEUが支持していることです。でも、もうお手本にはできません」。

インドネシア病院は、彼女にとって、インドネシア国民が「パレスチナ人が再び独立し、祖国を自分の手に取り戻すまで、常に共にありパレスチナ国家を支援する」という約束を示すものだ。

インドネシア国民のこの感情は「決して変わることはありません」と、彼女は言明した。

特に人気
オススメ

return to top