
リヤド:世界のエネルギー移行を現実的で秩序ある包括的なものにするためにアジア諸国は前に出て重要な役割を果たすべきだと、サウジアラビアン・オイル・カンパニー(サウジアラムコ)の社長兼CEOであるアミン・ナーセル氏は述べた。
マレーシアの国営石油企業ペトロナスの主催によりクアラルンプールで開催されている会議「エナジー・アジア」で講演したナーセル氏は、アジア諸国は各国独自の優先事項を反映したアプローチを採用すべきだと主張した。
また、この講演の場を借りて、高まるエネルギー需要とより持続可能なソリューションの間のバランスを取ることに貢献するためのサウジアラムコの戦略を改めて強調した。
「エネルギー移行に関しては、このダイナミックな地域の利益が一般的なナラティブや現在の政策に適切に反映されているとは思わない」
ナーセル氏によると、既存のエネルギー移行政策はエネルギー安全保障や価格の安さなどの要因を強調するだけでなく、環境の持続可能性にも取り組むものでなければならない。
「この会議はアジアにとって、エネルギー移行に関する独自の優先事項についてより大きくより明確に声を上げる絶好の機会だと思う。エネルギー移行についてのアジアの声は、経済についてのアジアの声と同じくらい大きなものであるべきだ」
「我々は、エネルギー、化学品、先端材料、潤滑油、そしてゲームチェンジャーとなる技術に支えられた新しい低炭素エネルギーへのアジアの需要の高まりに賭けている。これらのニーズに賭けるべく、アジアにとってのワンストップの供給源になろうとしているのだ。また、エネルギー安全保障や価格の安さと環境の持続可能性の間のバランスを取ることも目指している」
ナーセル氏はアジアの将来的な展望について、アジアにおけるエネルギー移行への新たなアプローチは「この地域の経済と人々にふさわしいエネルギーの未来をもたらす」ことに寄与するだろうと語った。
また、2023年の残りの期間も世界の石油市場のファンダメンタルズは引き続き健全であると予想されるとしたうえで、それは主に中国やインドなどの途上国における健全な需要によって牽引されるだろうと指摘した。
「いくつかのOECD(経済協力開発機構)諸国では景気後退リスクがあるものの、中国やインドをはじめとする途上国の経済が、今年は日量200万バレル以上という健全な石油需要成長を牽引している」
さらに、中国はいくつかの経済的逆風や課題に直面しているものの、運輸セクターや石油化学セクターは依然として強い成長の兆しを示していると指摘した。
ナーセル氏は2月、世界のエネルギー移行政策は世界の需要にとって危険な道筋を作り出していると警鐘を鳴らした。代替エネルギーは世界全体にエネルギーを供給できるところまで来ていないからだ。
同氏はリヤドで開催された「サウジ資本市場フォーラム」で次のように述べた。「代替エネルギーは世界の需要という重荷を背負う準備ができていない。私の考えでは、よりリスクの少ない世界のエネルギー移行のためには、資本市場を含む全ての者が、エネルギー移行の展開の仕方についてより現実的な見方をしなければならない」
また、3月の記者会見でアラブニュースからの質問に答えた際には、価格の安さ、供給の安定、持続可能性が保証されて初めてエネルギー移行は実現すると語った。