カイロ:中東・北アフリカ(MENA)地域のスタートアップは、起業活動の持続的な活力を示すことで投資家からの強い関心を集め続けている。
ベンチャーデータ調査会社MAGNiTTによると、MENA地域のスタートアップは2023年8月、18件のディールを通して7600万ドル以上を調達した。これは、より広い中東・アフリカ・パキスタン地域のスタートアップが同期間に46件のディールで1億3900万ドルを調達したのと比較しても上首尾であった。
注目すべきは、8月に中東・アフリカ・パキスタン地域で記録された3件のイグジットのうち2件をMENA地域のスタートアップが占めていることだ。これは、グローバルなスタートアップエコシステムにおけるMENA地域の役割の高まりを浮き彫りにしている。
しかし、こうした有望な数字は厳しかった2023年上半期のすぐ後に続くものだ。MENA地域のスタートアップは最初の6ヶ月間に193件のディールで11億ドルの資金を集めたが、これは前年同期比で41%の減少である。
とはいえ、この調達額減少幅は世界平均の52%と比較すると著しく良好である。
MENA地域のディール件数は49%減で、世界平均の25%減よりも急激な減少であった。
この報告書ではセクター別の業績も掘り下げられており、フィンテックが、ディール件数は前年比51%減であるものの、引き続き優勢であることが明らかにされている。
eコマース・小売がこれに続いた。これは、上半期の同セクターの資金調達総額の80%を占めたサウジアラビアのNanaとFlowardへの多額の投資に後押しされたものだ。
対照的に、運輸・物流セクターは大きな困難に直面した。資金調達額はほぼ90%縮小し、ディール数は2022年上半期と比較して半減した。
全体としては、MENA地域のスタートアップエコシステムは、特にフィンテックやeコマースなどのセクターにおいてレジリエンスとポテンシャルを示している。8月の2件の注目すべきイグジットは、この地域の今後の投資環境を示す楽観的な指標となっている。
PIF傘下のジャダ、アリフ・キャピタルのGCCファンドにコミット
公的投資基金(PIF)が所有するジャダ・ファンド・オブ・ファンズ社が、アリフ・キャピタルの湾岸協力理事会(GCC)諸国に特化したファンド「アリフファンドI」に対する強力なコミットメントを発表したことで、サウジアラビアの中小企業への後押しが期待されている。
この動きは、プライベートエクイティやベンチャーキャピタルを通した戦略的で持続可能な投資に専念するというジャダの姿勢に沿ったものである。
ジャダのバンドル・アルホマリーCEOは、サウジアラビアの経済の枠組みの重要な構成要素である中小企業を、重要な資本、人材、技術の提供を通して支援するという共同の目的を強調する。
同CEOは次のように語る。「強力な運用会社は、その専門知識を活かして良いアセットを選定し、ポートフォリオ企業をサウジアラビアの経済多角化目標に貢献するよう導くことで、重要な役割を果たすと考えている」
アブダビ・グローバル・マーケットを拠点とするオルタナティブ投資運用会社であるアリフキャピタルは、最大2億5000万ドルのコミットメントを目標としている。アブダビ・デベロップメント・ホールディング社を主体とするこのファンドは、GCC諸国の質の高い中規模企業に焦点を当てている。その戦略は、価値創造とデジタルトランスフォーメーションを重視するジャダの目標と密接に関連している。
アリフ・キャピタルの創業者であるフダ・アル・ラワティCEOは、ジャダの多額の投資に感謝の意を表しつつ、次のように述べた。 「サウジアラビア国内の中小企業のポテンシャルは広大だ。その機会を実現するうえでアリフ・キャピタルが影響力のある役割を果たす機会を得られることを嬉しく思う」
UAEのフィンテック企業MALY、プレシードラウンドで160万ドルを調達
UAEのフィンテックスタートアップMALYは、地域のエンジェル投資家コンソーシアムから160万ドルのプレシード資金を調達した。
2022年創業のMALYは、自社サービスを金融リテラシーに焦点を当てたプラットフォームとして位置づけている。ユーザーは直感的なアプリと銀行にリンクしたカードを通してスマートに家計を管理できるほか、貯蓄、投資、情報に基づいた支出決定などをワンストップで行うことができる。
MALYの共同創業者であるモー・イブラヒムCEOは、「我々の使命は単純だが深いものだ。それは、フィナンシャルウェルネスの改善をMENA地域の個人にとってアクセス可能なものにすることである」と語る。
この新たな資本注入は、他のGCC市場やMENA諸国への拡大というMALYの野心的な計画を増強するためのものである。
Rewaa、ワエド・ベンチャーズ主導のシリーズAラウンドで2700万ドルを調達
小売業界向けフルスタック在庫管理プラットフォームをリードするRewaaは、シリーズA資金調達ラウンドで2700万ドル(1億サウジリヤル)を調達した。
このラウンドは、アラムコが100%所有するサウジのVCファンドであるワエド・ベンチャーズが主導し、STCのコーポレート・イノベーション・ファンドや他の著名な投資家が参加した。
RewaaはCIFにとってサウジアラビアにおける最初のベンチャー投資となる。
その他には、シリコンバレーのグラフェーン・ベンチャーズ、サドゥ・キャピタル、ビジョン・ベンチャーズ、フワリズミ・ベンチャーズ、RZMインベストメント、デラヤVC、アブドルラフマン・スレイマン・アル・ラジ&サンズ・インベストメント社などの投資家が参加した。
Rewaaは2018年の創業以来70億サウジリヤル以上の取引額を処理し、MENA地域で最も急成長しているサウジアラビアのSaaS企業の一つとして位置づけられている。同社はオムニチャネル在庫管理ソフトウェアに特化している。
Rewaaの共同創業者であるモハメド・アルカシールCEOは次のように語る。「我々は、世界的に競争力のある製品の開発を通して業界のデジタルトランスフォーメーションに貢献することで、小売業者の効率性向上と比類のないサービス提供を可能にして業界に大きなインパクトを与えることを目指している」
国内外の7000社以上の小売業者にサービスを提供し、国内で250人以上の雇用を生み出しているRewaaは、オンラインと実店舗の在庫をシームレスに同期させるクラウドベースの統合ソリューションを提供している。
ワエド・ベンチャーズのマネージング・ディレクターであるファハド・アリディ氏は、Rewaaのアプローチは典型的に分散している小売業界のニーズに完璧に対応しているとしたうえで、今回の投資は小売市場の技術開発を支援することを目的としていると話す。
STCコーポレートファンド&アントレプレナーシップのゼネラルマネージャーであるマジェド・アルジャルブア氏は次のように語る。「我々は今回の投資を通して、Rewaaを含む小売市場を支援する技術の開発に参加したいと考えている」