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アラブ諸国、アフリカ初の気候サミットでアフリカ諸国と力を合わせる

「アフリカ炭素市場イニシアティブ」はアフリカにカーボンオフセット活動を広めるべく努めており、2030年までに年間3億のカーボンクレジットを創出することを目指している。(提供写真)
「アフリカ炭素市場イニシアティブ」はアフリカにカーボンオフセット活動を広めるべく努めており、2030年までに年間3億のカーボンクレジットを創出することを目指している。(提供写真)
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11 Sep 2023 12:09:17 GMT9
11 Sep 2023 12:09:17 GMT9

ロバート・ボシアガ

ナイロビ:今週開催された歴史的な第1回アフリカ気候サミットは、アフリカ諸国が地球温暖化にいかに取り組んでいくかを立案する場となった。そして、その議論を形作るうえでアラブ世界が重要な役割を果たした。

ケニアのウィリアム・ルト大統領が主導したこの前例のない会議は、アラブの観点を議論の最前線に置きつつ、気候変動に対処するための世界的行動が緊急に必要であることを強調した。

9月4~6日にケニアの首都ナイロビで開催されたこのサミットは、気候変動の将来にわたる影響を緩和するとともに両地域の持続可能な未来を確保するために集団的な力を活用するという目標を掲げることで、大陸を越えた協力の力強い先例となった。

気候科学者によると、アフリカが気候変動の影響を受けやすいことは明白である。世界の二酸化炭素排出量に対するアフリカの寄与はごく僅かであるにもかかわらず、気候変動の影響を最も大きく受ける20ヶ国のうち17ヶ国はアフリカにあるのだ。

アフリカ内外の指導者らは、この問題への対処には世界の一体的な取り組みでアフリカを支援することが必要であるという点で一致している。

アフリカは地球温暖化との闘いにおいて「受け身の被害者」ではなく強力なパートナーとして認識されなければならないというルト大統領の呼びかけは、地域の指導者らから大きな支持を得た。

アラブ諸国はこの機会を捉えて、アフリカのグリーン経済の潜在可能性を解き放つうえで資金援助が重要な側面であることを認識しつつ、アフリカの気候レジリエンスの取り組みの支援において中心的な役割を果たしている。

そのような文脈のもとで、今回のアフリカ気候サミットは「国境を越えた協力的イニシアティブのための触媒」として機能し得る。アラブニュースに対しそう指摘するのは、ウガンダの気候行動活動家で「アフリカ気候イノベーション・チャレンジ2023」のトップファイナリストであるアイザック・ンジャムハキ氏だ。同氏は、「気候危機に対する現実的な解決策を見出すうえでこれらのイニシアティブが秘める可能性」を強調する。

「今、アフリカ諸国とアラブ諸国は力を合わせ、温室効果ガス排出量削減、天然資源の保全、気候レジリエンスの強化を目指す革新的なプロジェクトを策定している」

このようなダイナミックな議論が行われる中、アフリカは化石燃料の経済的潜在力と、地球温暖化対策のための再生可能エネルギー開発の必要性の間でバランスを取らなければならないという課題に直面している。

ウガンダやケニアなどの一部のアフリカ諸国は電気自動車や家庭レベルの太陽光発電など、クリーンエネルギーの選択肢を取り入れている。しかし、石油・天然ガスが豊富に埋蔵されているナイジェリアやセネガルなどの国々は、それらの資源は経済成長やエネルギーアクセス向上のために不可欠だと主張している。

ナイジェリアの産油部門はあと数十年は存続するとみられる。セネガルは最近、大量の石油と天然ガスを発見した。ナミビアは中間を行っており、再生エネルギーへの投資を誘致しつつ、沖合で新たな油田を探査している。

ンジャムハキ氏は、「アフリカにとっては公正で段階的な移行が極めて重要だ」としたうえで、「各国政府やコミュニティーには適応のための時間が必要だ」と強調する。

今回の会議を背景に、「アフリカ炭素市場イニシアティブ」が脚光を浴びている。アフリカにカーボンオフセット活動を広めるべく努めているこのイニシアティブは、2030年までに年間3億のカーボンクレジットを創出することを目指している。

アフリカの指導者らは、このイニシアティブが気候変動対策資金のための数十億ドルの収入をもたらし得ると考えている。これに関しては、UAEが確約したアフリカに対する45億ドルのクリーンエネルギー投資が際立っており、アフリカのグリーンエネルギー移行に対する同国の支援を強調している。

とはいえ、課題は残っている。カーボンオフセットに対する異議が高まっており、グリーンなソリューションの有効性について疑問の声が上がっているからだ。

アフリカで最もカーボンポジティブな国の一つであるガボンは、2019年には排出量削減の対価として1億1900万ポンドを受け取った。しかし、同国では先日クーデターが発生し、カーボン政策実施の難しさを浮き彫りにするとともに、世界的な気候変動政策にはいわゆるグローバルサウスにおいて地域の人々の支持が必要であることが多いということを痛感させた。

コンゴのエネルギー・気候専門家であるジョー・ロホセ氏はアラブニュースに対し、カーボン市場に関する気候団体や活動家からの批判を認めつつ、次のように語る。「カーボンオフセットに対する投資は前向きな一歩だが、実施段階で課題に直面することが多い」

同氏は、各国政府、各機関、個人を巻き込んだ包括的な戦略の必要性を強調したうえで、真の前進は全ての利害関係者の連携と責任にかかっていると主張する。

「適切な戦略は、再生可能エネルギーへの投資、エネルギー効率の向上、天然資源の保全、持続可能な実践の育成を伴わなければならない」

今、アフリカ諸国とアラブ諸国は力を合わせ、温室効果ガス削減、天然資源の保全、気候レジリエンスの強化を目指す革新的なプロジェクトを策定している。

アイザック・ンジャムハキ氏(ウガンダの気候行動活動家)

同氏は続ける。「パリ協定などの国際的な気候協定の歴史は、公約を守ることが困難な場合があることを示している。しかし、今回のアフリカ発の公約や、世界的な気候変動に対する解決策を見出すことに向けたアフリカ諸国の専心は、幸先の良いスタートを切っている」

重要なのは、専門家が強調するように、気候変動に対するアフリカのレジリエンスを強化するうえで技術移転が必要不可欠な要素であるということだ。再生可能エネルギーソリューションから先進的な農業実践にまで至るアラブ世界の技術的進歩は、アフリカの気候変動対処能力を高めるための鍵を握っている。世界風力エネルギー協会のアフリカ担当ディレクターであるワンガリ・ムター氏は、再生可能エネルギーへの投資の増加と再生可能エネルギー生産能力の開発によるグリーンな工業化の重要性を強調する。

アフリカの現在の太陽光によるエネルギー生産量がオランダの半分に過ぎないことは、アフリカの再生可能エネルギー部門の成長可能性を示している。太陽光エネルギー技術の手頃な価格は、アフリカのエネルギー貧困危機を解決する可能性がある。それに必要な費用は250億ドルと推定されるが、これは欧州に中規模のエネルギープラントを建設する費用に相当する。

こういった有望な見通しにもかかわらず、過去1年間の世界のクリーンエネルギー投資のうちアフリカに対するものはわずか3%に過ぎず、クリーンエネルギーにおける資金格差が浮き彫りになっている。

アフリカ諸国は世界銀行の金利と比較して高い借入コストに直面しており、持続可能性に向けた取り組みのための資金確保の効率が悪くなっている。世界的に見ると再生可能エネルギー部門は急成長しており、今年新設された発電所の80%が太陽光をはじめとする再生可能エネルギーによる発電所である。

気候行動活動家のンジャムハキ氏は、「電気自動車(EV)への移行も加速している」と説明する。25台に1台だったEVの市場シェアはわずか2年で5台に1台という驚異的な水準にまで高まった。これはクリーンエネルギーへの投資の増加という全般的な傾向と軌を一にしている。クリーンエネルギーへの投資が2015年の2倍近くの1兆7000億ドルにまで急増する一方、化石燃料への投資は1兆ドルで停滞している。

同氏にとって、「アフリカの持続可能性に向けた取り組みや事業を支援することは、我々の未来への投資であるだけでなく、気候変動対策へのグローバルなコミットメントだ」という。

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