東京五輪・パラリンピックを巡る談合事件で、独禁法違反(不当な取引制限)罪に問われた大会組織委員会元次長、森泰夫被告(56)の判決が12日、東京地裁であった。安永健次裁判長は「各社の受注総額は約437億円と多額で、規模が大きい入札談合だ」として懲役2年、執行猶予4年(求刑懲役2年)を言い渡した。
同事件で判決が言い渡されたのは初めて。他に広告最大手の電通グループなど法人6社と6人が起訴され、同大手ADKマーケティング・ソリューションズは課徴金減免制度に基づいて違反を自主申告し、刑事告発を免れた。
安永裁判長は判決で、一般競争入札が行われた会場の大半は、森被告らの調整で決定した事業者のみが入札、受注しており、「公正かつ自由な競争を阻害した程度は大きい」と指摘。「森被告は発注者側の幹部職員としての影響力を背景に事業者間での受注調整を主導し、中核的な役割を担った」と述べた。
一方で、「大会を成功に導きたいという責任感から談合した側面は否定できない」などとして、執行猶予が相当とした。
森被告は、黒のスーツにえんじ色のネクタイ姿で、安永裁判長の方をじっと見詰めながら言い渡しを聞いていた。閉廷後は裁判官や傍聴席に視線を向けることなく、足早に法廷を後にした。
判決によると、森被告は電通スポーツ局長補だった逸見晃治被告(56)=公判中=らと共謀し、2018年2~7月ごろ、テスト大会の計画立案業務に関する入札などで事前に受注企業を決定。受注する社のみ入札に参加させるなどして談合した。