
ロベルト·マンチーニ氏の監督としてのキャリアを決定づける瞬間となったかもしれない。少なくとも、サウジアラビアの指揮官としてのキャリアは絶たれただろう。
マンチーニ氏の行動は見逃せられるものではない。
韓国戦のPK戦で敗戦が確定する前に、イタリア人のマンチーニ監督はエデュケーション·シティ·スタジアムのトンネルを下りて行った。同監督は選手、サポーター、国家に背を向けただけでなく、自分の仕事にも背を向けたといえる。
サウジアラビアのAFCアジアカップ敗退直後、各方面から非難の声が上がった。
あるファンはX上で、多くの怒ったサポーターの感情を代弁した。
「責任を取らず、選手たちの味方にもならない臆病な監督だ。彼はチームやファンに動揺を与える奇妙な発言でトーナメントを開始し、臆病者ならではの醜い逃げざまを見せてトーナメントから去った」
サウジアラビアサッカー連盟のヤセル·アル·ミセハル会長は、それほど辛辣ではなかったが、不快感をあらわにし、「マンチーニ監督の早期退席は容認できないが、監督は選手たちと会い、感謝の意を表した」と述べた。
グリーン·ファルコンズ(サウジアラビア代表チーム)とその監督にとって、もっと違った結果もあったかもしれない。
サッカーの試合における90分は長いかもしれないが、火曜日の試合では90秒が勝負の時だった。それが、サウジアラビアが韓国に勝利して準々決勝進出を決めるか、99分に同点ゴールを許しPK戦で敗れるかの分かれ目となった。それが、喜びと落胆の分かれ目となり、勝利した監督への称賛と、ネット上で巻き起こる批判の分かれ目となった。
土壇場での同点弾とPK戦での敗戦は、エデュケーション·シティ·スタジアムで歓声を送っていた何千人ものサウジアラビア·ファンにとっても、自宅で観戦していた何百万人ものファンにとっても、十分に辛いものであった。
しかし、数分前にはコーチ群と腕を組んでいたマンチーニ氏が、最後のPKをとられる前にピッチを後にし、トンネルを下りていく姿は耐え難いものだっただろう。
マンチーニ氏が監督にとどまるかどうかにかかわらず、そのイメージは消えることはない。
試合後の記者会見で、マンチーニ氏はPK戦の決着がついたかどうか知らなかったと謝罪した。本当かどうかはともかく、それは奇妙な主張に思える。早々に退席したことと、試合が終わっていないのに終わったと勘違いしたことのどちらがひどいかは判断が難しい。ある韓国の解説者は、他に説明が思いつかなかったため、マンチーニ氏が退場させられたと思い込んでいた。
ダメージは既に出ている。直後のサウジアラビアにおけるネット上の反応は辛辣だった。あるファンは「試合は75分の間違った交代で韓国側に軍配が上がった」とXにコメントした。「彼が去る必要はない。彼にできる最小限のことは、選手たちに感謝し、選手たちを慰め、励ますことだ」
怒りにはと失望と悲嘆の感情が入り混じっていた。
「彼はイタリアで同じことができるだろうか。ただただ傲慢だ」と別の投稿者は述べた。「彼は代表チームの選手を放棄を理由に非難し、国を代表する機会を彼らから奪った。しかし、最初に逃げたのは彼だった」
このコメントは、トーナメント開幕時の衝撃的な記者会見のことを指している。マンチーニ氏は、サルマン·アル·ファラジ選手、スルタン·アル·ガナム選手、ナワフ·アル·アキディ選手を代表チームから除外して物議を醸した後、リヤドのビッグクラブであるアル·ヒラルとアル·ナスルでプレーする国際的なスター選手である彼らが出場試合を選びたがっていたと主張した。
このような行動が忘れられたり許されたりするのは、成功が続いたときだけであり、一時はそれが可能だと思われた。開幕戦のオマーン戦では終盤に2点を奪い、2-1で劇的な勝利を収めた。その後、キルギスに2-0で快勝したが、キルギスの選手が2人退場したため、それ以上のことは何も言えない試合だった。グループステージはタイとの0-0の引き分けで終わったが、両チームともすでに突破が決まっていた。
悪くはなかったが、決して印象的でもなかった。サウジアラビアは少なくともグループFを首位で通過した。
昨夜のラウンド16の韓国戦はターニングポイントとなったかもしれない。試合の大半は、スター選手が揃った韓国チームは何も生み出さなかったが、アブドラ·ラディフ選手の活躍で1-0とリードしていたサウジアラビアがどんどん自陣に引きこもり守備にまわると、残り約10分で韓国の攻撃が始まり、その勢いは止まらなかった。
マンチーニ監督の保守的な交代策も、チームが持ちこたえていれば賢明に思えただろうが、99分のチョ·ギュソン選手のヘディングシュートがそれを打ち消した。そして結果的には、それは当然のゴールだった。グリーン·ファルコンズは何の答えも持ち合わせておらず、2021年にイタリアを欧州選手権の栄光に導いたマンチーニ氏の高く評価されている戦術眼も、この試合では発揮されなかった。というより、約90秒の差で勝利に及ばなかったのだ。
そして、衝撃の途中退席が起き、それが引き起こした激しい非難はすぐには収まりそうにない。
ネット上のある人物はこう言った。「兵士が戦場にいる間に逃げるような指揮官はいない。スポーツ界では長年にわたり、チームがプレーしている最中にフィールドを離れる監督などいなかった。マンチーニ監督は負けたと感じ、逃げ出した」
マンチーニ氏が戻ってくるかどうかは、まだわからない。