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パレスチナ人初の五輪ボクサー、歴史の前に立ちはだかるハードル

2024年6月22日、占領下のヨルダン川西岸地区ラマッラーにあるジムで、2024年パリ五輪の出場権獲得に向けたトレーニング中のパレスチナ人軽量級ボクサー、ワシーム・アブ・サル。(AFP)
2024年6月22日、占領下のヨルダン川西岸地区ラマッラーにあるジムで、2024年パリ五輪の出場権獲得に向けたトレーニング中のパレスチナ人軽量級ボクサー、ワシーム・アブ・サル。(AFP)
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02 Jul 2024 01:07:05 GMT9
02 Jul 2024 01:07:05 GMT9

パレスチナ自治区、ベイトゥニア: パレスチナのボクサー、ワシーム・アブ・サルは毎朝、カイロを拠点とするコーチからのメールをチェックする。コーチは占領下のヨルダン川西岸地区にいる彼のもとには行けないからだ。歴史に名を刻む準備のため、日々のオリンピック・トレーニングのスケジュールを確認している。

ワイルドカードで出場権を獲得した20歳のアブ・サルは、パレスチナ人ボクサーとして初めてオリンピックに出場する。

「10歳のときからの夢だったんです」

「毎日、どうすればオリンピックに出られるか、寝ても覚めても考えていました」

アブ・サルは7月28日、イスラエルの渡航制限によって身動きの取れない、遠隔地にいるコーチ、アフマド・ハララ(32)と異例のトレーニングを行って、オリンピック初戦に挑む。

パレスチナ自治政府にあるヨルダン川西岸地区のラマッラーにあるジムで、ワシーム・アブ・サルはAFPに語った。

「彼(コーチ)は毎日、私のトレーニングスケジュールを書いて送ってくれます」

ハララコーチは、ガザ地区のID保持者であるため、”西岸地区とガザ地区の間の占領障壁 のためにこのスター選手に会いに来ることができないと語った。

「それ以来、私はワシームのトレーニングを遠隔で監督しています」とハララ氏は語った。

パレスチナのオリンピック委員会は、1995年以来、国家資格がないにもかかわらず、国際オリンピック委員会には登録されている。

アブ・サルはオリンピックの予選を通過することはできなかったが、オリンピックにすべての国の代表を確保するシステムの中で、ワイルドカードを獲得した。

移動を制限するイスラエル軍の検問所が点在するヨルダン川西岸地区の政治的現実は、アブ・サルが歴史に名を刻む前からすでにハードルと戦っていることを意味する。

「ヨルダン川西岸地区の選手たちは、簡単には来られないんだ」

ラマッラーでの毎日のスパーリング・パートナーは、アブ・サルの57kgに対して71kgと、数クラスも彼を上回っている。

彼と体重の近いもう一人のパートナーは、イスラエルの安全バリアの反対側にあるエルサレムを拠点にしているため、定期的な練習が難しい。

「そのため、大会の開催が難しく、国内での競技人口の減少につながっている」と彼は言う。

トレーニングや競技のために海外に行くことには、それなりの困難が伴う。

「多くの国がパレスチナのパスポートを持つ選手へのビザ発給を拒否しているため、ビザを待っている間、大会に参加できないのです」

アブ・サルは7月にパリに向かう際、ヨルダンの首都アンマンから出発する予定だ。

今年7人の選手をパリに派遣するパレスチナオリンピック代表団の団長であるナデル・ジャユシ氏は、アブ・サルの指導者である。

彼が経営するラマッラーのジムで、ワシームは他の有望な若手ボクサーたちとともに練習に励んでいる。

オリンピックの有望選手がスパーリングをするとき、ジムにはラップとパレスチナの伝統的な歌がミックスされて流れる。

「史上初のパレスチナ人ボクサーがパレスチナを代表してオリンピックに出場することは、私にとってだけでなく、パレスチナにとっても誇らしい瞬間です」とジャユシ氏は語った。

彼は、アブ・サルが懸念している制限について言及した。

「ワシームと一緒に練習できるような優秀なボクサーは、それほど多くはいないのです」

「鉄は鉄を研ぐので、それは私たちにとって大きな課題です」

イスラエルの公式発表に基づくAFPの集計によると、死者1,195人を出したハマスのイスラエルに対する前代未聞の攻撃の後に始まったガザでの戦争が、彼のオリンピック準備に対する最大の挑戦のひとつである。

ハマスが統治するガザの保健省によれば、イスラエルの報復攻撃により、少なくとも37,718人が死亡した。

パレスチナ当局によれば、その中にはアスリートやアスリートの親族も含まれているという。

ジャユシ氏は、空爆で死亡したコーチ、叔父を亡くしたガザのボクサー、破片で目を失った別の選手の例を挙げている。

壊滅的な紛争と死傷者の更新は、アブ・サルや彼のチームメイトの精神衛生に打撃を与えた、とジャユシ氏は言う。

「このことはボクサーたちに大きな影響を与えた」

ヨルダン川西岸地区の都市間の移動も、検問所の増加、軍隊の駐留、入植者の暴力によって危険になっている。

パレスチナ当局によると、10月7日以降、少なくとも553人のパレスチナ人がイスラエル軍や、国連が国際法上違法とみなす入植地に住む入植者によって殺害されたという。

しかし、オリンピックが近づくにつれ、金メダル争いの切符を手にしたアブ・サルの決意は、「トレーニングして、食べて、寝る」ことに集中している。

「人生がやっとやってきたようだ」と彼は語った。

AFP

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