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書道家Ruh Al-Alam氏、古典芸術形式に対する自身のコンテンポラリーな取り組みを語る

Al-Alam氏はロンドンのセントラル・セント・マーチンズでデザインを学んだ。(提供)
Al-Alam氏はロンドンのセントラル・セント・マーチンズでデザインを学んだ。(提供)
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12 Jun 2020 06:06:41 GMT9
12 Jun 2020 06:06:41 GMT9

デニス・マレー

ロンドン:「ペンはすでになく、ページはもう乾いている。」(アッ=ティルミズィー、2516)

このハディースの格言からインスピレーションを受けている、とコンテンポラリー書家Ruh Al-Alam氏はアラブニュースに語る。

「ペンはすでになく、ページはもう乾いている。」(アッ=ティルミズィー、2516)

「ペンとインクへの言及は心に響きました。この格言はイスラム教の完全さに触れています。つまり、イスラム教は人々に与えられており、これ以上与えるものは何もないという事実です。これ以上教えられることは何もないのです。このメッセージを表現するのに書道ほど優れた方法はありません」と同氏は言う。

バングラデシュ系イギリス人アーティストのAl-Alam氏は、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズでデザインを学んだ。卒業後、数年間カイロに滞在し、アラビア語を学び、さらに名高い教師たちから書道を学んだ。

そして、Al-Alam氏を感動させた心に響くハディースのメッセージはイスラム教徒に当てはまるものの、同氏の作品からは自身で選んだ芸術にまだ与える余地が十分にあることが伺える。Al-Alam氏は書道を硬直した芸術ではなく、現存し、生きていて今の世界に意味のあるものと考えている。それは自身のスタイルに反映されており、Netflix、BBC、イギリス国立肖像画美術館、ソニーなど主要な組織やブランドとのコラボレーションにつながっている。

「ソニーがPlayStation Portableを発売したとき、さまざまな客層にアピールするためアラビア書道を使いました」とAl-Alam氏は言う。「彼らは市場で他社との差別化を図るため、ユニークな何かを使いたかったのです。」

イスラム美術を身近で最先端のものにしたいという同氏の願いは、アーティストとして発展していく上での要となっている。

Ruh Al-Alam氏のアート作品。(提供)

「書道芸術の用途を伝統的なものだけに制限したくありません。もっと一般的ではないやり方で書道を生かしたいのです」とAl-Alam氏は続ける。「例えば、アート作品で家を飾ろうと思った初期の頃、私はもっと信仰を強調したものを飾りたいと思いました。そこでイスラム美術と出会いました。自分の信仰心を反映したものにしたかったのですが、自分と家族のアイデンティティを反映した、より現代的な家に飾れるものは何も見つかりませんでした。」それで、自分の想像力を使うことにした。「One God Allah」は、Al-Alam氏が古典芸術を現代的に解釈した完璧な作例である。

「コントラストの強い配色で、大変シンプルかつ強力でありながらも質感にあふれ感情に訴える作品を作りたかったのです。赤と対照的な黒や茶色はあまり一緒に使われませんが、それがコンテンポラリーな要素です」と説明する。「私は書道作品が白い紙と黒いインクである必要はないと言っています。別の色でもいいのです。考慮すべき重要な要素は、アート作品が展示される場所です。それは美しい現代的な家や職場の可能性もありますが、人目を引くようデザインされます。」

Ruh Al-Alam氏のアート作品。(提供)

Al-Alam氏はまた、敬虔なイスラム教徒が日常的に使用したり見に着けたりする他のアイテムを作品に取り入れた。伝統的な礼拝用マットが自分の家に合わないことに気づき、コンテンポラリーなデザインの限定版を作ったのだが、かなり高価であるにもかかわらず大変人気があったので、レザー製の新シリーズを企画している。

「一般的なウール製パイル織りの礼拝用マットにうんざりしていました。本当にひどいデザインが多く、イスラム芸術の伝統に従っていないものもあります」と同氏は語る。「また、多くの人々が送るライフスタイルに合っていません。私はいつも礼拝用マットを敷いたままにしておくのが好きなので、隅に敷いておけばそこに戻って来られます。人々は、イスラム美術の伝統に忠実でありながら家のデザインにしっくり調和する、さまざまな素材のシンプルなデザインを求めています。

「私の礼拝用マットは他より高額ですが、大切に使うものですし、あっという間に売れました。最初の1年ですぐに売り切れました」と語った。

伝統的な礼拝用マットが自分の家に合わないことに気づき、コンテンポラリーなデザインの限定版を作った。(提供)

同氏はまた、単発シリーズとして書を使ったデザインのヒジャーブをも制作した。

「抽象的な書道を取り込んだヒジャーブは、その当時新しいアイデアでした」と主張する。「私は実用的でありながら他とは違うヒジャーブにしたかったのです。衣服に聖典の章句は禁止されているので、ヒジャーブの文字が決して宗教的な意味に解釈されないよう確かめなければなりませんでした。」

Al-Alam氏は、聖典を軽視していると誤って非難された個人的な経験があるという。「10年ほど前、Tシャツをデザインしたのですが、あるジャーナリストが、私がTシャツに聖典の章句を入れたと主張しエジプトで問題になりました。アズハルのイスラム法学者が私に対しファトワーを発するまでになってしまいました。それでそのジャーナリストに反論するためテレビに行かねばならず、その時点で彼はTシャツを実際に見ていなかったことを認めました。」

Al-Alam氏は、コンテンポラリーなアラビア書道及びタイポグラフィーの分野における先駆的な活動が認められ、2018年にドバイのシェイク・ハムダン・ビン・ムハンマド・アル・マクトゥーム皇太子から授与された「イスラム芸術におけるイスラム経済賞」など多くの受賞歴があり、国際的な名声を築いている。

アーティスト作の礼拝用マットは、最初の1年ですぐに売り切れた。(提供)

Al-Alam氏の書体には、Spirit、Jude、Latin-Arabiなどがあり、革新的なアラビア語のタイポグラフィーには、Kufica、Arabic Dibot、Modaなどがある。同氏のデザイン事務所「Archetype」はアラビア語の制作に特化している。

「現在、私たちはサウジアラビアの顧客に対応していくつかのウェブサイトをデザインしています。サウジアラビアの顧客のために様々なロゴやアイデンティティをたくさんデザインしています。また宗教的な目的でハッジとウムラ(メッカ巡礼)のため、さらに仕事でサウジアラビア王国を訪ねたことがあります」と話し、サウジアラビアの急成長するアートシーンに非常に感銘を受けたと付け加えた。

「アフメド・マータル氏をはじめとしたアーティストたちは素晴らしいですし、情熱的に作品を制作している若いアーティストや書家もたくさんいます」と語る。「生まれつき才能に恵まれた多くの人々が現在それを表現しており、この動きが次の10年間で実を結ぶとき、中東の芸術に対する認識を変えることになるでしょう。」

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