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日本で最高齢のアイアンマン競技者がオリンピックにヒントを求める

2021年8月2日に撮られたこの写真は、千葉県稲毛区の自宅にて積み上げられた靴の山の隣で撮影のためのポーズをとる世界最高齢のアイアンマン競技者である稲田弘さんを収めたもの。(AFP)
2021年8月2日に撮られたこの写真は、千葉県稲毛区の自宅にて積み上げられた靴の山の隣で撮影のためのポーズをとる世界最高齢のアイアンマン競技者である稲田弘さんを収めたもの。(AFP)
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06 Aug 2021 08:08:33 GMT9
06 Aug 2021 08:08:33 GMT9

千葉県:日本の稲田弘さんは、90歳で挑むことになる来年のアイアンマン世界選手権大会の前に、アスリート達から何かヒントを得られないかと東京オリンピック競技大会を観戦している。

「たくさん学ぶことがあります。トレーニングに応用しているのですが、うまくいっています!楽しいですよ」と、80代のアスリートである稲田さんはほぼ毎日行っているトレーニングの後でAFPに語ってくれた。

東京オリンピックは厳格な新型コロナウイルス対策のための決まりのもとに開催されており、ほとんどすべてのイベントが無観客で行われている。それでも稲田さんが落ち込むことはない。

「それでもとても楽しんでいますよ」

2021年8月2日に撮られたこの写真は、世界最高齢のアイアンマン競技者である稲田弘さんが千葉県稲毛区の自宅にて、毎年ハワイで開かれるトライアスロンレースであるアイアンマン世界選手権大会で得た2つのメダルを写真撮影のために手にしている様子を収めたもの。(AFP)

11月に89歳になる稲田さんは、アイアンマン世界選手権大会を完走した最高齢の人物としてすでにギネス世界記録を保持している。同大会は水泳3.86キロ、サイクリング180.25キロ、そしてマラソン42.2キロという過酷な内容となっている。

同年代のグループにおいて3回アイアンマンで優勝したことのある稲田さんのスポーツに対する取り組みはとても真剣なもので、オリンピックのアスリートたちによる競技の場面を録画し、それを観て脚の動きや姿勢を分析するほどだ。

今回のオリンピックは稲田さんが東京で2回目に観たものとなった。東京が1964年に初めてオリンピックを開催した時、稲田さんは公共放送局であるNHKのリポーターだった。

しかし、当時の雰囲気はまったく異なるものだったと稲田さんは言う。

1964年のオリンピックは日本にとって意気揚々と国際社会へデビューをし、高速で走行する新幹線などといった技術的驚異を披露する機会のようなものだった。

「オリンピックを観ない人はいませんでした」と稲田さんは述べ、自身も観戦するために仕事を休みすらしたと認めている。

当時はまだテレビを持つ家庭が限られていたため、人々は職場や市役所や電気屋のカラーテレビに釘付けになっていたと、稲田さんは言う。

「(1964年のオリンピックは)好景気のための転換点になったと思います。その後で国民感情も上向きなものとなりました」

しかし今年は、7月23日にオリンピックが開催される前の世論調査で、大部分の日本国民が新型コロナウイルスによるパンデミックを理由に大会開催に反対していることが明らかとなった。

2021年8月4日に撮られたこの写真は、世界最高齢のアイアンマン競技者である稲田弘さんがアイアンマン世界選手権大会のために練習している様子を収めたもの。(AFP)

稲田さん自身ですら、開催前には大会がうまくいくのかどうか少し確信を持てなかったと認めている。

「開催されているのを見ると、涙が出て嬉しくなりますよ」

稲田さんは朝6時にスイミングから始まり、それから数時間にも及ぶサイクリングを行うというトレーニングのスケジュールに合わせて、オリンピックの視聴を予定している。

稲田さんの食事も競技に最適な体を保つために考えられており、主に魚、野菜、みそ汁、海藻、そして大豆を発酵させた料理である納豆から成り立っている。

稲田さんの現在の生活はスポーツに捧げられているが、トライアスロンを始めたのは遅かった。病身の妻の世話をするために退職した後、60歳になってようやく水泳だけは学び始めた。

「いつも家にいて妻の世話をしていたから、運動をしなければと思いました」と稲田さんは言う。

地元のトライアスロン大会に初めて参加した時、稲田さんはすでに70歳だった。70代後半に入り、稲田さんはより長い距離で競い合うアイアンマンへの出場を初めて目指しだした。

「トライアスロンに取りつかれてしまったのです」と稲田さんは言う。特に妻が死去した後はそうだったという。

「それが私にとってすべてでした」

コーチとの数年間に及ぶトレーニングの末、稲田さんは2012年にハワイで開かれたアイアンマン世界選手権大会にて自身の年齢グループでの初優勝を果たした。稲田さんは当時80歳で、15時間38分25秒という記録だった。

2021年8月4日に撮られたこの写真は、世界最高齢のアイアンマン競技者である稲田弘さんがアイアンマン世界選手権大会のために練習している様子を収めたもの。(AFP)

3年後に稲田さんはアイアンマンに再挑戦するが、フィニッシュラインの前で2回つまづいてしまい、完走者とみなされるためのタイムに5秒足りないという結果になってしまった。

落胆した稲田さんだったが、「私の知らない海外のトライアスロン選手たちから応援のメッセージがたくさんFacebookのページに届いた」と稲田さんは言う。

稲田さんは再挑戦し、「落っこちようが這いつくばろうが」完走しなければという決意をした。

稲田さんは翌年と2018年に開催されたアイアンマンを完走し、85歳328日という最高齢でアイアンマンを完走した世界記録の保持者となった。

まだ稲田さんの挑戦は終わらない。稲田さんは90歳になる来年に再び大会に参加する予定だ。

「こう言うとみんな笑うんですが、私は今青春を生きているんです。生きる喜びを感じますよ」と稲田さんは言う。

トライアスロンは稲田さんにとって「人生の目的」だという。

だが現在は、稲田さんは自分の国で世界のトップアスリートたちを見られる機会を楽しんでいる。

稲田さんは富士山近くでトレーニングのための合宿を行っていた時、オリンピックのロードレースを垣間見ることすら出来たという。稲田さんにとってオリンピックで初めて実際に見た試合ですらあったという。

「尊敬するアスリートを初めて間近に見ることができました」と稲田さんは言う。

「とても刺激的でした!」

AFP

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