
リーム・アブレイル
アーサー・アッシュ・スタジアムで開催されるUSオープンには観客制限がなく、今後2週間、2021年のグランドスラム最終戦は大いに盛り上がるだろう。
2003年以来初めてセリーナ&ビーナスウィリアムズ姉妹の両名が本大会を欠場することになったが、この象徴的存在の姉妹が不在とはいえ、女子の対戦には見どころが満載だ。
今年最後のメジャー大会を迎えるにあたり、主な話題をご紹介したい。
大坂、ニューヨークで3度目の優勝を目指す
ディフェンディング・チャンピオンの大坂なおみ選手は精神衛生上の問題を理由にローラン・ギャロスを初戦後に棄権して以来、あまりプレーしてない。
この日本のスーパースターは最近では東京オリンピックとシンシナティに出場しているが、どちらも3回戦で敗退している。勢いがあるとはいえない状況だが、大坂選手は全米オープン3度目の優勝を目指して準備を進めており、自分の状態を「いい感じ」だと話している。
「今の自分にはかなり自信がある」とこの第3シードの選手は金曜日に話している。
大坂選手はグランドスラムの1回戦の戦績は17勝2敗で、チェコの世界ランキング87位のマリー・ボウズコバ選手との対戦で幕を開ける。同選手は5つ目となるグランドスラムタイトルを目指しており、5勝は女子ツアーの現役メジャーチャンピオンの中で、キム・クライシュテルス選手を抜いてセリーナ・ビーナス姉妹に続く単独3位となる。
昨年、大坂選手は「より大きな目的を持って」ニューヨークで戦っていると感じ、警察による暴力の犠牲になった黒人の名前をあしらったマスクを、試合ごとに違うものを全7戦で着用した。自身の「メッセージを広めたい」という衝動が結果的にタイトルを獲得することにつながった。
「私の場合は特に、何か理由があったり、目標があったり、何かに駆り立てられたりすると、もっと良いプレーができるようになるタイプなのです」と同選手は話す。
「昨年のニューヨークでの最大の目標は、そのメッセージを発信することでした。自分ではうまくいったと思っています。今の私には、そういう大きなメッセージは全くありません。ですので、何が私の原動力になるかというのはとても興味深いものになるでしょう。」
「もちろん、私は選手であり勝ちたいと思っています。去年よりも良いプレーをしたいという気持ちもあります。」
バーティに死角なし
先月のウィンブルドンや直近のシンシナティなど今シーズン5つのタイトルを獲得している世界ランク1位のアシュリー・バーティ選手は全米オープン優勝の大本命だ。
このオーストラリア人の選手は今季ツアーで最多の40勝をあげており、2019年の全仏オープンと2021年のウィンブルドンでの勝利に続く、キャリアグランドスラムへの道のりを半ばまで進めてきた。
バーティ選手は全米オープンでの初の第1シードで、メジャーでは通算6回目となる。
「彼女は素晴らしい1年を過ごしてきていると思います。あんなに安定してプレーができるのは本当に凄いと思います」と大坂選手はバーティ選手について語った。
「彼女からとても強い決意と集中力を感じます。彼女は全豪以来、自宅に帰っていないのを知っています。私はそんなことができるタイプの人間ではありません。それはスポーツにとってとても良いことだと思います。」
ジャバーとシェリフが新たなアラブのテニス史を作る
史上初めてアラブから女性選手2人が全米オープン本戦に参加する。チュニジアの第20シード、オンス・ジャバー選手はフランスのベテラン、アリーゼ・コルネ選手と対戦し、エジプトのマヤル・シェリフ選手は予選最終ラウンドで敗退したもののラッキールーザーとしての出場が決まった。同選手はウクライナのアンヘリーナ・カリニーナ選手と対戦予定だ。
今月初めシェリフ選手はエジプト人選手としては1978年以来の、またエジプト人女子選手としては初の世界ランキングトップ100入りを果たした。
「エジプト人テニス選手として常に壁を破り、次の世代に道を開いていくことを私は大事にしています」と語っている。
「もちろん、前進するには壁を破らなければならないという責務を負うわけですが、私はそういうプレッシャーが好きです。もっと上、常にもっと上を目指しているのです。私にはとても大きな目標があり、自分を信じているし、これは始まりに過ぎないと思っています。」
恐れを知らないサバレンカ選手、さらなる飛躍を目指す
ベラルーシのアリーナ・サバレンカ選手は先月のウィンブルドンで、ついに自身初となるメジャー4回戦突破を果たし、準決勝まで進出した。
キャリア最高位となる世界ランク2位となり、サバレンカ選手はメンタルトレーナーとの5年間の取り組みを通じて恐怖心を克服できた、この全米オープンの2週間ではさらに上を目指したいという気持ちが高まっていると語った。
「メンタルトレーナーとの会話のおかげで、周りのことではなく、自分自身のことに集中できるようになりました」と語るサバレンカ選手は、月曜日にセルビアのニーナ・ストヤノヴィチ選手と対戦する。
「5年間取り組んできました。今になってやっとグランドスラムのことを彼女に正直に話せるようになり、もっと心を開いて、実は何か怖いと思っていたと打ち明けられるようになりました。」
「とっても長いプロセスでした。長い道のり、というか本当に長い旅でした。」
勢いにのるスビトリーナ
全米オープン準優勝の経験があるエリナ・スビトリーナは、シカゴでの優勝と東京での銅メダル獲得の勢いそのままにニューヨーク入り。
第5シードの同選手は、オリンピックで表彰台に上るまでの1年間、「うまくいかない」のを耐えることが多く続いていたが、シーズンを好転できて安堵している。
「何が難しかったかというと、間違いなく精神的な疲労です。今年は本当に落ち込むことが何度もありましたから」と土曜日にスビトリーナ選手はシカゴで記者団に対し語った。
「傍目にはそうは見えなかったかもしれませんが、グランドスラムでは特に厳しい状況が続いていたので、精神的に辛かったです。ある時点からそれがどんどんキツくなり、まるで背中に背負ったリュックサックに落ち込む気持ちを集めているかのようでした。」
「プライベート、そしてテニス、さらにCOVID-19も含めて、本当にいろいろなことがありました。」
スビトリーナ選手は自信を回復するためにシカゴでのプレーを選択したが、その決断が功を奏したのは明らかだ。スビトリーナ選手は全米オープンの1回戦で、予選を勝ち上がったカナダのレベッカ・マリーノ選手と対戦予定だ。