
ドバイ:爆撃されて大きな穴が空き崩れかかった建物を捉えた衝撃的なモノクロ写真が見る者の目を奪う。この写真は、ダーイシュの戦闘員らが夜明け前にイラクの南シンジャルのヤジディ教徒の村コチョを襲撃した2014年8月3日に撮影されたものだ。
一部の住民は何とか逃げ延びることができたが、大半は村のはずれより遠くには逃げられなかった。彼らがその後に直面したジェノサイドは、この地区のヤジディ教徒コミュニティー全体を飲み込み、数千人の死者と行方不明者を出した。
いくつかの推定によると、虐殺あるいは拉致されたヤジディ教徒は1万2000人とされる。その数は40万人にまで上る可能性があるという推定もある。
現在も約2800人の女性と子供が拉致されたままである。生き残った人々は今もトラウマに苦しんでいる。
イギリスは8月1日、ダーイシュによるヤジディ教徒に対するジェノサイドを正式に認める世界で18以上の国と国際機関に加わった。
このジェノサイドから9年経った今年、ロンドンを拠点とする映像作家・写真家のヤド・ディーン氏と協力者のレナス・ババキル氏は、今でもイラクで最も迫害されている集団の一つであるヤジディ教徒コミュニティーのための資金集めを目的とした新たなオンライン写真展「HOME」を開催している。
ディーン氏は、シンジャルで最も深刻な被害を受けた村の一つであるコチョで撮影した12枚のモノクロ写真のコレクションをプロデュースした。一連の写真のそれぞれには、コチョのヤジディ教徒でありジェノサイド生存者であるダウド・サリム・バシャール・ロコ氏による証言が添えられている。
「レナスと私が今年の3月と4月にシンジャルに行った時、私たち二人はすぐ同じことに気がつきました。ほとんどの人の家や地元の店がまだ廃墟のままだったのです」と、ディーン氏はアラブニュースに対し語る。「2015年、ダーイシュからの解放の2週間後にシンジャルを訪れた時から何も変わっていませんでした。古い市場に行ったところ、さらにショックなことに、その地区にはっきりと残っている物は道路だけだったのです」
「かつては美しかった住居や店は焼かれ、破壊されていました。2015年に見たままの姿です。悲しいことに、この古い市場の現在の姿はその過去を思い出す助けになりました。これも、シンジャルが忘れ去られ見過ごされつつあることの印です」
「HOME」はヤジディ教徒の家族たちが破壊されたままの家を再建するのを支援するための自発的な取り組みだとディーン氏は言う。
ディーン氏とババキル氏はシンジャル・アカデミーと協力して、展示会チームにできる範囲内で、帰還した家族の身元特定や、彼らの建設ニーズ(屋根、扉、窓の修理など)の特定に取り組んでいる。
「完全に破壊されたため再建の必要がある家が本当にたくさんあることを忘れてはなりません」とディーン氏は言う。「これはシンジャル・アカデミーの会長で共同設立者のムラド・イスマエル氏と話し合ってきた今後のプロジェクトです。『HOME』が最終的にそれにつながればいいなと思っています」
ディーン氏とババキル氏は、写真と個人的証言を通してヤジディ教徒の生存者たちの記憶を残そうと努力している。
ディーン氏は語る。「ダーイシュの手による凄まじい体験をし、国内避難民キャンプの悲惨な状況に耐えてきたにもかかわらず、ヤジディ教徒の家族たちは故郷に帰ることを決意しています」
「最初の困難はシンジャルに戻る旅のための資金を集めることです。その後は家に戻ってそれを再び住める状態にする必要があります」