
ジュネーブ:過激派組織のダーイシュがヤジディ教徒を虐殺してから8年が経過したが、現在でも20万人以上がイラク国内の故郷を離れ、避難生活を送っている。4日、国連が発表した。
避難民キャンプやその他の場所で暮らしている避難民や、帰還を果たした人々は、いまだに多くのものを必要としている、と国連の国際移住機関(IOM)が明らかにした。
2014年にイラクの多くの地域を制圧した過激派組織ダーイシュは、シンジャール北部地域などで身の毛がよだつ虐殺を行った。同地域には、クルド語を話す、一神教で秘教的なコミュニティの少数派のヤジディ教徒が、長く根を張って暮らしていた。
水道、電気、医療、教育などのベーシックサービスや住居が十分ではないため、故郷に帰還した、あるいは帰還を願っているヤジディ教徒にとっての長続きする解決策は困難なものになっている。
IOM(本部:ジュネーブ)は、「人々は、最も基本的なニーズを満たすことに力を注がざるを得ず、生活を有意義に再建する余裕はない」と明らかにした。
IOMによると、ダーイシュはシンジャール市やその周辺地域で、公共インフラの約8割、民間人の家屋の約7割を破壊した。
ダーイシュの戦闘員は、この地域の天然資源と農地も破壊した。
ダーイシュが行った「大量処刑、強制改宗、誘拐と奴隷化、組織的性暴力、その他の凶行は、歴史的に迫害されてきたこの民族的・宗教的な少数派に対するジェノサイドの試みを反映している」とIOMは発表した。
また、2,700人以上の方が今も行方不明になっているという。
その一部については、イスラム教以外の信仰を持っていることを理由にヤジディ教徒を迫害したダーイシュに拘束されていることが判明しているが、それ以外の人たちは所在もまったくわからない。
非アラブ系でクルド語を話す少数派であるヤジディ教徒の生存者は、亡くなった愛する人たちを追悼することもできない。その多くは墓標もない集団墓地に埋葬されており、今でも発掘されるのを待っている、とIOMは明らかにした。
IOMのイラク補償問題担当責任者であるサンドラ・オルロビッチ氏は、「ヤジディ教徒コミュニティに対する残虐行為の規模はたいへんなもので、何世代にも影響が及ぶだろう」と述べた。
「イラク政府と国際社会には、二度とこのような残虐行為が起こらないことをヤジディ教徒が保証され、癒しと生活再建の支援を受けるための条件を整備する必要がある」
援助団体であるノルウェー難民問題評議会は5月、暴力と復興の遅れのために、シンジャール市のヤジディ教徒、クルド人イスラム教徒、アラブ人の住民の故郷への帰還が妨げられたと発表している。同月初めに暴力が急増していた。
同評議会は、「政府補償を申請した人のうち実に99パーセントが、財産損害に対する補償金を受け取っていない」とも発表した。
5月上旬、トルコで非合法化されているクルド労働者党(PKK)と関係の深いヤジディ教徒戦闘員とイラク軍の間で、戦闘が勃発した。
1万人以上が戦闘を逃れ、避難民が増加した。
AFP