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エンターテインメント・ベンチャーがサウジアラビア経済に与える効果

観光事業からの純益が著しく増加していることは、炭化水素を中心とした経済から脱却するための政府による取り組みが進展していることを意味する。(SPA)
観光事業からの純益が著しく増加していることは、炭化水素を中心とした経済から脱却するための政府による取り組みが進展していることを意味する。(SPA)
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03 Sep 2023 01:09:20 GMT9
03 Sep 2023 01:09:20 GMT9
  • 新たな観光とエンターテインメントへの取り組みは、サウジアラビアにおける非炭化水素部門による経済成長の主要な牽引役の一つとなっている

レベッカ・アン・プロクター

リヤド:サウジアラビアは、エンターテインメントと観光部門に重点を置いた、経済の多角化への大規模投資の成果を上げつつある。こうした投資は、サウジアラビアの潜在的所得を向上させたのに留まらず、炭化水素に依存した経済からの脱却の道筋をも構築した。

こうした取り組みの成果は、サウジアラビア中央銀行が7月に発表した数値からも明らかだ。2023年第1四半期のサウジアラビアの経常収支は、177億米ドルの黒字だった。これは、観光収入の大幅な増加を反映したものである。今年度第1四半期の観光収入は98億米ドルに達しており、前年度同期の30億米ドルから著しく上昇している。

「OECD 観光動向と政策2022」という報告書では、最も速いペースで急成長する部門の1つである観光産業を発展させ、大規模な雇用創出を行いつつ、その国家経済への貢献度を大幅に上昇させようとするサウジアラビアの取り組みの有効性が実証されている。

国際的な広告制作専門企業であるイマジネーション・ミドル・イースト社の最高経営責任者であるアデル・ノエイヘッド氏は、世界全体では、エンターテインメントはGDPの4%、観光は7%を占めていると述べた。

「経済の多角化ということで言えば、サウジアラビアがこうした部門の成長を図るにあたって目指すべきなのはこの水準なのです」と、ノエイヘッド氏はアラブニュースに語った。

「炭化水素依存から脱却し経済を多角化しようとするなら、エンターテインメントと観光は政府の取り組みにおける実に明確な2本柱になります」と、ノエイヘッド氏は付け加えた。

イマジネーション・ミドル・イースト社の戦略担当責任者であるクリストフ・カスタニェラ氏も、このノエイヘッド氏の意見に同調し、サウジアラビアでの観光体験が依然潜在的な可能性を秘めていることを指摘した。

「ご存じのように、サウジアラビアでは、あらゆる側面が、NEOMのように、スポーツや音楽、テクノロジー、パフォーミングアーティストで彩られています。伝統的なものもあれは、ハイパー・モジュラーなものも未来的なものもあります。現在、こうした側面の繁栄を図る全く新しい機会が誕生したというわけです。これは素晴らしいことです」と、カスタニェラ氏は語った。

カスタニェラ氏は、こうしたベンチャー事業が政府の戦略的活動や新しい取り組みにおける「主要部分であり、主要な推進力」である点を強調した。

特に計画や投資、創造的志向、想像力といった複雑な要素が各事業において密接に絡み合う経験経済の構築を目的として、地域レベルで、これ程までに多層的な取り組みが行われる様を目にするのは初めてだと、戦略担当責任者のカスタニェラ氏は述べた。

成長の促進

サウジアラビアのビジョン2030では、エンターテインメント部門に特化した支援策を推進している。2030年までに230億米ドル以上の収入またはGDP寄与度3%以上と10万人以上の雇用創出がこの支援策の目標である。また、この部門のさらなる成長を支えるための640億ドルの投資計画もある。

「エンターテインメントは世界的に急成長中の産業です」と、ノエイヘッド氏は付け加えた。「世界のどこかで人々がより豊かになると、可処分所得や余暇が増加し、多様な文化的エンターテインメント活動へ支出するようになります。これは良い方向への動きなのです」

観光部門も同様に急速に拡大中で、2030年までに雇用を3倍の160万人に、GDP寄与度を10%とすることが目標とされている。

サウジアラビアでの観光体験は依然潜在的な可能性を秘めており、それは素晴らしいことです。

イマジネーション・ミドル・イースト社の戦略担当責任者、クリストフ・カスタニェラ氏

カスタニェラ氏は、エンターテインメントと観光部門の2つの重要な要素について解説した。

「国内向けと海外向けのものがあるということです。サウジアラビア国内では、私的な、あるいは家庭内にエンターテインメントの拠点というものがこれまでもありました」と、カスタニェラ氏は語った。

しかし、野心的なビジョン2030の取り組みにより、様々なレベルでエンターテインメント・ベンチャーを誘致するために大規模な投資が行われているのだとカスタニェラ氏は述べた。

カスタニェラ氏は、この変革の重要な牽引役として2つのプロジェクトを挙げた。「キディアとセブンが主要な2つです」

ビジネス領域においても、サウジアラビアには、フィルムコミッション、映画撮影用セット、ゲーム事業がある。これらは、エンターテインメント産業への投資の最も重要な牽引役となっている。

経済的大成功

特に傑出したプロジェクトとして、セブンとして知られる「サウジ・エンターテインメント・ベンチャーズ」がある。このプロジェクトからは、最近、3億4,600万米ドルの娯楽施設の開設計画が発表された。このベンチャー事業は、数百万人のサウジアラビア人の生活の質の向上のために、没入体験型のエンターテインメントや家族向けレクリエーションを提供することになる。

セブンのプロジェクトの発表は、第2四半期に非石油事業の5.5%の急成長により前年同期比1.1%の経済成長を遂げたサウジアラビアにとって心踊るタイミングで行われた。

パブリック・インベストメント・ファンドの完全子会社であるセブンは、マディーナで13億サウジアラビア・リヤル(3億4,654万米ドル)のエンターテインメント施設の建設を開始した。

アル・バワニ社とアーバンコン・トレーディング&コントラクティング社のジョイント・ベンチャーであるBUJYとの共同事業であるこのプロジェクトは、国民の生活水準の向上や地域社会の活性化、観光振興というサウジアラビアの戦略やビジョンと軌を一にするものである。

世界全体では、エンターテインメントはGDP4%、観光は7%を占めています。経済の多角化ということで言えば、サウジアラビアが目指すべきなのはこの水準なのです。

イマジネーション・ミドル・イースト社の最高経営責任者アデル・ノエイヘッド氏

「マディーナの私たちのエンターテインメント施設はこの地域のエンターテインメント事情を一変させ、マディーナの人々に新しい、比類の無い、刺激的な体験を提供し、数百万人のサウジアラビア国民の生活の質を向上させるというセブンの目標を支えることになります」と、セブンのアブドラ・アル・ダウード会長が発表会の声明の中で述べた。

セブンのプロジェクトの発表は、近年経済的な成長著しいサウジアラビアのエンターテインメント部門と観光部門の広範な傾向の一部である。

この成長は、サウジアラビアの非石油GDPに関する国際通貨基金(IMF)の予測からも明白である。IMFは、同国の非石油GDPが2020年の3.9%から2023年には4.3%に堅調に増加すると予測している。

観光事業からの純益が堅実に増加していることは、炭化水素を中心とした経済から脱却するための国家的取り組みが功を奏していることを明確に示している。

課題への取り組み

特に雇用創出の点で課題は依然として残っているものの、それを解決し得るような動きもある。

今後要注目となることは、サウジアラビアの人口の3分の2が30歳未満であり、この若い世代のために民間企業が着実に成長し、今後数年間で雇用が創出される見込みであることだ。この変化も、すでに起きつつある。

マディーナの私たちのエンターテインメント施設はこの地域のエンターテインメント事情を一変させ、マディーナの人々に新しい、比類の無い、刺激的な体験を提供することになります。

セブン会長のアブドラ・アル・ダウード氏

「課題の解決には時間を要しますが、意欲には事欠きません」とイマジネーション・ミドル・イースト社のアデル・ノエイヘッド氏は語った。「地域経済の強化ということで言えば、多量のエンターテインメントコンテンツの確保、さらには観光業の振興においても、近道は、知的財産の輸入です」

経時的変革とは、地元のブランドやフレーバーをサウジアラビア国内でどのように誕生させ得るか、そしてそれが地域の芸術的文化的ルネッサンスを振興した後、やがて注目すべき世界的な産業にいかに成長させられるのかという事なのだと、ノエイヘッド氏は続けた。

「必要とされているのは、地元市場向けとして適切な地域特有の刺激的な知的財産を創出するために最適なツールやメディア露出、資金です。私はそれも相当重要だと考えています。そして、そのような知的財産が、湾岸協力会議加盟諸国の他の地域や、さらにはアラブ世界の中で、サウジアラビアを卓越した国家にするというわけです」と、ノエイヘッド氏は締め括った。

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