ニューヨーク: 国連総会出席のため米ニューヨークを訪問中の上川陽子外相は22日(日本時間23日)、一連の外交日程を終える。先進7カ国(G7)議長国として外相会合を主宰し、新興・途上国「グローバルサウス」など各国外相との信頼関係構築に注力。無難な外交デビューとなった。
上川氏は21日、韓国の朴振外相との初会談に臨んだ。朝食を共にしながら「関係改善を国民が実感できるようにするため、外相間でしっかりと意思疎通して取り組みたい」と表明。北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイル発射への懸念を共有し、緊密な連携を確認した。
この日はカナダ、ポルトガル、メキシコの各外相とも個別に会い、東京電力福島第1原発の処理水放出への理解を得た。22日には日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」外相会合に出席。グローバルサウスの盟主を自任するインドの外相とも会談した。
訪問初日に開いたG7外相会合ではウクライナ情勢に関する議論を主導し、11月に東京で次回会合を開くことを決めた。「打ち解けた雰囲気」(外務省幹部)で行われ、互いをファーストネームで呼び合うなど親交を深めた。会合後、上川氏は「温かく受け入れていただいた」と手応えを語った。
平和や紛争解決に女性の参画やジェンダー平等が必要だとする「女性・平和・安全保障(WPS)」の行事にも参加。上川氏は外相就任前からWPSに取り組んできた。会議の合間を縫って米国やウクライナ、ブラジル、インドネシアなど約15カ国の外相と個別会談も重ね、外務省幹部は「上川氏の存在感は高まった」と持ち上げた。
上川氏の本格的な外交が始まるのはこれからだ。当面の課題は、処理水放出で悪化する日中関係の立て直し。国連総会には中国の王毅共産党政治局員兼外相は出席せず、日中外相会談は実現しなかった。11月の米国でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせた日中首脳会談や、年内の日中韓首脳会談の開催に向け、中国側との調整が進むかが焦点だ。
時事通信