
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡り、国が軟弱地盤改良に伴う設計変更の代執行に向け、同県の玉城デニー知事を相手取り起こした訴訟の判決が20日、福岡高裁那覇支部であった。三浦隆志裁判長は国の請求を認め、同知事に対し、設計変更を承認するよう命じた。期限は25日。
玉城氏が承認しなければ、国は地方自治法に基づいて代執行し、工事に着手する構えだ。県は判決を不服として上告できるが、代執行を止める効力はない。
国が代執行に踏み切れば、初のケースとなる。自治体に移管された事務を国が執行する形となり、地方自治の在り方を巡り波紋を呼びそうだ。
判決後、玉城氏は「極めて残念。代執行は到底容認できない」とするコメントを出した。
判決で三浦裁判長は、玉城氏が設計変更を承認しない意思は明確で強固だとし、地方自治法が代執行の要件とする「他の方法による是正が困難」なケースに該当すると判断。県の対応を違法とした最高裁判決を放置するのは「法の支配を損ない、社会公共の利益を害する」と非難した。
その上で、普天間の危険性を現実的に除去するために代執行はやむを得ないと結論付けた。ただ、十数年にわたる工期で「さらなる設計変更もあり得る」とし、その都度訴訟に発展するのは適切ではないとも述べた。
一方、太平洋戦争で地上戦が行われ、戦後も米軍統治下で基地が建設された歴史的経緯から「埋め立てに対する県民の心情は十分に理解できる」と言及。「国と県が対話を重ねて解決を図ることが強く望まれる」と付言した。
設計変更は、辺野古崎北側の大浦湾で見つかった軟弱地盤の改良のため、防衛省が2020年に県に申請。知事は環境保全策に不備があるなどとして不承認とし、国土交通相が知事の決定を取り消す裁決と是正指示を出したため訴訟となり、最高裁は今年9月、国の判断を適法と認めていた。
辺野古への土砂搬入は今月14日で丸5年となり、南側は埋め立てがほぼ完了する一方、大浦湾側は手つかずのまま。防衛省は地盤改良工事の開始から米軍への提供までに12年かかるとしている。
時事通信