アンカラ:トルコは米国、ロシアとの交渉がまとまらなかった場合に備え、米国が支援をするシリア北部のクルド人民兵組織に対する追加的な軍事行動の準備を整えている。
レジェップ・タイップ・エルドアン大統領は今週、トルコ政府がシリア北部に端を発する脅威を排除する意向を固めたとし、2名のトルコ人警察官が殺害されたクルド人民兵組織・YPGによる攻撃が「決め手」となったと語った。
トルコは、10日、シリア・アザーズ地域に配備されていた同国の警察が、YPGによりテル・リファートから発射された誘導ミサイル攻撃の被害を受けたと伝えた。トルコ政府はYPGを、同国南東部で何十年間も続く紛争に参加する民兵組織と密接な関係にある、テロ組織であるとみなしている。
「我々に対する攻撃がしばしば行われる出どころのエリア、特にテル・リファート地域を綺麗に整えることが極めて重要だ」。ある政府高官がロイター通信にそのように語った。
トルコ軍は最近5年間で3度のシリア侵攻を行い、数百キロメートルに及ぶ国境地帯を占領し、シリア北部に対して約30キロメートルほどの土地を押し入った。
シリア北部においてはYPGだけでなく、ロシアのジェット機、イランの支援する戦闘員部隊、トルコが後ろ盾となっている反政府組織、イスラム聖戦士、米軍やシリア政府軍なども、混在するそれぞれの領土をまたぎながら活動している。
米国はYPGを、シリア北東部のダーイシュとの戦闘における主要な協力者と捉えている。ロシアは、シリアのバッシャール・アサド大統領を支援するための部隊を同地域に駐在させている。
トルコによる追加の軍事行動がいつ、どのように行われるのかはまだわかっていない。
トルコ政府関係者は、軍と情報機関が準備を整えていると伝えた。
「軍事行動を行う決定は既になされており、必要な調整が特定国との間で行われる予定となっています。この件については、ロシア、米国と協議されるでしょう」と関係者は付け加えた。
政府関係者らは、10月末にイタリア・ローマで開催されるG20サミットで、エルドアン大統領がこの問題を米国のジョー・バイデン大統領と話し合う予定だと伝えた。
別の関係者は、YPGを少なくとも30キロメートル後退させなければならないとし、最近、誘導ミサイルが発射された地域を、イランに近い勢力と共にロシアが完全に掌握していると述べた。
エルドアン大統領はバイデン氏と協議した後にロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談する予定だと、その関係者は伝えた。
「外交交渉による結果が出ず、PYDが当該地域を去らないということになると、軍事行動は避けられないでしょう」と述べた。彼は、YPGの政治部門を表す略語(PYD)を使い、またテル・リファートや「他のいくつかの場所」にも言及した。
11日には、テル・リファート東部のYPG管理地域から発射されたと思われる破裂弾が、シリア・ジャラーブルスと国境を接するトルコ・カルカミスの街で爆発し、軽微な被害が出たと、トルコ政府は発表した。
アザーズとジャラーブルスは、ダーイシュとYPGを国境地域から退却させることを目的として2016年に初めて行われたシリア侵攻以来、トルコの支援を受ける反政府グループにより支配されている。
その後、トルコは2度、YPGに対するシリア侵攻作戦を行い、1度は北西部・アフリン地域が、もう1度はさらに東部の地域が対象となった。
ロイター