
ワシントン:ジョー・バイデン大統領は木曜日、重要な同盟国である日本を怒らせるリスクよりも、選挙期間中の周囲への気遣いから、日本の新日鉄へのUSスチール売却案に反対すると述べた。
バイデン氏が141億ドル(約2兆円)の買収計画に介入するのは、岸田文雄首相を国賓としてホワイトハウスに招いて、関係強化と中国への対抗を目的とした懇談を行う1ヶ月前のことだ。
バイデン氏の視線は11月のドナルド・トランプとのアメリカ大統領選挙に向けられているようだ。両陣営の議員が労働組合とともに、アメリカの製造業の象徴を外国人に売却することに反対している。
「自国の鉄鋼労働者によって運営される強力なアメリカの鉄鋼会社を維持することは重要です」と、バイデン氏は声明の中で発言し、「私は鉄鋼労働者に、彼らの見方だと言いましたがそれは本心です。USスチールは1世紀以上にわたってアメリカを象徴する鉄鋼会社であり、国内所有・運営のアメリカ鉄鋼会社であり続けることが不可欠です」と続けた。
しかしバイデン氏は、この買収が12月に発表されて以来、それが国家安全保障にどのような影響を及ぼすかについて、米連邦政府の審査を受けているこの取引を阻止するとは明言しなかった。
バイデン氏の発言を受けて、USスチール株は市場前取引で5.3%下落した。
新日鉄とUSスチールは共同声明で、この取引は「日米間の緊密な同盟関係」を反映したものであり、成立すべきだと考えていると述べた。
「この取引の客観的かつ包括的な見直しは、米国の雇用、競争、経済および国家安全保障を強化するものであることを示すものです。我々は、この取引を引き続き支持し、公正で思慮された評価の結果、この取引が承認されると確信しています」と述べている。
しかし、この売却案はアメリカでは選挙期間中の焦点となっている。
USスチールは激戦区ペンシルベニア州のピッツバーグに本社を置いており、バイデン氏は2020年の選挙で勝利し、11月にもトランプ陣営と争うことになる。
トランプ元大統領は2月、ホワイトハウスへの当選を果たせば、この「恐ろしい」取引を阻止すると述べている。
「私は即座に阻止するだろう。絶対に阻止する」と彼の談。
また、バイデン氏が選挙マニフェストで掲げたアメリカ製造業の再建という公約の核心に触れるものであり、外国企業による買収は有権者に誤ったシグナルを送ることになるとの懸念もある。
バイデン氏は、重要な労働者階級の有権者層をトランプ氏と争うため、選挙を前に米国の労働組合を口説いてきた。
合併会社はUSスチールと全米鉄鋼労組(USW)の間の契約合意を尊重すると宣言しているにもかかわらず、労働組合は提案された取引に猛反発している。
USWは12月、1901年に設立されたUSスチールの「貪欲で近視眼的な態度」を反映しているとして、提案された取引を非難し、日本が契約を守る能力に疑問を呈した。
当時、この取引は議会でも超党派の非難を浴び、ペンシルベニア州選出のジョン・フェッターマン民主党上院議員は、この取引を “絶対に言語道断 “といった。
トランプ元大統領支持派のオハイオ州選出のJDバンス上院議員と他2名の共和党議員は、国内の鉄鋼生産を “米国の国家安全保障に不可欠 “だとして、この取引を阻止するようジャネット・イエレン財務長官に要請した。
ホワイトハウスは当時、この取引は国家安全保障に影響を及ぼす可能性があると警告し、綿密に調査されるべきだと述べた。
両社は12月、米国企業に対する外国企業の買収を審査するために設置された省庁間組織である対米外国投資委員会(CFIUS)に、この取引を評価するよう要請した。
AFP