
新型コロナウイルスの感染拡大が、インド太平洋地域での日米の抑止力に影を落としている。
米軍の展開能力が空母の集団感染でそがれる中、海洋での中国の挑発的な動きが増加。
警戒を強めた日米両国は、「力の空白」を生まぬよう、共同訓練などにより存在感誇示に努めている。
「コロナの感染が拡大する中でも、中国が南西諸島に軍事的な圧力をかけ続けている」。
河野太郎防衛相は13日、東京都内で行ったウェブ講演でこう危機感を訴えた。
これに先立つ11日、中国軍の空母「遼寧」など6隻が沖縄本島と宮古島の間を通過し、南シナ海で訓練を実施した。
米空母「セオドア・ルーズベルト」が停留を強いられるさなかの出来事で、日米の安保当局者に緊張が走った。
防衛省は「中国海軍は(感染拡大の)影響を受けておらず、活動を継続している」(山村浩海上幕僚長)と分析する。
1~3月の中国機に対する自衛隊機の緊急発進(スクランブル)の回数は、152回と高水準。
中国公船の尖閣諸島(沖縄県)周辺海域への入域日数も、3月は昨年から倍増している。
こうした中、海上自衛隊の護衛艦「あけぼの」は10~11日、東シナ海で米強襲揚陸艦「アメリカ」と共同訓練を実施。強襲揚陸艦は海兵隊や最新鋭ステルス機F35を搭載、島しょ奪還作戦にも使われ「メッセージ性は強い」(海自幹部)。
護衛艦「てるづき」も、マレー半島沖で米艦と通信訓練を行った。
日本政府は欧州やアジアの友好国とも連携を深める考えだ。
河野氏は17日、太平洋に領土を持つフランスのパルリ国防相と電話会談し、中国軍の動向について「脅威認識を共有する」ことで一致した。
ただ、感染拡大が世界的に続く中、米空母がどの段階で通常展開に戻るのかは見通せず、緊張が解けない時期が続きそうだ。
JIJI Press