
大阪大などの研究チームは、探査機「かぐや」の観測で、月の表面全体から宇宙空間に流出する炭素を捉えたと発表した。月には炭素はほとんど存在しないと考えられてきたが、成果は月の誕生過程の見直しにつながる可能性もある。論文は7日、米科学誌サイエンス・アドバンシズに掲載される。
月の起源は、原始地球に火星サイズの天体が衝突し、現在の地球と月が誕生したとする「巨大衝突説」が有力。月は衝突時に高温の火球になったため、炭素のような揮発性物質は蒸発し、ほとんど存在しないと考えられてきた。
大阪大の横田勝一郎准教授らは、日本の月周回探査機「かぐや」が搭載していたプラズマ観測装置のデータを解析。月の表面全体から炭素イオンが流出していることが分かった。流出量は場所によって異なり、高地よりも「海」と呼ばれる過去の火山活動で噴き出た溶岩が固まった部分の方が多かった。
シミュレーションの発達により、どのような巨大衝突で現在の地球や月が誕生するかの研究が進められている。横田准教授は「巨大衝突説は疑いはないが、高温の状態が長く続かないとか、温度が若干低いとか、今まで含めていない効果を考える必要がある」と話している。
JIJI Press