
世界陸連のセバスチャン・コー会長は、抗議行動の禁止をめぐり批判が高まっていることを受けて、来年に延期された東京オリンピックで、選手たちが表彰台で「片膝をつく行為」は容認されるべきだとの考えを示した。
来年のオリンピックの陸上競技が行われることになっている国立競技場を視察中、コー会長は、どのような抗議行動も他の選手への「敬意をもって」行われなければならないと述べた。
5月にジョージ・フロイドさんが警察に押さえつけられて死亡したことを受けて、スポーツ界でも「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」運動が高まっていることから、1月に発表されたオリンピックでの抗議行動禁止に関する指針に厳しい視線が注がれている。
コー会長は「アスリートが表彰台で片膝をつくことを望むなら、私はそれを支持すると明らかにしてきた」と東京で記者団に対して述べた。
「アスリートたちはこの世界の一部であり、自分たちが生きている世界の思いを反映したいと望んでいる」としたうえで、「そのような行動が他の選手への敬意を伴っているなら、それは私にとって完全に容認できるものであり、ほとんどのアスリートの正当な理解を得られるものだと思う」と述べた。
1月、IOC=国際オリンピック委員会は選手の行動に関する指針を新たに発表し、その中で表彰台や競技会場でのすべての抗議行動を違反と定めた。
しかし、IOCは柔軟な対応をとる可能性も示唆しており、反人種差別運動に対する「品位ある」支持方法の模索について、IOCのアスリート委員会による議論を支援する考えを示している。
6月には、米国の選手団と、1968年のメキシコオリンピックにおいて、拳をつきあげて抗議する「ブラックパワー・サリュート」を行い、大会を追放されたことで知られるジョン・カーロス氏がIOCに対し抗議行動禁止の撤廃を求めた。要望書には「アスリートはもはや沈黙しない」と記されている。
選手行動に関する問題以外にも、新型コロナウイルスにより史上初めて延期され、来年の2021年7月23日に開幕することになっている東京大会については、組織委員会は多くの難しい問題に直面している。
パンデミックが続く中、オリンピック開催を疑問視する声が上がっていることから、アスリート、観客、また日本の人々に対し大会継続が可能だと説得できるよう、組織委員会は対策に取り組んでいるところだ。
コー会長は東京大会は開催できると信じているとし、「いくつかの調整や変更は必票になると思うが、このような状況下にあっても、すばらしい大会になると確信している」と期待を示した。
そして、前日にスペインのバレンシアで更新された男子10000メートルと女子5000メートルの世界新記録を、アスリートが競技を待望していることの表れとして取り上げた。
コー会長は「今回のことで、アスリートたちがパンデミックの数か月を非常によく乗り越えたのだということがわかりました」と述べ、「アスリートたちはこれまで非常に困難な環境にあり、彼らの多くは何か月も自宅の外に出ることもできませんでした」と指摘したうえで、「それでも、彼らは高いレベルのコンディションを維持し続けたのです」と強調した。
そして、「今回の新記録は、来年ここで行われる競技の幸先の良い前兆となるでしょう。アスリートたちはオリンピックで頂点に立つことになると思います」と期待を示した。