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日本の柔道、虐待や暴力問題への世間の厳しい目

2020年10月6日、都内で行われたAP通信とのインタビューで語る日本オリンピック委員会会長、山下泰裕(写真・AP通信)
2020年10月6日、都内で行われたAP通信とのインタビューで語る日本オリンピック委員会会長、山下泰裕(写真・AP通信)
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09 Oct 2020 10:10:58 GMT9
09 Oct 2020 10:10:58 GMT9

日本は柔道発祥の地だ。19世紀に生まれたこの格闘技は、来年の東京オリンピックで他のどの競技よりも確実に高い関心を惹くだろう。

だが、柔道はまた、広く知られるところとなった暴力問題の申し立てや、過去数十年の日本の柔道界で起こった軍国主義的なトレーニングによる怪我、虐待、100件を超える死亡事故などのため、世間の厳しい目にさらされてもいる。

「柔道が非常に危険だと思われてしまっているのは悲しいことだと思う。日本の柔道界はこのことを真剣に受け止めなくてはならない」と、全日本柔道連盟会長の山下泰裕は、彼のオフィスで行われたインタビューでAP通信社に語った。

山下は伝説のオリンピック選手でもある。金メダリストであり、国際オリンピック委員会(IOC)のメンバーであり、日本オリンピック委員会の会長でもある。山下は率直に、日本におけるこの問題は深刻であり、トレーニング中の体罰により怪我も起きていると語った。

日本の柔道界はこの数年間、状況の改善に注力していると主張するが、まだまだ道のりは遠い。

「問題はメッセージが草の根レベルまで届いていないことだ」と、山下は言う。

山下は1984年のロサンゼルスオリンピックで脚の怪我を乗り越えて金メダルを勝ち取り、足を引きずって表彰台に上がった。柔道の魅力は肉体と精神を鍛えることにあると説く。

「チームと喜びを分かち合い、対戦相手に敬意を払い、自分を律することを学ぶ。勝ち負けだけにはおさまらない、柔道からは多くを学ぶことができる」昨年、前会長が賄賂問題で辞職したのを受け、日本オリンピック委員会の会長となった山下は語る。

対戦相手の力を使って投げ技や寝技を決める柔道は、元来、文字どおりの「柔らかい道」を意味する。だが、これまでの日本の柔道界はその真逆をいっていると批判されている。

全国柔道事故被害者の会によれば、1983年から2016年の間に日本の柔道界では121件の死亡事故が起きた。

そこには学校での事故は含まれるが、学校外の道場での事故は含まれておらず、データもない。

「愛のむち」式のトレーニングの対価は大きい。2019年には、5年生の児童が稽古中に頭を打ったことによってできた血栓によって死亡した。全国柔道事故被害者の会によれば、同じく昨年の別のケースでは、4年生の児童が投げ技を受けて重傷の怪我をしている。

また、日本での柔道の人気は野球やサッカーなどの別の競技に比べると下降しているようだ。

フランスや他国での柔道についての専門家、ミッシェル・ブルースは、これは非常に深刻な問題ですぐにでも改善策がとられなければ、「日本の柔道に未来はない」と考えている。

「柔道による怪我の数がここまで多い国は他にない」と、電話でのインタビューでブルースは語った。

問題点の一つは、日本の柔道の指導者は柔道には長けていても若者の身体的及び心理的なニーズに応える術を知らないことだとブルースは言う。ブルースは黒帯7段の柔道家で、最近ボルドー大学での教職を引退した。

また、性的暴行も問題になっている。

2011年、2度オリンピックで金メダリストとなった内柴正人が、柔道部員の一人に性的暴行を加えたとして逮捕された。内柴は性行為は同意に基づいたものだとして無罪を主張したが、2013年、有罪が確定し、5年間の懲役となった。

2013年、女子柔道選手15人が匿名で柔道界に蔓延する暴力行為やハラスメントを告発する文書を公表した。

柔道を含む日本の競技団体についてのヒューマン・ライツ・ウォッチによる最近のレポートは、コーチの暴力行為に対する制裁措置の基準が定められていないこと、告発があっても適切に対処されていないこと、暴行事件についての報告分や調査記録などが公開されていないことなどを指摘している。

現在は日本女子体育大学の教えており、フランスでも指導した経験のあるオリンピック銀メダリストの溝口紀子は、フランスで学生たちから「ノリコ」と呼ばれたことを覚えている。日本の柔道界の厳格な階級主義の中では考えられないことだ。

日本では柔道を教わる生徒ははっきりとした声で「はい」とだけ答えるように言われ、目上の者を下の名前で呼ぶことはあり得ないと溝口は語る。

また日本の柔道界での体罰やハラスメントはスパルタ式の指導法の一部とされる。これは、戦前、戦時中の軍国主義的な暴力的な訓練法の名残だろうと溝口は言う。

日本で体罰が法的に禁じられたのは、やっと今年になってからだ。日本ではメダルやトロフィーを勝ち取らなくてはいけないというプレッシャーは大きい。生徒も親たちも体罰を訴えることはなく、指導者の暴力行為は罰せられずにきた。

「暴力行為を止めるために声を上げなくてはいけないと感じている。柔道を愛しているから。それに、亡くなる人が増えるのではと不安になったからだ」と溝口は言う。

「やっと半分進んだかなというところ。まだまだ変えるべきことは山ほどある」

全国柔道事故被害者の会代表の小林恵子は、過去20年間、アメリカ、フランス、オーストラリア、イギリスで柔道で死亡した児童は一人もいないことを挙げ、柔道の稽古を安全に行うことは可能だと強調する。

小林の息子は16年前、中学校の教師が体罰として柔道の絞め技と投げ技をかけたことで脳出血を起こし、重体となった。体罰の理由は、教師が勧めた運動部に力を入れる高校に行くことを拒否したからだった。

何度も繰り返されてきたと批判されるパターン通り、教師の行動は不幸な事故と判断された。小林は、自分は柔道に反対しているのではない、柔道界での暴力行為に反対しているのだと強く語った。

「こんな苦しみを味わうのは私たちで終わりにしたいと決心しているだけです」

AP通信

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