ダイアナ・ファラー
シリアの国連開発計画(UNDP)プロジェクト・マネージャーであるルアイ・ファロウ博士は、当初、ダマスカス大学での日本語講座は課外活動にすぎないと考えていた。
その当時は、その講座が元で日本の千葉大学で一生涯の体験を得ることになるとは夢にも思っていなかったのである。
身体的健康の専門家である彼は、シリアで医学の学位取得を目指していた時に文部科学省(文科省)の奨学金プログラムの存在を知った。そして現在の彼があるのは、結果的にその日本の奨学金のおかげなのである。
日本国外務省の清水首席公使によれば、文科省の奨学金は年間20〜30人の学生を支援している。
「研究分野や能力にもよるので、人数が決まっているわけではない」らしく、文科省のプログラムでシリア市民に提供されているのは、研究留学生(Research Students Program)奨学金の1種類だけだと言う。
日本政府は、日本で研究活動を行い、日本の大学で修士号や博士号を取得しようとする大学院生を対象に助成金を支給している。
2005年から2010年までの5年間、ファロウは日本の千葉市に滞在し、整形外科の博士号取得を目指した。
「スポーツ医学に興味があったので、整形外科の各部署に入り、そこで1年間基礎研究をしました」と彼は言う。
「それから博士課程に入学し、再生医療の研究、すなわち幹細胞を使った組織再生の研究を続けました。」
その研究結果については、『American Journal of Bone and Joint Surgery』誌で発表する機会が得られたとファロウは述べている。
彼はまた、日本やアメリカ、ブラジルで開催されたいくつかの国際会議にも参加し、研究発表を行った。
日本で過ごした中で一番楽しかったことを決めるのは難しいが、自分が経験した「変化と成長」には感謝しているとファロウは言う。
「日本人の友人や同僚の助けを借りながら、できるだけ日本人と同じように生活することを心がけました。そしてそれは、私の経験を豊かにするうえで重要なことでした」と彼は付け加えた。
清水によれば、日本大使館ではシリア内外のシリア人から申請を受け付けているとはいう。
この手続きには約9カ月かかり、応募者は35歳未満で英語または日本語が堪能であること、そして学士号所持者で、平均点が70点以上であることが求められる。
採択されると、申請者には月額約143,000円(1,350ドル)が支給され、さらに2,000円の手当が支給される。
ただし、日本政府の予算によって金額が変わる可能性もあると清水は言う。
同様の奨学金プログラムはパレスチナ難民にも提供されており、アラブ首長国連邦の学生を対象としたインターンシップ・プログラムもある。