
新型コロナウイルス感染者が急増し、「医療非常事態宣言」を出した大阪府。重症病床の運用率は8割近い水準が続き、救急の受け入れ制限や診療の一部停止を余儀なくされる医療機関も出始めた。病床確保が難しくなる年末年始に向け関係者は懸念を強め、「第4波」を想定した動きも進む。
大阪市立十三市民病院では、5月に新型コロナの中等症患者の専門病院に衣替えすると医師や看護師ら32人が退職。大学病院などから応援を受けるが、運用病床は計画を下回る70床にとどまる。
職員は疲弊し、看護師の募集も始めたが、担当者は「希望者が来るかどうか」と言葉少なだ。松井一郎市長は今月11日、コロナ病床を月内に増やした病院に対し、1床当たり1000万円を支給すると表明した。患者の受け入れ先を増やすことで同病院の負担軽減を図り、新たに100床の確保を目指すという。
ただ、他の医療機関も状況は厳しい。市内の別の2次救急病院は、発熱のある救急患者も積極的に受け入れており、コロナ陽性者が散発的に出る。感染が疑われる患者には防護具を着て少人数で対応せざるを得ず、看護部長は「患者のケアが行き届かない」と苦悩する。
入院先を調整する府の専門部署に連絡しても、転院先がすぐに見つからないケースもある。院長は「1、2波の時にはなかった事態。既に医療崩壊は始まり、進行している」と話す。
府の試算では、コロナ病床の運用率は年明けまで高止まりが続く。府は年末年始にコロナ患者を受け入れた場合、1人につき20万円を支給して医療機関を支援する。
府の専門家会議座長の朝野和典・大阪大大学院教授(感染制御学)は「年明け以降の第4波では、重症者が現在の2倍強に当たる400人規模に達する事態も想定すべきだ」と指摘。コロナ病床がある病院は現在約85カ所だが、吉村洋文知事は府内の約500病院すべてに入院患者の受け入れを要請することも検討しているという。
JIJI Press