
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、都市部を中心に病床が切迫した状態が続く。重度の認知症や脳梗塞などを併発した高齢者も多く、入院先の調整が難航。コロナ患者を治療する医療機関からは「既に『入院難民』が出始めている」との指摘もある。
大阪府内のコロナ病床の運用率は8割前後と高止まりする。病床数には地域ごとにばらつきがあるため、府は昨年3月に開設した入院フォローアップセンターで入院先を一元的に調整し、重症者や高リスク患者を優先的に入院させている。
浅田留美子センター長は「高齢のコロナ患者は持病の治療が必要な人が多い。認知症など特殊な病床が特に不足し、絶えず不安がある」と語る。人工透析や脳梗塞の治療が必要な患者のほか、転倒して骨折し、搬送先でコロナ感染が判明する高齢者も複数出ているという。
府内のある民間病院は昨年4月に専門外来を設けたが、年明け以降、検査した人の4割で感染が判明する日もある。70代のがん患者は感染が分かったものの入院できず、血液の病気がある別の患者は入院調整中に容体が悪化し、医師が自宅への往診を続けた。
院長は「医師が入院が必要と判断しても、自宅待機とされるケースがある。入院難民が出始めており、往診などの医療体制を早急に整えるべきだ」と訴える。
奈良県立医科大の今村知明教授(公衆衛生)は各地で病床が切迫する要因について、「感染症法改正でコレラなどの分類が見直された2007年以降、感染症病床が全国的に減ったのが大きい」と指摘。「コロナ患者の受け入れ病院と、それ以外の患者を受ける病院の役割調整を、地域ごとに急ぐ必要がある」と話す。
JIJI Press