ナジア・フーサリ
ベイルート: 金銭問題で逮捕された二人の貧しい兄弟の保釈金を裁判官が肩代わりした最近の法廷劇は、レバノンの経済危機が児童に与える影響を浮き彫りにした。
逮捕された二人は路上や埋立地からブリキ缶やスクラップを集めて販売することで生計を立てていたが、1ヶ月間勾留されていた。
ダニー・ゼーニー判事はこの二人を助け、レバノン最北部のアッカル警察署から釈放するように命じた。
最近、レバノン中で多くの貧しい人々が金属のスクラップを集めるようになり、それを売って小銭を稼ぎ家族を養っている。
兄弟は国選弁護人の立会いのもとゼーニー判事の前に姿を現した。
レバノンは30年以上も前に「児童の権利に関する条約」に署名しているが、今回の二人のケースはもはや児童保護がレバノンでは優先事項にはなっていないことを物語っている。
子供を含む乞食の数が著しく増加している。
バッサム・マウラウィ内務大臣は、レバノン政府はこの問題に取り組んでいると述べ、さらに、未成年更生施設の開設計画があると補足した。
施設が開設したら未成年だけを収容し、ルーミエの成人向け中央刑務所には未成年者を収容しないと大臣は話した。
ヘンリー・クーリー臨時法務大臣、アッバス・アル・ハラビ教育大臣、ヘクトル・ハッジャー社会問題大臣、マウラウィ内務大臣はナジャト・ムアラ・マジッド氏に対し児童保護に問題があることを認めた。マジッド氏は児童に対する暴力問題における国連事務総長の特別代表だ。
同氏はレバノンの子どもの幸福と安全に対する脅威が高まっていることへの国連の懸念を表明した後、ベイルートの政府本部で開催された会議に参加した。
ユニセフによると、同国は厳しい状況に陥り、条約に定められた児童の権利の確保への取り組みが鈍化している。以前は進歩も見られていた。
これはヘルスケア、保護、教育、休息、遊び、レクリエーションが減るという形で反映されており、特に障害を持つ子どもたちに悲惨な影響がでている。
会議中に閣僚が発表した報告書では既存の危機(一部は経済破綻により悪化)に加え、政治、経済、法律の難題に関する新たな懸念が示されていた。
法相は歴代政府が法案を準備し、未成年更正・社会復帰のためのセンターや施設開設の必要性を議論してきたが、国会ではまだ投票も承認もされていないと述べた。
ハッジャー社会問題大臣は、多数のシリア・パレスチナ難民の存在を考えると、児童保護プログラムを実施するのは困難だと述べた。
また、子どもたちは難民キャンプの過酷な環境で生活しており、その大半は学校に通っておらず、さらに多くの問題に面していると同大臣は補足した。
ハッジャー社会問題大臣は国際社会に対し、適切な解決策を見出すために同国の関係省庁に協力して欲しいと訴えた。
レバノン通貨の崩壊に伴うハイパーインフレで、家族は生き残ることで必死だ。
ユニセフによると、一部の家庭では食事を減らし、医療や教育を抑え、多くの場合、子どもを働かせて乗り切ろうとしている。これは2019年以前も同様だった。
レバノンの社会保護制度は保障内容と資金の間の大きな隔たりに悩まされてきた。
加えて、子どものための国の奨学金制度や、障害児への一般的な手当てがない。
ユニセフの新たな調査結果で子どもたちの生活へのダメージの深さが明らかになった。
調査結果には「子どもたちへの虐待、搾取、暴力のリスクが高まっており、生きるのに必要な基本的なものが入手できず、結果的に身体的、精神的、心理的、経済的な反動が思春期や大人になっても付きまとうことになります」と書かれている。
「家庭内でのストレスや不安が強いと子どもたちの健康や心理面に問題が生じ、時には家庭内暴力を引き起こし、有害な社会規範やジェンダー規範に以前よりも依存をするようになってしまいます」
マジッド氏は「子どもの保護は司法、社会、医療、行政の各レベルで満たされるべきものです」と話す。
「一連のサービスを活性化させ、すべての子どもに行き渡るようにすることが目標です。レバノンは子どもたちと自国の未来と現在に投資する必要があるのです」
「国連とユニセフは子どもたちのために、子どもと家族向けの各種サービスを改善するためにあらゆる支援を提供する用意があります」