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新しいハイテク航空機と羽田空港の奇跡

日本航空のエアバスA350型機が、より小さなボンバルディア・ダッシュ8の海保機と衝突した。(ロイター)
日本航空のエアバスA350型機が、より小さなボンバルディア・ダッシュ8の海保機と衝突した。(ロイター)
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06 Jan 2024 08:01:59 GMT9

羽田空港滑走路で先週発生した、多数の死傷者を出しかねなかった事故の後、民間航空機の素材としての繊維強化ポリマー(複合材)がクローズアップされている。

日本航空のエアバスA350が、より小さなボンバルディア・ダッシュ8の海保機と衝突した。旅客機の着陸と同時に、海保機が離陸しようとしていたのだ。

日航機516便が炎に包まれ、低毒性を示唆する灰色の煙を出しながら滑走路を進む中、両方の機体から火の玉が噴き出した。20分以内に、379人の乗客全員と乗務員が脱出シューターを滑り降り、生還した。海保機のパイロットは負傷し、一命を取り留めたが、他の乗組員5人は死亡した。エアバス社の調査員がフランスからやって来て、航空機の残骸を調べている。

この火災は、従来のアルミニウムの「表皮」ではなく、A350やボーイング787などに使用されている炭素複合繊維の機体や表皮の、重要なテストケースと捉えられている。

今回の事故は、航空業界で最新の大型旅客機のひとつであるエアバスA350が激しく損傷した初のケースで、複合材が燃焼したのだが、そのことが実際に人の命を救うのに役立った。そのため航空業界は、今回の事故と、民間航空会社の現在の機体調達状況を調整すべきかどうかを注視している。

特に、翼と胴体のフェアリングパネル、舵、尾翼部分には、数十年前から複合材が使用されてきた。内装にも複合材が使われている。今では機体全体、特に胴体にも複合材が使用されているかもしれない。現行の民間航空機の旅客機はまだ金属製だが、軽量化と効率化のため、航空技術者たちは炭素繊維複合材の比率を高めてきた。

炭素繊維複合材でできた現代航空機は、独特な燃焼の仕方をする。数多くの長距離国際航空会社が、双発・ワイドボディのA350を使用しており、世界中で570機以上が運航中だ。このタイプの航空機が燃えると、ポリマー素材が断熱層を形成し、脱出する乗客を火災の熱から守る。今回の事故が旧型機に発生していたなら、機体の屋根が「熱シールド」となる効果はなく、死傷者が出ていたかもしれない。

今回の日本の事故は、現在の航空業界を、より良く、より賢明な運航に導く、建造資材、火災安全、および避難手順の組み合わせの最高の事例であった。

テオドール・カラシック博士

航空機火災に際し、乗客が指示に従うことも生存の鍵である。航空機からの20分間の脱出時間は、事故時に航空機の生態系がどのように乗客を守るかに関する分析の一部だ。重要なこととして、異なる社会から来た乗客は、安全上の危機から逃れる際に異なる行動を取る。

日本社会はよく構造化されており、群衆対策も公共空間によく根付いている。先週の事故を乗客が撮影したいくつかのビデオ(内部燃焼や煙のパターンの証拠として重要)には、ハンカチで口を覆い、身をかがめながら非常口へ向かい、バッグや財布などの手荷物を持たずに非常用スライドを滑り降りる人々の姿が映っていた。乗客ひとりひとりが家族および個人の責任を果たしたのだ。こうして、複合材の民間航空機が、航空会社の緊急時規則を100%遵守した乗客に、より高い生存チャンスを提供した。今回、航空機の複合材が乗客の一層の安全を保証したのである。

航空業界はこうした動きを注視している。アルミまたは複合材でできた機体の事故発生時の燃焼や安全性に関し、3つの主要なポイントがある。第1に、胴体表皮は優れた防火壁であり、アルミ製胴体よりもはるかに長く炎の侵入に耐える。第2に、事故後に火災が起きた場合に発生する有毒ガスレベルは、複合材胴体でもアルミ製胴体でも同程度だ。最後に、複合材表皮の長時間の燃焼や再着火が起こらないことを保証する必要がある。これらはすべて、航空専門家や物理学者の助けを得て、航空業界自らが整備した規制とコンプライアンスの問題である。

複合材航空機の燃焼時には、消火のために一定量の水が必要になる。興味深いことに、複合材機体の火災に備えるには、空港の消防・救助サービスにより多くの水が必要となる。複合材機体の火災の過去の事件が水の問題をクローズアップした。10年以上前にアメリカのB-2爆撃機で起きた火災は、科学者たちが温度と燃焼速度の問題を解明し、より高温の火災が発生した場合にどれほどの量の水が必要かを見定めるのに役立った。この調査結果を受け、多くの空港で水の備蓄量を増やし、複合材火災に対処する新たな訓練をする必要が生じた。事故には何百ものシナリオがあるため、複合材の機体が関係することで、空港の新たな安全要件が明確になった。

全体的に言って、より多くの民間航空において、複合材は人命を救い、効率的な安全に役立っている。今回の日本の事故は、現在の航空業界を、より良く、より賢明な運航に導く、建造資材、火災安全、および避難手順の組み合わせの最高の事例であった。

  • テオドール・カラシック博士はワシントンDCのGulf State Analyticsで上級顧問を務めている。X:@KarasikTheodore
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