
2020年度東京オリンピックを標的とする非難や抗議の乱射撃の一部は「政治的駆け引き」だ、と国際オリンピック委員会(IOC)のディック・パウンド副会長が5月25日(水)にロイターに述べ、困惑の渦中にあるスポーツの祭典は7月に決行すべきであり、決行させる、と強調した。
パウンド氏によると、唯一の未解決問題は会場での観客の取り扱いだが、それは「いうなれば運営上の仔細事項」であり、オリンピック開催への考え方全体に対する重大な問題ではないと述べた。
日本の朝日新聞社は東京オリンピックの公式パートナーとなっているが、5月25日(水)の朝刊の社説でオリンピックの中止を求めた。
朝日新聞は概して菅義偉首相率いる自由民主党に批判的だが、その社説について、同社はパートナーとしての立場に変わりはないが、その編集部門は独自の立場によってその意見を掲載したと述べている。
医師会はオリンピック開催に抗議しており、投資家たちはオリンピック棚上げの場合のメリットについて議論を交わしており、また孫正義氏など直接利害関係の無いビジネスマンらはオリンピック中止を呼び掛けている。
「これらは政治的駆け引きにつながる」とパウンド氏は電話でそう述べた。「選挙はたしか今年の10月、11月あたりだと思うが、これらの意見はオリンピックの成り行きによって選挙上の立場に大きな影響を与える可能性がある」
複数の世論調査では、一般市民の大半がこの夏のオリンピック開催に反対しており、予防接種が遅々として進んでいないこの国に何万人という選手や役員が入国してくることに懸念を抱いているという結果が出ている。
パウンド氏は、予防接種の普及の遅さに驚いており、緊急事態宣言にも困惑しているという。
「日本国民は重大なことに取り組む際に非常に整然と効率的・効果的に事を進める人々だが、今回の予防接種についてはなぜだかそれが見られない。一体何が問題なのかわからない」と彼は言う。
オリンピックにおじけづく
日本人口の僅か5%強しか予防接種を受けておらず、これまでに感染者総数約719,000人、死者総数12,394人を記録している。日本オリンピック委員会は6月1日から代表団の予防接種を開始することが見込まれている。
「私にとって理解に苦しむのが緊急事態宣言だ」とパウンド氏は続けた。「緊急事態と言いながら、銀座のレストランやバーはどこもまだ営業している」
5月24日(火)、ある公衆衛生の教授でニュージーランド政府の顧問を務める人は、オリンピック開催は「馬鹿げている」と述べた。
米国は日本への渡航の中止勧告を出したが、その翌日になってホワイトハウスが「予定通りオリンピックを開催するという日本の決定を支持する」と発言した。パウンド氏はその相反する米国のメッセージに驚きはしないと言う。
「オリンピックが近づくと国民はおじけづくものだ」と彼は言う。「1984年のロサンゼルスでは、オリンピック開催中にスモッグで死亡するオリンピック選手の人数をめぐって、ありとあらゆる憶測が飛び交った。
「リオでは(2016年)ジカ熱が問題となった。ジカ熱の季節でもなく流行地でもないというのに、それでも多くの様々な人々がそのことをひたすら心配していた」
「政府と公衆衛生当局は、IOC の我々同様、常に連絡を取り合っており、科学に基づいた結論として、オリンピック開催のための準備はすべて重大なリスク無く実行することが可能だとされている」と彼は言う。
「日本国民・住民であれば、社会的距離の確保、マスク着用など、ウィルス拡散防止のために効果的と思われる様々なことを行うことが可能だ。その意味でも、他者との距離をとることが肝心であり、今東京へは行くべきではない。」
「これらのことすべてがオリンピック開催にむけて役に立つ。これらすべてが科学的根拠に基づいている限り、私はそれに賛同するし、現時点で誰も予想しなかったような何らかの予期せぬ重大事さえなければ、色々と懸念はあるとしても私はオリンピック開催を支持する」
ロイター