
長崎は9日、76回目の原爆の日を迎えた。長崎市松山町の平和公園で、「長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典」(平和祈念式典)が営まれ、被爆者や遺族、菅義偉首相ら約500人が参列し、犠牲者に黙とうをささげた。田上富久市長は平和宣言で、1月に発効した核兵器禁止条約の早期批准を政府に求めた。
式典は、新型コロナウイルス対策のため昨年同様、参列者席を例年の1割程度とし、開式前の被爆者による合唱を中止するなど規模を縮小した。核保有国を含む63カ国や国連、欧州連合(EU)の代表らも出席。原爆投下時刻の午前11時2分、鐘の音に合わせて1分間黙とうした。
田上市長は平和宣言で、「核兵器による惨禍を最もよく知るわが国だからこそ、核兵器禁止条約を育てる道を探ってください」と述べ、条約の早期批准とともに、第1回締約国会議にオブザーバーとして参加するよう政府に要望。核保有国間の軍拡の動きに危機感を表明し、世界の核軍縮のため、米ロにさらなる核兵器削減を訴えた。
その上で、「広島が『最初の被爆地』という事実によって永遠に歴史に記されるとすれば、長崎が『最後の被爆地』として歴史に刻まれ続けるかどうかは、私たちがつくっていく未来によって決まる」と呼び掛けた。
続いて、被爆者代表の岡信子さん(92)が「平和への誓い」を読み上げた。
菅首相はあいさつで「各国が相互の関与や対話を通じて不信感を取り除き、共通の基盤の形成に向けた努力を重ねることが必要」と述べ、「核兵器使用の惨禍に関する記憶を受け継いでいく取り組みを継続していく決意だ」と語った。核兵器禁止条約には言及しなかった。
式典では、被爆者や遺族らが7月末までの1年間に新たに死亡が確認された3202人の名簿を奉安し、犠牲者に水と生花をささげた。死没者数は18万9163人となった。
式典には米ロ英仏中とインド、イスラエルの核保有国7カ国の代表が出席。パキスタンは欠席した。
時事通信