
政府は新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染拡大で社会機能維持が困難になるのを防ぐため、感染者の入退院基準と濃厚接触者の待機措置の緩和を急ぐ方針だ。専門家からは、感染者の入院・療養期間を10日間とする案が出ている。
岸田文雄首相は12日、公明党の石井啓一幹事長と首相官邸で会談。入退院基準に加えて濃厚接触者の待機措置も見直すべきだとの提言を受け、「特性を踏まえた対応が求められる。大変重要なポイントだ」と前向きに対応する考えを示した。
首相は11日に新たなコロナ対策を発表した際、オミクロン株について「感染力が高い一方、重症化率が低い可能性が高く、潜伏期間は短い」と指摘。こうした特性を踏まえて感染者の入退院基準を見直すと表明していた。
見直しはオミクロン株の感染拡大で社会機能がまひするのを防止するのが狙いだ。同株感染者は1月に入って全員入院の方針が緩められ、宿泊・自宅療養も可能となったものの、関係者によると、ケースによっては14日間以上の入院・療養が必要。濃厚接触者は14日間の待機が求められる。
こうした厳しい内容を反映し、沖縄県では12日、自身や家族の感染・濃厚接触などを理由に休業せざるを得ない医療従事者が過去最多の628人に上った。病床を確保しても人材不足で医療提供体制が逼迫(ひっぱく)しかねない状況だ。
影響は今後、医療のみならず、教育や福祉など幅広い社会機能に及ぶことが予想される。全国知事会の12日の会合では「濃厚接触者の隔離短縮を一刻も早く考えるべきだ」(大井川和彦茨城県知事)などの声が続出。知事会は感染者と濃厚接触者の扱い見直しを求めた提言をまとめた。
厚生労働省の専門家組織は13日に入退院基準などの見直しを協議し、提言をまとめたい考え。メンバーである日本医師会の釜萢敏常任理事は12日、記者団に対し、感染者の入院・療養期間を10日間にそろえるのも選択肢と語った。
濃厚接触者については厚労省が昨年8月、医療従事者に限り、ワクチンを接種済みで検査で陰性なら、14日の経過を待たずコロナ対策への従事を認める通知を出している。
厚労省は12日、この通知は現在も有効だと事務連絡で再通知した。政府はこうした対応を高齢者施設職員など他の「エッセンシャルワーカー」に広げる案も検討している。
時事通信