
岸信夫防衛相は22日の閣議で、2022年版防衛白書を報告した。ウクライナ危機に関する章を新たに設け、ロシアの侵攻を「決して許すべきではない」と非難。その上で、中国とロシアが軍事面の連携を深化させる恐れがあるとして、「懸念を持って注視していく必要がある」と警戒感を示した。
岸氏は白書の巻頭言で「国際社会は今、戦後最大の試練の時を迎えている。21世紀における新たな危機の時代に入った」と強調。その上で防衛力強化の必要性を訴えた。
白書は、ウクライナ侵攻緒戦の電撃戦にロシアは「失敗」したと分析。通常戦力の損耗が回復するまでの間、核戦力を重視して戦略原子力潜水艦の活動を、拠点となる極東のオホーツク海周辺で活発化させることがあり得るとした。
また、戦闘が長引いたことでロシア自身が損害を受け、「中長期的な国力の低下や周辺地域との軍事バランスの変化が生じる可能性がある」と指摘した。
覇権主義的な動きを強める中国については「安全保障上の強い懸念」とする従来の表現を踏襲し、同時に「こうした傾向は近年より一層強まっている」と強調。沖縄県・尖閣諸島周辺での海警船などの航行について「事態をエスカレートさせる行動は全く容認できるものではない」と主張した。
台湾に関する記述も21年版白書から大幅に拡充した。中国軍機による台湾南西空域への進入が増加している点について「平素からの消耗戦実施、実戦能力向上などを企図している」との見方を示し、21年版で初めて明記した「台湾をめぐる情勢の安定」の重要性を改めて訴えた。
北朝鮮に関しては、これまで通り「わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威」と位置付け、「こうした傾向は近年より一層強まっている」と説明。今年に入って再開した中距離級以上の弾道ミサイル発射について「看過できるものではない」と非難した。
時事通信