
ロシアによるウクライナ侵攻が始まって半年が経過する中、日本国内に1700人を超える避難民が身を寄せている。安全な場所にあっても、常に思いをはせるのは祖国。何気ない音から「戦争体験」がフラッシュバックのようによみがえるなど、心に傷を負った人も少なくない。
「(日本で)ある時、信号待ちをしていたら、40~50台のバイクの集団が、ものすごい大きな音を立てて通り過ぎていった。軍用機の音を思い出し、怖くてその場で泣きだしてしまった」
7月初旬にポーランド経由で来日したアナスタシア・ズイエワさん(26)。夫はウクライナに残り、首都キーウ(キエフ)近郊で被害に遭った人々のためボランティアを続けている。夫からは、ロシア軍機の攻撃にさらされる中で幼子を連れて長い道のりを避難してきた人の話など、現地の状況を聞かされる。
自分の大学時代の友人が、ロシア軍と対峙(たいじ)する前線で戦っているのも気掛かりだ。空いた時間ができると、ウクライナからの報道をインターネットでチェックしてしまう。「朝起きてすぐに見て、トイレに入っても見て、寝る前にも見る」という。
8000キロ以上離れていても、戦争が頭から離れることはない。「トラウマは皆がそれぞれ違う形で持っており、違う状況で表れる。一人ひとりにカウンセリングが必要だと思う」。バイクの音におびえる自身を分析し、アナスタシアさんはこう語った。
日本にいる避難民にとっては、境遇を同じくする者同士で語り合える場が、精神的な支えにもなっている。7月24日には東京都渋谷区で、北東部ハルキウ(ハリコフ)を紹介する慈善イベントが開かれ、アナスタシアさんも足を運んだ。「ハルキウ・スタイル・パーティー」と銘打ち、在日ウクライナ人や日本人を含めた約160人が参加した。
現地で流行する音楽が流れると、声をそろえて歌ったり、合いの手を入れたりした。「こうしてウクライナ人同士で集まれるイベントは本当にありがたい。皆、何か大変なことをくぐり抜けてきた人たちだから」(アナスタシアさん)。イベントには、避難民らの励みになり、日本人による支援の広がりにつながるよう期待が込められている。
時事通信