
政府は30日、防衛力の抜本的強化を議論する「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の初会合を首相官邸で開いた。
年末の「国家安全保障戦略」など安保関連3文書の改定や、防衛費を反映させる2023年度予算案の編成に向け、提言を取りまとめる。
敵のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の扱いや、防衛費増額の規模、財源確保が焦点だ。
席上、岸田文雄首相は「現下の厳しい安保環境の中でも、国民の命と暮らしを断固として守り抜かなければならない」と強調。
「総合的な防衛体制を強化するに当たり、それを支える経済財政の在り方についても議論してほしい」と求めた。
中国の軍事的圧力で台湾海峡情勢は緊張が続き、北朝鮮による核・ミサイル開発も著しく進展しているとみられており、日本を取り巻く安保環境は近年、一層過酷さを増している。
ウクライナに侵攻したロシアの動向も懸念材料だ。
政府はこうした現状認識を踏まえ、今後5年以内に防衛力を抜本的に強化する方針。
そのために必要な防衛費について、首相は「相当な増額」を明言。必要な防衛力の内容と予算の規模、財源を一体的に検討し、23年度予算編成の過程で結論を出すとしている。
有識者会議は、佐々江賢一郎元駐米大使や黒江哲郎元防衛事務次官、翁百合日本総合研究所理事長、中西寛京大院教授ら10人で構成。
座長には佐々江氏が互選された。
事務局の説明によると、初会合では防衛力の抜本的強化を図るとの基本方針に異論はなかった。
財源については「安易に国債に頼ってはならない」「つなぎ国債はいいが、きちっとした財源確保が必要だ」といった意見が出たという。
政府側からは首相のほか、林芳正外相、浜田靖一防衛相、鈴木俊一財務相らが出席した。
◇有識者会議のメンバー
【座長】
佐々江賢一郎元駐米大使
【メンバー】
上山隆大総合科学技術・イノベーション会議議員
翁百合日本総合研究所理事長
喜多恒雄日本経済新聞社顧問
国部毅三井住友フィナンシャルグループ会長
黒江哲郎元防衛事務次官
中西寛京大院教授
橋本和仁科学技術振興機構理事長
船橋洋一国際文化会館グローバル・カウンシルチェアマン
山口寿一読売新聞グループ本社社長
時事通信