ソウル:北朝鮮は16日、韓国と日本の首脳が、北朝鮮の核の脅威が影を落とすと予想される東京サミットで会談する数時間前に、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を試験発射した。
北朝鮮のICBM発射実験は1か月ぶりで、兵器実験としては今週3回目。北朝鮮が米韓による侵略の演習とみなす米韓合同軍事演習も行われている中のことだった。
日本と韓国の推定では、ミサイルは70分間飛行し、飛行距離は約1,000キロ、最大高度6,000キロだった。
これは、2月に行われた別のICBM発射時の飛行内容に似ており、専門家は、米国本土の奥深くまで届く可能性があることを示したと述べている。
ミサイルは、近隣諸国を避けるために急な軌道で発射された後、朝鮮半島と日本の間の海域に落下したとみられる。
日本政府は、ミサイルは排他的経済水域の外に着弾し、船舶や航空機の被害は報告されていないと述べた。
北朝鮮はまだICBMを標準的な軌道で実験したことはないが、機能する核ミサイルを保有していると繰り返し主張している。
だが専門家のなかには、北朝鮮がミサイルに搭載できるほど小さな弾頭を製造し、大気圏再突入時に弾頭を保護するために必要な技術を習得しているとは考えられないという見方がある。
米国家安全保障会議のエイドリアン・ワトソン報道官は、米政府は、米国本土と同盟国である韓国と日本の安全を確保するために必要なあらゆる手段を講じると述べた。ワトソン報道官は、今回の発射は「不必要に緊張を高め、この地域の安全保障状況を不安定にする危険がある」と述べた。
岸田首相との首脳会談のために東京に向かう前に、韓国の尹錫烈大統領は、「北朝鮮の無謀な挑発行為は明確な代償を払うことになる」と述べた。
韓国大統領秘書室によると、北朝鮮の発射に関する緊急安全保障会議で、尹大統領は韓国軍に対し、米軍と現在行っている演習を徹底的に進め、予定されている合同訓練の一部を集中的に実施し、日米韓の安全保障協力を強化するよう指示したという。
東京では、岸田首相が「同盟国、同志国との連携をいっそう緊密にしていかなければならない」と述べた。
16日の午後に予定されている尹・岸田首脳会談は、尹政権が先週、1910年から1945年にかけての日本の朝鮮半島植民地支配によって緊張した二国間関係を修復するための大きな一歩を踏み出した後に設定された。
植民地時代の強制労働の犠牲者に対し、彼らを雇用した日本企業からの拠出金なしに、韓国の資金で補償するという韓国の計画は、国内の激しい反対を受けたが、ソウル=東京=ワシントンの安全保障協力を強化するという尹大統領の決意を反映している。
ソウルの梨花大学教授、レイフ・エリック・イーズリー氏は、「尹大統領の東京訪問は、日本との関係改善のために歴史的和解を急いだとされ、韓国国民の反対に遭った」と語る。
「尹・岸田首脳会談の日に北朝鮮がICBMを発射したのは、そうした政治を邪魔する意図があったかもしれないが、代わりに米国の同盟国間の安全保障協力を深める必要性を明確にした」と述べた。
バイデン米大統領は、韓国の計画を、合わせて約8万部隊の米軍を受け入れているアメリカの最も近い同盟国2カ国間のパートナーシップ強化に向けた大きな一歩と歓迎した。
米国は、中国の台頭と北朝鮮の脅威に対処するため、アジアにおける同盟関係の強化を模索してきた。
北朝鮮の核兵器拡大の動きを受け、北朝鮮からの核ミサイルの射程距離内にある韓国と日本は米国との安全保障上のパートナーシップを強化しようとしている。
昨年10月、北朝鮮は北日本上空に中距離ミサイルを発射し、北日本の地域は避難勧告を出したり、列車を止めたりする事態に陥った。
岸田首相のもとで、日本は第二次世界大戦後の自衛のみの原則から大きく脱却し、12月に新しい国家安全保障戦略を採択した。
この戦略には、北朝鮮、中国、ロシアからの増大する脅威に対抗するため、反撃能力や巡航ミサイルを獲得する目標が含まれている。
北朝鮮が現在続けている積極的な兵器実験は、大いに予想されていた。金正恩総書記は先週、13日に始まる米国と韓国の大規模な共同訓練に言及し、自国のライバルによる「必死の戦争準備の動き」を撃退する準備を整えるよう軍に命じた。
北朝鮮は、米韓の軍事訓練は北朝鮮に対する敵対政策の証拠だと長い間主張してきたが、米国と韓国は北朝鮮を侵略する意図はないと言っている。
多くの専門家によると、北朝鮮はライバルの訓練を口実に核戦力を増強し、米国に国際制裁の緩和などの譲歩を迫ることが狙いだという。
昨年、記録的な数のミサイル実験を行った後、北朝鮮は今年、2月18日のICBM「火星15」の発射を含め、実験活動を拡大している。
発射後、北朝鮮は、この実験はライバル国に対する「致命的」な核攻撃能力をさらに強化するためのものだと述べた。
火星15は、北朝鮮が保有する3基のICBMのうちの1基で、いずれも液体推進剤を使用しており、発射前の噴射が必要だ。
金正恩は、より機動性が高く、燃料がすでに内部に装填されているため発射前の探知が困難な固体推進薬ミサイルの製造を宣言している。
韓国軍によると、16日のミサイル発射は、北朝鮮の国際空港のある平壌の蘇南地区で行われた。
ここは、北朝鮮が最近のICBM実験のほとんどを行った主要な実験場である。
また、北朝鮮は今週、潜水艦から巡航ミサイルを発射し、さらに短距離弾道ミサイルを日本海に向けて発射した。
先週は、北朝鮮国営メディアが「韓国の不特定の飛行場への攻撃を想定した演習」と呼んだ演習で、西側の海岸地域から少なくとも6発の短距離弾道ミサイルを発射した。
現在行われている米韓演習は3月23日まで続く予定で、コンピューターシミュレーションとフィールドでの実戦演習が行われる。
専門家は、北朝鮮がこの訓練中に実験活動をさらに活発化させると予想していた。
韓国外務省によると、日米韓のトップ核特使は、電話で北朝鮮のICBM発射について話し合い、北朝鮮の兵器活動に対する国際的な統一対応を引き出すために調整することで合意したという。
AP