
沖縄県の宮古島周辺で陸上自衛隊ヘリコプターが行方不明となった事故は9日、搭乗者10人の安否が分からないまま、発生から3日となった。8日夜には現場近くで「人が浮いている」との情報が寄せられたが発見に至らず、捜索に当たる隊員らは焦燥感を募らせている。
熊本市に司令部を置く第8師団(約5000人)のトップで、陸将の坂本雄一師団長(55)ら10人が乗ったヘリは6日午後4時前、宮古島と橋でつながる伊良部島北方の洋上でレーダーから消えた。直前の交信内容に異常はなく、突発的なトラブルが起きた可能性が指摘されている。
8日夜には消息を絶った地点から約4キロ離れた伊良部島北部の「三角点」と呼ばれる崖の近くで、住民が人のようなものが浮いているのを目撃。自衛隊はヘリやボートで周辺海域を調べたが、不明者につながる情報は得られなかった。
双眼鏡で海を見詰めていた陸自隊員は「何としても見つけないと」と焦りの表情を浮かべた。坂本師団長を知る防衛省幹部は「少しでも手掛かりがないものか。無事を信じている」と祈るように話した。
坂本師団長は3月末に着任したばかりで、当日は部隊を展開させる可能性がある宮古島を部下と共に上空から視察していた。10人のうち8人が幹部自衛官で、地形に詳しい宮古警備隊長も搭乗。今回は陸地に近い場所を飛行していたため、救命胴衣の着用義務の対象外だったという。
陸自機の事故で最も多くの犠牲者が出たのは、1968年に愛媛県で起きたヘリ墜落で、8人が死亡した。これまで陸将が事故に巻き込まれたことはなく、不明者10人も例がない。自衛隊は捜索態勢を増強し、海中探索が可能な潜水艦救難艦を投入するなど不明者の発見に全力を挙げている。
時事通信