日銀は8日、黒田東彦前総裁が最後に出席した3月9、10日の金融政策決定会合の議事要旨を公表した。原材料高による価格転嫁が進み、大企業を中心に賃上げの動きが見られることなどを受け、複数の委員が「物価目標の実現に向けて良い兆しが見られるなど、環境は変化しつつある」との見解を示した。
会合では、1人の委員が「2%の物価目標と整合的な物価と賃金の好循環が始まったと考えるにはまだ距離がある」と指摘。一方、何人かは「先行き物価が想定以上に上昇していくリスクに十分に注意を払っていく必要がある」と語った。
金融政策に関しては、ある委員が「物価と賃金の好循環への期待が確信に変わるよう粘り強く緩和を継続する必要がある」と主張。現在の緩和策を続けることで委員の認識が一致した。
政府出席者からは、4月8日の退任を控えた黒田前総裁に対し「日本経済の健全な発展に向け、尽力してこられた」とねぎらいの言葉があった。
時事通信