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湾岸諸国は「石油国家」から「エネルギー国家」へ

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08 Jun 2022 09:06:29 GMT9
08 Jun 2022 09:06:29 GMT9

ロシア・ウクライナ紛争に注意が向けられている今日でも、世界的なエネルギー転換の不可逆性を疑う者はほとんどいないだろう。実際に、エネルギー効率の向上により、エネルギー転換のプロセスは数十年前から進行している。国際通貨基金(IMF)によれば、エネルギー転換がなければ、今日の世界の石油消費量は現実の2倍の水準に達していたと推計されている。気候変動に対する取り組みの背後にある政治的意図は強くなっており、今や気候変動が政治議論の主流となっているほどだ。

このエネルギー転換は、石油の採掘と精製で収益を得てきた企業に大きなジレンマをもたらした。各企業の反応は一様ではないが、難局に立ち向かい、一般的なエネルギー企業として再出発する企業も増えている。2001年にBPが「Beyond Petroleum」というスローガンを立ち上げたが、当時は時期尚早と判断された。しかし最近では、2050年までにネットゼロ達成という目標を掲げ、積極的にエネルギーの多様化に取り組んでいる。

他の企業も同様の結論に達している。シェルは自社を「エネルギー転換企業」と名付けた。また、トタルエナジーズ、エクイノール、ENI、レプソルは自社のビジネスを「エネルギービジネス」と位置づけ、2030年までに低炭素に2000億ドル近く投資を行うことを表明している。米国メジャーはより慎重な姿勢を取っているが、それでも効率化や二酸化炭素貯留などの技術に優先的に取り組んでいる。

このような石油メジャーの動向は、炭化水素を主要な天然資源とするいわゆる「石油国家」に興味深い問題を提起している。全ての湾岸諸国は、この「石油国家」カテゴリーに分類される。このような国では、国内総生産、政府収入、輸出収入の源として石油が大きな存在感を示している。この数十年間、湾岸諸国は経済の多様化を通して、石油による支配への対抗を試みていた。

では、エネルギー・クラスターを超えた多様化ではなく、クラスター内での多様化についてはどうだろうか。石油以外の天然資源が限られていたため、何十年にも渡り、この点での進歩は限られていた。炭化水素が支配的である世界経済においては、間違いなく重要度の低いことであった。太陽光エネルギーは以前から注目されていたが、技術的コストの高さや輸出インフラが整っていなかったことが実用化の足かせになっていた。国内では、炭化水素に対する補助金が長い間、ライバルを圧倒的に引き離していた。

しかし、このような障壁は全て取り除かれた。再生可能エネルギーのコストは過去10年間で約80%低下した一方で、困難な地勢と非在来型石油の埋蔵量が石油採掘のコストを押し上げたのである。かつては手厚かった補助金も、効率性と適切な資源管理に向けた適切なインセンティブを生み出すために、現在ではかなり少なくなっている。また、未だに湾岸諸国は再生可能エネルギーを容易に輸出できる状況にはないが、この状況さえも変化し始めている。中東地域での協力体制に、再び関心が集まっている。

サウジアラビアの巨大都市NEOMの出現は、エジプト・レバノン市場に隣接する重要なクラスターを形成することになる。また、グリーン水素やグリーンアンモニアに対する関心の高まりは、湾岸諸国が太陽光エネルギーの競争力を利用して、国際的に高需要となりつつある輸出可能な製品を生産できる可能性を示している。

湾岸諸国は、エネルギーの多様化において、国際的なリーダーシップを発揮することを視野に入れている。湾岸協力会議は数十年にわたり世界の石油市場で重要な役割を果たしてきたが、現在は世界で重要とされている、多様なエネルギーのハブとしての地位を確立するための手段を備えている。これらにより湾岸諸国は、より多様なポートフォリオがもたらすレジリエンスの向上と不安定性の低減という利益を享受することができる。

エネルギーの多様化はまだ発展途上だが、今日、その重要な柱が新たに見えてきた。第一に、炭化水素の代替燃料としてガスが魅力的な移行燃料として広く認識されている現在において、ガスの価格再設定と環境への配慮に対する感度の高まりが、ガス開発への新たなインセンティブを生み出している。最近、サウジアラビアは大規模なガス田の発見を発表しており、中東地域全体でさらなる進展が見込まれる。

湾岸地域では、自然エネルギー容量の拡大が劇的に進んでいる。最近では、UAEが過去10年間で世界最大の自然エネルギー容量の増加(2011年の13メガワットから2020年の2540メガワット)を達成し、高い評価を受けた。これは、中東地域のエネルギー構成を多様化させ、産業発展の新たな機会を生み出すものだ。例えば、アクワパワーやマスダールは、再生可能エネルギー投資の国際的なポートフォリオを拡大し、世界的なエネルギー企業としての地位を確立している。また、湾岸地域では世界最大規模のグリーン水素投資も行われている。

では、石油は今後どうなるのか。低コストとアクセスの容易性により国際的なリーダーシップを発揮するという、従来からの野望は揺るぎない。しかし、現在のリーダーシップは技術革新と結びついており、特に二酸化炭素回収貯留といった分野では顕著である。中東地域は環境への影響を低減させることに注力し、製造の下流段階と製造活動を通して、石油から価値を創出する新たな手段を模索することができる。

エネルギーの多様化は今日の湾岸諸国における現実的問題であり、他の経済的多様化よりもはるかに早く実現したものであることは間違いない。中東地域は何十年もの間、石油という重要な天然資源に縛られてきたように思える。しかし、湾岸諸国は驚くべきスピードで世界のエネルギー転換の革新的リーダーとして台頭している。そのリーダーとしての役割は、今後数年で確固たるものになるだろう。

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