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北朝鮮、偵察衛星の打ち上げ失敗、海に墜落

ソウル駅のテレビ画面、ニュース番組中に映し出される北朝鮮のロケット発射のファイル画像。2023年5月31日水曜日、韓国ソウル(File/AP)
ソウル駅のテレビ画面、ニュース番組中に映し出される北朝鮮のロケット発射のファイル画像。2023年5月31日水曜日、韓国ソウル(File/AP)
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31 May 2023 02:05:17 GMT9
31 May 2023 02:05:17 GMT9

31日、北朝鮮はアメリカとの緊張が高まる中、金正恩氏が主導する軍事力強化計画の一環として、同国初となる偵察衛星の打ち上げを試みたものの、失敗に終わった。

北朝鮮は珍しく早急に失敗を認めた上で、ロケット発進時に発生した不具合を調べ、必ず2度目の打ち上げを行うと述べた。外交交渉が滞る中、金正恩氏は依然として、兵器増強を推し進め、アメリカ・韓国に対する圧力を強めていく方針とみられる。

打ち上げ後、韓国と日本は一時避難勧告を出した。

韓国軍は、北朝鮮のロケットの一部とみられる物体を同国南西部の於青島から西200キロの海域で回収した、と報告した。その後、韓国国防部は白い金属製の円柱状の物体の写真をロケットの一部として公開した。

北朝鮮の人工衛星の打ち上げは、弾道ミサイルの技術を用いたロケット打ち上げを同国に禁ずる国連安保理の決議に違反するものだ。観測筋によると、以前に北朝鮮が行った人工衛星打ち上げは長距離ミサイル技術を向上するものだったが、今回の打ち上げは偵察衛星の配備を目的にしたものであるようだ、と述べた。北朝鮮はすでに、何年にもわたって大陸間弾道ミサイルの実験を繰り返し、アメリカ全土を爆撃する能力をそなえている可能性を示してきたが、外部の専門家によれば、いまだ実戦的な核弾頭の完成には至っていないという。

人工衛星「マンリギョン1」を載せた新型ロケット「チョンリマ1」は北朝鮮北西部のソヘ衛星発射場から午前6時37分に発射された。ロケットは1、2段目の分離後に推進力を失い、朝鮮半島西岸に墜落した、と北朝鮮国営メディアの朝鮮中央通信は報じた。

朝鮮中央通信によると、同国の宇宙機関は打ち上げで明らかになった不具合を調査し、至急その訂正措置を行った上、各部品の検査を経て一刻も早く二回目の発射を行う、という。

「北朝鮮当局が失敗を認めたのは印象的だが、衛星発射失敗を世界から隠すのは難しく、国内向けに異なるシナリオを提示する可能性は高い」とソウルの梨花女子大学の

レイフ=エリック・イーズリー教授は述べた。「この結果はまた、北朝鮮当局がこの失敗の埋め合わせのために更なる挑発行為に及ぶ可能性を示すものでもあります」

韓国軍部は、アメリカ・日本と協力し、軍事態勢を強化、あらゆる緊急事態に対応できるように準備した、と発表した。

また、北朝鮮のロケットは海に墜落する際に「異常な軌道」を描いた、と韓国軍部は述べた。日本の松野博一内閣官房長官は会見で、宇宙に到達した物体はないものとみられる、と述べた。

アメリカ国家安全保障会議のアダム・ホッジ報道官は声明で、アメリカ政府は北朝鮮が弾道ミサイルの技術を用いたロケット発射を行い、緊張を高め、当該地域内外の治安を危険に晒したことを強く非難するものである、と述べた。

アメリカは北朝鮮に話し合いの場に戻り、挑発行為をやめるよう求めた、と同氏は述べた。アメリカはアメリカ本土、韓国および日本の安全を確保するために必要なあらゆる措置を講ずる、と同氏は述べた。

国連は北朝鮮が過去に行った人工衛星打ち上げおよび弾道ミサイル発射を受け、北朝鮮に経済制裁を加えている。しかし、常任理事国である中国とロシアがアメリカとの対立関係に囚われ、北朝鮮に対する制裁の強化を阻止しているため、最近の発射実験については制裁を加えていない。

松野官房長官は、北朝鮮が繰り返すミサイル発射実験は、日本および当該地域、ひいては国際コミュニティの平和と安全を大きく脅かすものである、と述べた。日本の浜田靖一防衛大臣は、日本はミサイル防衛システムを南部諸島および南西部海域に、北朝鮮がミサイル発射期間の終了日と公言している6月11日まで展開しておく予定である、と述べた。

韓国首都のソウルでは打ち上げ検知後、公共放送用のスピーカーや携帯電話のテキストメッセージを通じて住民に避難準備を促す警報を出した。日本では、南西部、ミサイルの進路上にあると思われた沖縄県でミサイル警報システムが作動した。沖縄とソウルでの警報はいずれも後に解除された。

「建物内か地下に避難してください」と日本の警報は勧告した。
朝鮮中央通信はロケットと衛星の詳細について、名前以上のことは報じなかった。しかし専門家はそれに先だって、北朝鮮はこれまでの長距離ロケットおよび衛星と同様、液体燃料を用いたロケットを使うだろう、と述べていた。

朝鮮中央通信によると、北朝鮮の国家宇宙開発局は、より詳細な調査を予定しているものの、打ち上げ失敗は「運搬ロケットの新型エンジンシステムの信頼性と安全性が低かった」こと、および「燃料が特性上不安定である」ことに原因があるとした、という。

30日、北朝鮮高官の李炳哲氏は、北朝鮮が韓国およびアメリカからの安全保障上の脅威の増大に対応するためには宇宙ベースの偵察システムを必要とする、と述べた。

しかし、朝鮮中央通信がそれに先だって公開した偵察衛星は、高解像度の画像を生成できるほど高性能ではないように見えた。外部の専門家からは、それでも軍隊の移動および戦艦や戦闘機といった大きい標的の検知くらいはできるかもしれない、という意見も聞かれた。

商業用衛星による最近のソヘ衛星発射場の画像では活発に製造を行っている様子がみられ、北朝鮮は複数の衛星を発射する予定であるとみられる。李炳哲氏は30日の声明で、北朝鮮はアメリカおよびその同盟諸国の動きをリアルタイムで監視するための「多様な偵察手段」を実験していく、と述べた。

3つから5つの偵察衛星があれば、北朝鮮は朝鮮半島をほとんどリアルタイムで監視することを可能にする宇宙ベースの監視システムを構築できる、と韓国科学技術政策研究院の名誉研究員であるイ・チュングン氏は述べた。

この人工衛星は、金正恩氏が導入を宣言したハイテク兵器システムの一つである。金正恩氏はこれの他に、多弾頭ミサイル、原子力潜水艦、固体燃料大陸間弾道ミサイルおよび超音速ミサイル等の導入を企図している。金正恩氏は、5月半ばに国家宇宙開発局を訪問した中で、アメリカ・韓国との対立において偵察衛星が戦略上重要であることを強調した。

非核化に向けたアメリカとの対話は2019年初め以降進展を見せていない。金正恩氏はその間にも核兵器・ミサイル兵器の開発・増産を進めてきたが、その目的はアメリカ・韓国から譲歩を引き出すためだと専門家は言う。2022年初め以来、北朝鮮は100発以上のミサイル発射実験を行っており、その中にはアメリカ本土、韓国および日本を攻撃対象に想定した、核搭載可能なものも多数含まれている。

北朝鮮の主張では、発射活動は、同国が侵略活動のリハーサルと解釈する米韓合同軍事演習の拡大に対応するための自衛手段であるという。アメリカおよび韓国政府は、軍事演習は自衛的なもので、発射活動によって北朝鮮によって増大する核の危機への対応を迫られたものだ、と主張する。

イーズリー教授は、韓国が5月初めに国産ロケット「ヌリ」を用いた同国初の商業用衛星の打ち上げに成功したことを受け、金正恩氏は偵察衛星の打ち上げに向けて研究者とエンジニアに対する圧力を強めたようだ、と述べた。

韓国は今年末にも同国初となる偵察衛星の打ち上げを行う予定で、金正恩氏は国内の評価を高めるために韓国に先がけて偵察衛星を打ち上げたいと望んでいるようだ、と専門家は分析している。

北朝鮮は度重なる失敗の末、2012年に同国初の人工衛星の軌道への打ち上げを成功させ、2016年には2つ目を軌道に打ち上げた。北朝鮮当局は、いずれも平和的な宇宙開発プログラムの一環として打ち上げられた地球観測衛星だ、と説明したが、多くの国外専門家は敵対国を偵察するためのものだと考えている。

観測筋によれば、現時点でこれらの人工衛星から北朝鮮に画像を転送した形跡はみられないという。

AP

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